平成24年度 指導者研究会 【Bグループ】

指導者研究会 Bグループ 研究報告

内  容: 「事例を踏まえ読み取りからどのように問題を解決に導くか」
日  時: 4月25日・6月13日・7月4日・9月12日・11月7日・2月6日 臨時1月16日
場  所: 子どもみらい館 4階 第1研修室 及び 3階 研究資料室
参加者数: 5園5名
講師: 心理士 ガヴィニオ重利子先生 2回・3回・5回
報告者: アソカ幼稚園 末廣恭子
くるみ幼稚園 巽綾子
慧日幼稚園 福家晶子
安井幼稚園 河原未来

はじめに

 何気ない子どもの日常に潜む問題は、子どもと向き合い、読み取り(実態把握)、課題の掘り起こし、手だてを考え、実践します。この繰り返しが問題の糸口を見い出し、解決に導く事を様々な事例を読み解きながら昨年より引き続き研究しました。この中の読み取りの不確実さから派生した昨年度からの課題研究ですが、読み取りには、背景・情報の理解、分析、考察を前提とするため、今年度は、事例の前後説明に背景・分析・考察として示しました。

また、研究員が共有しながら多面的に考察し質疑を繰り返しながら手だてを導いたことを対策項目に反映しています。時には心理士のガヴィニオ重利子先生に加わって頂き心理面から深く考察しました。

対象事例は、健やかな育ちは子どもと保育者、保護者や幼稚園の関係性の中で培われることから、特に顕著な3事例を選び、背景から日時・エピソード・保育者の思いを事例表にしました。
尚、この報告では、様々な素因より常に状況を変えていく事例なので、研究回で分離せず、事例ごとに纏め継続提示して流れの中での変化検討を分かりやすくしています。

  •  事例A 保育者と子どもの関係 (四歳児K君:表情も乏しく保育者や友だちとコミュニケーションがとりにくい)
  •  事例B 子どもと子どもの関係 (五歳児A君とY君:二人とも競争心が強くもめごとも頻繁にある)
  •  事例C 園と保護者の関係 (五歳児A君:発達障害が疑われ保護者の理解が得られない)

尚、研究会各回での事例の表出を下記に示しました。

1
4/25
2
6/13
3
7/4
4
9/12
5
11/7
臨時
1/16
6
2/6
事例 A      
事例 B     ②・②
事例 C      

また研究後半では、特に保育者の手立ての実践に応えていくため、子どもの心理や変化を読み取りながら、解決へのプロセスにテーマを絞り、事例の中で見えた安定状況に光を当て可視化をして臨時研究会に作表検討をしました。
読み取りから解決に至るには、必ずこの安定する状況が重なり合ってきます。各事例の共通項や起因要因などを探り具体的な対策に向かう研究としました。

事例A: 保育者と子どもの関係

対象児  K君…4歳男児、一人っ子

<背景>

  • 出席確認の返事はするが、その他の問い掛けには答えることが出来ない。
  • 家では家族と会話をしている様だが、園では誰とも会話することが出来ず、表情も乏しいため他者とコミュニケーションを取ることが難しい。
  • 担任と二人きりであれば、時折問い掛けに応えることが出来るが、「○○した。」等の二語文でしか話すことが出来ない。また、言葉に出来ない時には、身振り、手振りで思いを伝えようとしている。
  • 着替えや身支度は丁寧に且つ、速くこなすことができるが、制作活動では担任が手を添えるまで、手を動かそうとしない。
  • 偏食が激しく、給食の際は白ご飯と肉類以外食べることが出来ない。
  • 母親も表情が乏しく、T君の母親以外とはあまり会話することがなく、内向的である。
     →T君も内気で、口数が少ない。T君とは家族ぐるみの付き合いで、入園前から親しくしている。
    T君の保護者には、K君も心を開いており会話することが出来る。
  • 母親にK君の対人関係について尋ねると、慣れるまで時間がかかる、人を怒らせないように、傷付けないようにと考え過ぎているため、言葉が出ないと言われた。
  • 昨年2月、園での子育て相談にも参加したが、我が子の発達の遅れに焦りを感じていない様子であった。
     しかし、進級したことにより、周囲の子たちとの差を感じ始めている。

第2回・第3回

日時 エピソード 保育者の思い
・6月下旬 ・朝、登園するが自分から挨拶をすることはなく、担任の方をじっと見つめ、こちらの様子を伺っている。
「おはよう。」と声を掛けると、口元に耳をよせれば聞こえるほどの声で
「おはよう。」と返事をする。

・着替えや身支度は丁寧に且つ、早くこなすことが出来るが、お帳面にシールを貼る時には、無言でお帳面を差し出してくる。

・ 

 

 
・シールを貼る時には、日めくりを指し、日にちを伝えているが一向に行動に移すことが出来ないため、毎日貼る場所を示し、一緒に貼るようにしている。
朝の会 ・歌を唄うときには、絶対に口を動かすことはなく、ずっと口を閉じている。出席確認で名前を呼ぶときには、周囲に聞こえるようなはっきりした声で返事するものの、それ以外の言葉掛けに応えたりすることはない。  
一斉保育 ・じゃがいも堀りの絵を描く。大きな画用紙に周囲の子たちが一生懸命に描く中、何を描くか考えているのかこちらが手を添えるまで手を動かそうとしない。担任に促され、何色も色がある中から黒を選び顔の様な形を描いたが、何が描かれているのか分らず、表情が感じられない絵だった。 ・何を描けばよいか困っているのではないかと考え、「おいもを掘っているA君を描いてみよう。」と提案し、様子を見守った。 
給食 ・食事の挨拶を済ませた後、食べようとするが、白ご飯にふりかけがのっていたため、食べることが出来ず、お箸を持ったまま固まっている。担任にふりかけを取り除いてもらい食べ始めるが、箸を下ろすことも多く、白ご飯を食べるだけでも一時間以上掛かってしまった。その他の物は担任に口まで持ってこられても首を横に振り、食べようとしない。
(尚、お弁当の時にはいつも決まった物が入っており、のりを巻いたおにぎり、ポテトフライ、スパゲッティー3本、ごくわずかな葉物の野菜を手を止める度食べさせてもらいながら1時間以上掛けて食べている。)

・食事はいつも白ご飯と肉類以外食べることが出来ない。ご飯といってもその上にゆかりやゴマがのっていると、保育者がそれらを取り除くまで、絶対に食べようとしない。そのため、食事の挨拶の後、手が止まっていれば、A君が食べやすい様、ご飯にのっている物を取るようにしている。
また、じゃがいも等保護者から食べられると伺っているものは、小さく切って食べてもらうようにしている。しかし、家では食べることが出来る物も、味付けや、見た目の違いから食べてもらえないことが多い。
 担任が運んだ物を口に含むと、咀嚼は出来るが飲み込むまでに時間が掛かる。

自由遊び ・食事の後、お絵描き、粘土遊び、好きな方を選び、遊ぶ。自由画帳に絵を描くときには、物や人を描くことは一切なく、ただひたすら数字を描いている。描くたび自由画帳を無言で見せに来る。担任が何か話しかけても表情一つ変えることはないが、見せると満足したのか、何も言わず席に戻る。
 粘土遊びでは、一つの物を作るのではなく、小さくちぎった粘土をひたすら並べている。

・担任の肩を叩き、自分の眼を指差し、何かを訴えようとしている。「眼が痛いの?お話して教えてくれる?」等何度も言葉を変え、話しかけられると「○○君、手当たった。」と応えた。
・担任が、お帳面を書いていると、担任に背を向ける格好で膝に座りに来た。頭を撫でたり、手を握ったり、自分の行動に応えてもらうと、急に膝から降り、飛んだり、その場でぐるぐる回ったりした。

・担任の方を見ながら側を歩き回ったり、どこかに触れたりしようとする時は、何か伝えたい時であるため、「どうしたの?」等こちらから尋ねるようにしている。言葉で伝えられることもあるが、何も応えられないことが多い。

・楽しい、嬉しい等の感情は、口にしない代わりに、身体を大きく振ったり、飛んだり、走り回ったり、身体を動かすことで表現しているのだと考える。最近は担任に慣れてきたのか、膝に乗ったり、抱きついたり、甘えてくるようになった。

<分析>

心理士ガヴィニオ先生の助言を頂きながら

  • 一人っ子で、自分の子以外を知らないため、焦りを感じないのではないか。
  • 母親の様子から家でのA君との会話の少なさが感じられる。
  • 母親とは、本当に会話をしているのか。
    →担任と二語文で話していることから家でも同様に身振り、手振りで意志の疎通を図っていることが考えられる。
  • 身支度は周りを見て行動しているのか。
     →周りを見てから行動しているのであれば、言葉ではなく、視覚的に理解していることが考えられる。
  • お絵描き、粘土遊びでの行動は、同じ行動を繰り返す遊び(常動行動)であり、自閉傾向の表れである。
     →同じ行動を繰り返すことにより気持ちを落ち着かせている。
  • 部屋から飛び出さない代わりに、他者と会話をしないことで周囲との関わりを自らシャットダウンし、部屋に居ながら、存在を消していることが考えられる。
  • 膝に座ることは、心が開き始めた表れである。

<対策>

  • だっこやこちょこちょ等、ようやく受け入れてくれた何気ないスキンシップを増やしK君の緊張をほぐせるようにする。
  • 保護者に心を開いてもらうために、K君のかわいい所など園での何気ないエピソードを話すようにする。
  • 保護者との会話や関わりを観察することにより、保護者とも二語文で話しているのか、本当はどの程度まで話すことが出来るのか知る。
  • 全体に向けた言葉掛けに対し、どの様に反応しているのか観察する。
     →言葉を聞き、自分で理解し行動に移しているのか、周りの動きを見て活動しているのか。
  • 身体を動かし気持ちを表現している時には、担任も一緒になって身体を動かしてみる。
    「今、K君嬉しかったんだね。」等話しかけ、気持ちを共有する。K君を理解しようとしていることを伝える。

事例A 第4回

<背景>

  • 副園長が、少しずつ安心感を持たれてきたK君のことについて話を向けると、母親は漸く自身の今までの不安だった気持ちを口にされた。
  • 様子を見ながら福祉センターの存在を伝えると、療育に通うことを前向きに考えられるようになられた。
  • 後日行かれた児童福祉センターでは、言葉が遅れているだけで緘黙症では無いと言われ保護者は安心された。
  • 家庭ではK君は話すとのことだったが、K君が発話しているのではなく、保護者のほうが先んじて話していることでK君が分かったように感じていたことや、常に二語文であったことも保護者は、気付かれた。
9月初旬 ・朝、母親と登園するが自分で挨拶をすることはなく、担任の目を見つめている。「おはよう。」と声を掛け、手を差し出すと、担任の手を握り、
「おはよう。」と小さい声で返事を返した。

・身支度を済ませると、お帳面を見せ、シールを貼ることを確認してくる。
 日めくりを見て貼る様伝えると自分で貼ることが出来た。

・1学期に比べ、大きな声で挨拶が出来る様になった。また、挨拶をすると共に、口元を緩め、笑うような表情を見せるようになった。

・1学期を終え、お帳面にシールを貼ることが習慣付いてきたのか。
 しかし、日によって出来ないこともある

誕生日 ・全園児が見ている中、前に立ち、クラス、名前、年齢を言うことが出来た。
 また、舞台の上での歌の発表も振り付きで発表することが出来た。
 母親との触れ合い遊びでは、いつもと変わらず無表情ではあったが、時折、飛んだり、跳ねたり、喜びを身体で示す行動が見られた。

・事前に行った稽古でも、クラス以外の子が見ている中「○○Kくんです。」とはっきりとした声で言うことが出来た。
一斉保育 ・前日に引き続き、消防車の絵を描く。
 周りの子たちが絵の具を取りに行く中、動くことなくじっと周りの様子を伺っている。何人か描き終え、絵の具を置いている場所が空き始めると、自分で絵の具を取りに行き、描き始めた。
 タイヤ、ホース、窓を描くと、無言で絵を見せに来た。「出来た?」と話し掛けると、頷き、「大きな窓が描けたね。」と言うと、少し口元を緩める様な表情を浮かべた。

・1学期は自分から描画に取り組もうという姿勢が見られなかったため、自分から描き出したことにとても驚いた。「○○しているところ」等抽象的な絵ではなく、消防車と描く物が明確であったため、描きやすかったのではないか。
給食 ・食事の挨拶を済ませた後、箸を持つが、唯一食べることの出来るご飯の上に卵がのっている為食べることが出来ない。また、そのことを口頭で伝えることが出来ないため、じっと担任を見つめている。
 食べられる物を口に運んでも、口に少しでも残っていると口元を指さし、まだ残っていることを訴え、食べようとしない。

・2学期になり、時折自分でご飯の上にのっているものを除けて食べることが出来る様になった。
 しかし、偏食であることに変わりはなく、ご飯以外の物は担任が必ず小さく切って口まで運ぶ様にしている。

外遊び ・昼食後、園庭に出て遊ぶ。
 他の子たちが自由に遊ぶ中、ボールを持って担任の後を付いて回っている。
 「ボールする?」と話しかけると、頷き担任に向かってボールを蹴ってきた。しばらく、パスを続けると、他の子どもが加わってきた。
 その途端、すっとその場を離れていった。

・クラスの中でも、誰かと遊ぶことはなく、ずっと担任の近くを行ったり来たりしている。そのため、他の子たちが加わったことに戸惑い、その場を離れていったのではないか。

<対策>

  • K君が今どんなことに困り、どんなことを伝えようとしているかの視点をより意識してかかわる。
  • いろいろな環境でサポートするために療育について安心感を持ってもらえるよう伝える。

事例A 第5回

【日時】 【エピソード】 【保育者の思い】
10月下旬 ・朝、母親と登園する。
 母親が見守る中、玄関まで来る。
 担任が側へ行くと、口元を緩め、嬉しそうな表情を浮かべた。
 「おはよう。」と声を掛けると、小さな声で返事をした。
 他の職員が側を通り、「K君、おはようは?」と促すと小さな声で挨拶をした。

・身支度を済ませると、自分でお帳面を出し、シールを貼る。
 昨日持ち帰り、洗濯を済ませたスモックを無言で見せに来る。ロッカーに掛けて良いことを伝えると、頷きロッカーへ向かった。

・初めは、保育者以外去年の担任にしか挨拶をすることがなかったが、最近は他の職員にも挨拶をし、自分から近寄っていくようになった。
 また、友達の挨拶に対しても、声で答えることはないが、口元を緩め、笑う様な表情を見せるようになった。

・お帳面は大体自分で出来るようになったが、月曜日等休み明けの時には、貼る場所が二つ飛ぶため、困ったような表情でお帳面を見せに来る。このことから、日付を理解し貼っているのではなく、昨日貼った場所を手掛かりに貼っていることが分かる。

外遊び ・他の子たちが、急いで帽子をかぶり外へ出ていく中、周りの行動をきょろきょろ見渡しながら椅子に座っている。部屋に誰も居なくなるとゆっくりと立ち、用意を始めた。

・スクーターに乗り、園庭を走る。
友達に「K君、なにしてるの?」と聞かれると、相手の目をじっと見つめるものの答えることはなく走り去っていった。
 その後は、担任の後を付いて回り、
「k君も一緒にしない?」と声を掛けるが、他の子が一緒であれば遊びに参加することはない。

・人が多く集まる場面(降園時の混雑した玄関等)では固まってしまい、動くことが出来ない。この時も、子ども達が帽子を取るために一度にロッカーに集中し、混雑したため動くことが出来なかったのではないかと感じた。

・友達との関わりにはあまり変化がなく、会話をすることもない。
 しかし、口元を緩める等以前
より表情に変化が表れているため、そのことに周囲が気付き、話しかけられることが多くなっている様である。

一斉保育 ・前日に引き続き、お話の絵を描く。
 周りの子たちがスタンプに使う材料を取りに行く中、動くことなくじっと周りの様子を伺っている。何人か描き終え、道具を置いている場所が空いてくると、自分で絵の具を取りに行き、描き始めた。
 描き終わると、無言で絵を差し出す。「これは何かな?」と話しかけ、K君の口元に耳を向けると、小さな声で「おほしさま。」と答えた。

・絵の具や、道具を取りに行く時もやはり、混雑を避け、周りが描き終わったころに活動し始めている様だ。
給食 ・食事の挨拶を済ませた後、箸を持ち、自分で食べ始める。
 この日は、栗ご飯だったが、担任に頼ることなく、自分で箸を動かし、栗を上手に取り除き、ご飯だけを食べた。他にも野菜炒めのジャガイモや、煮魚等、少しではあるが、一口ずつ食べることが出来た。

・後日、この日の食事の様子を保護者に話すと、家では煮魚を口元まで持って行っても絶対に食べようとしないことが分かった。 K君も家で「先生が美味しいって言うから食べてみたよ。」と話していた様だ。
自由遊び ・食事の後、お絵描き、粘土遊び、好きな方を選び遊ぶ。以前までは、
自由画帳にひたすら数字の羅列を描いていたが、最近周りの子の絵を見て虹や、沢山の円など違うものも描くようになった。また、ピンクや赤等カラフルな色を使うことも多くなった。

・数字以外の物を描くようになった頃から、周りの子ども達に話しかけられることが多くなった。
 また、自由遊びの前に、椅子を並べる時にも以前は固まっていたが、「ここ空いてるよ。」と周りから誘われることにより、迷うことなく座ることが出来るようになった。

降園後の外遊び ・保護者が側にいる中、一人で走ったり、跳びまわったりしている。
 担任が外に出ると、走って側までやって来た。すぐに他の子が担任を見
 つけ鬼ごっこに誘うと、K君も一緒になって走って遊びに参加し始めた。

・K君がT君以外の児たちと遊ぶところを見ることはほとんどなかったため、非常に驚いた。
 母親が見ている中であれば、気持ちが安定するため友達と関わることが出来るのだろうか。

<対策>

  • 手だてが子どもとの信頼関係を広げられて伴い、周りとの関係も少しずつ受け入れられるようになってきた。
    また、併行通園できるようになった福祉センターでの様子も聞き園でのY君の過ごしやすさにつなげていく。

事例B : 子どもと子どもの関係

対象児 A児とY児 年長

<背景>

  • A児にもY児にもそれぞれ2学年上の兄がいるので、小さい頃から兄たちが在園中に園に一緒について来ていて、兄たち・母親同士が仲が良かったこともあり、ずっと一緒に兄も交えて遊んできている。母親たちは二人目の子ども、ということもあり、ケンカやトラブル・やんちゃ等をこの子達がしていても、「やらせて痛い目を見ないと分からない」という考えで、注意などせず、笑って放課後なども見ているだけのことが多かった。
  • 年少の時からクラスも一緒、他の仲のいい数人とは離れたが、年長になって、A児とY児は一緒のクラスになった。
    仲良くしたいのに、この二人は関わり合い方が特にきつく、一緒に何かをすれば必ず言い合いや物の取り合い、殴り合いに発展する。なのに、常に一緒にいたがる。
  • 毎日、同じこと(自分勝手などによるケンカ・トラブル)の繰り返しで、注意する保育者も本当にこのままでいいものか悩んでいる。

第2回・第3回

【日時】 【エピソードY児とA児】 【保育者の思い・手だて】
5月降園時 ・部屋を出る際、保育者は、子どもが焦って怪我などが無いように、バス1回目、バス待ち、歩き・・・と順を指定して子どもを一人ずつ並ぶよう声をかけているが、その声掛けの約束を守らずに我先にと二人でドアの所に詰めかける。Y「A!押すなよ!」A「俺が先に並んだんやぞ!」と押しのけ合う。そのせいで周りの子どもたちにぶつかったりしても気づけないでいる。 ・この二人が必ず競い合うと分かっているので、そうならないように、毎回順番を伝えるのだが、必ず走ってきて取り合ったり競い合う。互いに負けたくないという思いが特に強いようだった。  スポーツなど、違うところで競争心を 出してくれれば・・・ときっかけを与えて言っているが、力の加減がまだまだ難しいようだった。
毎日のトラブルに、周りの子も「またYとAか・・・」という目で見ているところがあり、私がそう思わせているのだと反省している。できる限りトラブルを起こさないように見るようにしているのだが、どうしても見れていない時にトラブルが起こってしまう。

運動会の開会式練習 ・園庭に入場するのに男女で整列して並んでいる、となりに年少児も並んでおり、みんな見本になろうとして張り切って背筋を伸ばしたりしている、YとAは背の順も偶然前後。せっかく並んでいても、どちらからともなくちょっかいをかけ、やめろよ、ちゃんと並べや・・・と最初は笑いながらふざけ合っているのだが、次第にエスカレートし、また押し合いのケンカになり、そのはずみで前にいたRの背中を押してしまい、 Rは転んで泣いた。
Rは泣きながら周りの子に「YとAに押された・・・」っと訴える。
周りの子から、「ケンカしたらあかんで!」「ちゃんと並びや!」
「なんで押したん!?」と言われるが、互いに「だってこいつが・・・」と責任の押し付け合いをしたり、言い訳を言っている。
「自分は悪くない」という思いからか、Rに謝る事が結局できずにいた。周りの皆の表情は、「またか・・・」という感じ。
保育者も二人に話を聞くが、ちゃんと並ぶべき事など、けじめはつけられるように話をしていく。が、それでも謝れずにいる。
Rは自分で気持ちを切り替えていったが、YとAは互いに少しの間むくれていたが、開会式練習が終わるとすぐにまた二人でちょっかいを出し合ってふざけていた。前後の子どもは整列しようとしているのだが、そのせいでどうしても乱れてしまう。
保育者は「さっきお話したよね・・・」と強めに伝え、二人が離れて立つように促した。

・その度に、何がいけなかったのかを話して聴かせるのだが、保育者がしつこくて流してしまってるのか、心に響く伝え方ができていないのかもしれない。
周りの子は「この二人はもう仕方が無い」と我慢していることも多く、「嫌なことは先生やあの二人にも言ってもいいんだよ」と伝えるが、YとAに言い返されるのが怖く、諦めてしまっている子もいる。そういう場合はその子の思いを保育者が代弁して伝えて言う。
二人とも、自分が人に何か嫌なことをされるのは、小さなことでも怒って保育者に告げに来るのだが、自分がそれを人にするのは何も感じていないようだった。相手が「やめて」と言っているのに、続けてしまうのはどんな気持ちがあるのだろう?
放課後の母親の関わり方も大変気になる。相手との関わり方や園庭の使い方が乱暴でも、叱ったり、言い聞かせようとせず、離れたところで笑って見ているだけなので、けじめが付けられていないのではと感じる。
運動会障害走 ・部屋に、トイレから帰ってきた子から、繰り返し取り組めるように、ゴム跳びとフープくぐりを用意していた。物さえあれば、自分たちでそれを準備し、押さえ合ったりしながら環境を作り、『一回くぐって跳んだら後ろに回って順番にする』というルールを、自分たちで考え、守って行っていた。(今までも何回か同じ活動に取り組んでいる)
子ども「先生!YとAがふざけはる!」
保「どうしたの?」
子ども「みんなちゃんと並んでるのに、抜かしたりな、ゴムを動かしたり  して危ないねん!」
保育者「そうか、「それは危ないよ、って言ってあげたん?」
子ども「言った!何回も!けど、やめはらへんねん!!」
そうやって保育者に訴えている周りの子達の様子に気づきながらも、  YとAがそれをやめる様子は無い。保育者がそばに行って真剣に話をし出すまで、ずっと笑っている。
他の日も、友だちに注意されていても「いいやんけ!」と言って、受け入れられ無かったりする。逆に、自分たちが同じ事(順番抜かし、ゴム跳びの邪魔など)をされるとめちゃくちゃに怒り、自分の思うように振舞うことが多い。

・母親にも適切な伝え方をしていかなければならないので、電話や直接あった時に、そういったけじめをつけられるようにと、なるべく話をできる機会を持てるようにしていく。

<分析>

  • 臨床心理士ガヴィニオ先生の助言→けじめをつけるために保育者がとっている行動は後ろめたいものではない。
  • 放課後の保護者対応などが甘くなっている事などから、保護者がけじめを付けられていないのでは。園全体のルール決めなどが要るのでは。

<考察>

  • 注意するべき時はしっかりと善悪の判断やけじめがつけられるようにしていくが、そればかりになると自己肯定感が失われてしまう。

<対策>

  • これからある活動・行事の中で、ふたりが得意とする運動面や、何にでも意欲を持って挑戦しようとする姿を認めて行く事で、自信を持つとともに自分をコントロールしたり、相手の気持ちが考えられるようにしていくようにする。
  • 夏休み前の個人懇談会にて、前述のような姿がある事を、母親に話の中で伝えてみる。
    母親も「なんとなくそんな気はしていた。落ち着きを持たせたり、自分勝手さをなくしていくにはどうしたら」と問いかけが有ったので、家庭と園とでのけじめをつけるべきポイントを同じにしていくこと。
  • 集団生活や公共の場での振る舞い方を正していくこと、二人の遊びが感覚的なものでなく、思考力を伴った遊びに取り組んだり、また、活動に目的が持てるように、夏休み中に配慮していって欲しいという旨を伝えた。

事例B 第4回 

<背景>

一学期間は、ずっと平行線が続いていた、本児たちと担任のトラブルでのやりとり。
夏休み・2学期を経てきて、家庭との連携の成果もあり、少しずつ変化が見られるようになってきている。

それぞれの変化があるので、今度はA児・Y児それぞれ一人ずつ考察していった

【日時】 【エピソード A児】 【保育者の思い・考察】
9月 ・夏休み明け、自分で書いたという日記を嬉しそうに担任のところまで持ってくる。
字も丁寧で、しっかり文章になっており、楽しかった夏休みの様子が伝わってくる。様々な所に出かけ、得た知識や自信からか、姿勢を正し、あたかも「ぼく、かっこよくなったでしょ?」というような感じで保育者の話を聞くようになった。周りの友だちに対して命令するような口調もほとんど聞かなくなってきている。

・Aは夏休み明けに見違える程落ち着いた様子を見せるようになった。
母親が休み中に、本児が小学生の兄に憧れてなんでも真似をしようとする意欲を、うまく自信につなげ、日記という形で自らを振り返られるようなきっかけを作ったことが大きいように思う。
また、この時の日記については、クラス中の友だちや他の職員からも「Aくんすごいね!」と認められたので、そうやってもっと認められたい!という意欲に繋がったようだった。

10月 ・遠足の際、はしゃぎすぎたのもあり、ホッチキスで3針止める頭の怪我を負ってしまった。
幸い怪我は1週間ほどで治ったが、救急車に乗ったことが精神的なショックが大きかった。
元気で明るくしているが、今まで以上に親や保育者にスキンシップを求め甘えるようになった。
家庭でも抱っこを求めたり・・・という事も聞いていたので、そうやって求めてきた時には受け入れるようにし、安心できる言葉をかけたりしていた。満足するとにこにこしてその場から友達の方へ行く。

・「俺に貸せ!」等、自分を差し置いての命令や自分勝手は減ってきたとは言え、まだ相手の気持ちにたってから行動するよりも先に自分のやりたいようにのやりたいように体が動いてしまうようだ。

・友だちと一緒にキャッチボールをして遊んでいたボールをあとからきたAが勝手に持ってどこかに行ってしまった、とRが保育者に報告に来た。

・周りの友だち達は、Aが遠足で血だらけで怪我をしたのを目撃しているので、救急車で運ばれたこと、次の日も休んでいたことで「A、死なへんやんな?」「大丈夫かな・・・」「俺、Aの虫かご大事に守っとくわ」とクラス中の子達が心配していた。       

・1学期は保育者に構ってもらいたい時などは、わざと皆と違う行動をとるなどしていたが、この件をきっかけに、表し方が変わってきている。
甘えるという事ができるようになったことで、自分が優しく温かく迎えられる嬉しさを知り、そうしてもらえるように落ち着いて行動するようになってきている。

・今までの行動がすぐに収まるわけではないが、確実に変化してきている様子が感じられる。
自分が受けた愛情から、相手の事を思うという事が少しずつわかってきているようだった。これまでは注意しても 「自分は悪くない」の一点張りだったが、話をしている時に何かをじっと自分の中で考えているような、葛藤や振り返りをしているような表情をするようになっていった。

けが後 ・2日後、頭にネットを被って来たAをみんながどれだけほっとした顔で「良かったー!」「A、大丈夫やった?」「頭にホッチキスしたん?すごー!!」と保育室前で迎えたか。それはAも本当に嬉しかったようで、照れ笑いを隠しきれずその日一日を過ごしていた。私はその時の友だちから受けた気持ちを忘れて欲しくなく、大事にして欲しかった。
なので、ボールを持って行って、それで遊んでいるAのところに行き、その時にみんながどれだけAのことを思ってくれていたのかを話した。そんな友だちに、お返しにAがしてあげられることって、一体何なのか、と。

すると、今まで以上にAは深刻な顔でうつむいて聞いていた。そして、頷くと、Rたちにボールを返しに行った。その時、「ゴメンな」などは聞かなかったが、きっと何か心に落ちたものがあったのだと思う。11月に入った今、他児から「先生、Aが・・・」という言葉は聞かなくなった。

・みんなの気持ちにお返しを自分ができることは何なのか?という問いかけは、抽象的過ぎて、伝わらないかもしれない・・・と思ったが、人の気持ちへの共感と周りへ自ら作用することを一番伝えたかった。 何より相手の事を自分の事のように感じ取れるようになって欲しかったからだった。
ここではまだ自分が奪ってしまったという事に気づいていないのか、何も感じていないのか、そのボールで笑顔で遊んでいる本児。
この時の事を話すと、さっと表情が変わり、自分の中での考え方が変わったように思えた。

【日時】 【エピソード Y児】 【考察】
夏休み明け ・A児が少し落ち着きだし、自分とやりあいやふざけ合いをする機会が少なくなった。仲が悪くなったわけではないが、Yとしては、あれ・・・なんかAが違うぞ・・・と違和感やソワソワを感じていたようだった。
今までなら、Aがした何かに対し、Yが保育者に告げ口したりすることが日常茶飯事だったが、それがなくなってきた。
すると、今度はYがわがままを言い出すようになった。
紙芝居を読むときの座る位置について、周りから「Yは背が高いし、後ろに行かないと小さいKちゃんたちが見えへんで!」と言われても、保育者の前から頑として動かなかったりして、「もう・・・しょうがないな・・・」と言われていた。そんなYをみてAは余計に「自分はちゃんと譲ったで」というような顔で動いていた。

・互いに互いを意識しあう気持ちに変化が生じてきている事が感じ取れた。
Aの場合は夏休み中にたくさん認められる機会があったため、自信や、もっと認められたいという意欲になり、素直に頑張ろうという姿が見られるようになったのだと思う。
Yの場合は、母親はやんちゃな兄やまだ 小さい妹に手を焼いている時期でもあったので、ひょっとするとA程はゆっくりと夏休み中にYと関われていなかったかもしれない。Aに反し、休み中にもっとたくさん遊びたい!という欲求が発散できず、久しぶりに登園した幼稚園でそれがわがままのように出てしまったのではないだろうか。今まで自分と同じように振舞ってきたAの姿が変わったことも、 「なんでや?」と意固地になってしまった要因かもしれない。
こちらが思っている以上に、この二人はそんな風に相手を意識し合っているのだと改めて感じた。

遠足帰り ・そんな中。Aが怪我をした。近くでその様子を見ていたYもショックを受けていたようだった。Aがいない帰りの観光バス。Yの手にはAの虫かごがずっと握られていた。
「Aな、救急車で行ってしもたし、持って帰ったんねん」
「どんぐりいっぱい取っていれてた。」
「バッタも入れててんけど・・・死んでしまってる。A、泣かはるかな・・・」
と虫かごをみながらずっとAの事を考えていた。

・翌々日、Aが登園してきたことでYはほっとした表情をしていた。Aは怪我のためあまり派手な遊びはできないので、一緒にブロックをしたり砂場で遊ぶ様子があった。

・それまで元気にやんちゃに遠足の公園で遊んでいたのに、Aの様子を見て表情が強張っていた。本児のこの言葉から、  救急車で運ばれていったAの事を、本気で心配している気持ちが読み取れた。

・Aが戻ってきて、傷が塞がるまで、大好きなサッカーなどは禁じられていたので、Aがサッカーコートをみてやりたそうにしている側へ行き、ブロックや砂場あそびに誘っていく姿からは、相手の気持ちを考え共感し、気を遣うという事ができているようだった。

秋の終わり ・秋の終わり頃、叔母が妊娠していた子どもを流産してしまい、従兄弟が生まれるのをとても楽しみにしていた本児はショックをうける。しかし、それ以上にショックを受けているのは流産した叔母であり、本児もそれを察し、叔母に慰めの言葉をかけたり、亡くなった従兄弟が天国に行けるようにと手紙を渡したり、家でもなにかをじっと考える事が多くなったという。
数日後、私に本児が叔母からもらった手紙を見せに来た。
その内容は、「Yが赤ちゃんや私のことを一生懸命考えてくれたことがとても嬉しかった、救われたよ、ありがとう」という様な内容が書いてあった。
読み終えて、「いろんなことを考えたんやな、きっと叔母さんにも赤ちゃんにも、届いてるやろな」と本児に伝え手紙を返すと、頷き、手紙を大事そうに自分のカバンにしまった。

・保育者にこの手紙を持ってきたということは、きっと本児なりに、自分が感じたこと、考えた事を理解や共感をしてもらうことで、自らも悲しい気持ちやなにかやりきれない気持ちを整理しよう、落ち着かせようとしているのでは、と感じた。
この時のYの表情は笑顔とも真顔ともいえないような、なんとも言えない表情だった。が、何か自分の中で納得したような頷きをしたので、私には、まだ悲しいけれど、保育者にも共感してもらえたことで、安心感をもてたのではないかな、と思えた。

冬が近づく頃 ・Aとの小さな衝突や周りとのトラブルは少なくなってきており、クラスではやっているドッジボールなどでも、今までのように自分がボールを独占し続けるのを楽しむのでは無く、パスができるようになってきていたり、自分が試合する番でなくても、他のチームが試合している様子を見ながら「そこ逃げなあかん!」など助言をしたり、外野が取りきれなかった外に出たボールを代わりに走ってとりに行き、外野に渡したりしている。 ・今ではお互いが少しずつ落ち着いてきたのがうまく作用し合っているようで、些細なことでのトラブルはなくなり、 冗談を冗談と受け止め、広い心で笑って相手を受け入れているような様子だった。
また、ゲーム中に自分だけでなく周りの子にパスをするようになったり、自分勝手にルールを変えることがなくなったことにより、以前より色んな友だちがゲームに参加してくるようになり、友だち関係が広がってきたことに喜びや満足感を感じているようだった。

<背景>

〈夏休み後のA児とY児の成長〉

  • 夏休みのそれぞれの過ごし方で、お互いの関係に変化が生まれる。
  • A児に落ち着きが見られるようになる。Y児はそれにとまどう姿があった。
  • A児は周りに認められる経験をしたことで、自分はできるという自信や余裕ができた様子。
    →以前は一番にこだわっていたが、真ん中でも納得するようになった。

 

<考察>

  • 夏休みに、二人兄弟であるが、保護者がじっくりと弟であるA君に関わり認める時間を持ち過ごされたことで大きく成長させたように思える。
  • Y君は、外では友達を作ったりするのは上手く運動面も発達している。兄弟は、下に可愛がられている妹がいて常に叱られることが多く、家庭で落ち着いて過ごせていない。認めてもらうことが少ないと思われる。
         →園で、保育者が褒める・容認するなど、達成感が感じられるようにしていく。

〈A児が遠足で怪我をする〉

  • A児→精神的なショックはあったが、周囲の子どもたちの心配する様子や優しさに触れて、嬉しそうな姿を見せる。
     その後、友だちとトラブルを起こした時、保育者からの言葉を聞いて周りを意識するようになった。
  • Y児→A児の事をとても心配する。怪我が悪化しないように気遣う様子が見られた。精神的な落ち着きが見られるようになる。

<対策>

2学期に大きな変化が見られたそれぞれの気持ち。3学期には子ども達が自分たちで作り上げていく生活発表会の 劇遊びが控えている。

  • 保護者にもここまでの二人の成長を伝えながら、こういった経験が大切だから、こう取り組んでいきたい・・・といった保育者の気持ちも伝えていくことで、家庭でも冬休み中に、自信を持てるようにたくさん認めてもらえる機会にしていただくようにお願いした。
  • 園でも、本児たちが周りの友だちの意見や思いを感じ、汲み取り、協力して行っていく事が大事になる活動を意識して与えていくことで、卒園に向けてどのように変わって行くかを引き続き見守っていくことにする。

B事例 第6回

【日時】 【エピソード 学年末(2~3月)のA児とY児の姿】 【考察】
2月生活発表会 ■生活発表会で『アリババと40人の盗賊』の劇遊びをすることになる。
Yは盗賊のお頭役、Aは最初はお頭が良いと言っていたのだが、あとから「やっぱり、手下にする」と盗賊の手下役を選んだ。

劇遊びをする中で、AもYも友達に対して「次は○○を用意するんやで」「○○ちゃん、出番や」ということを声をかけ合いながら、自分たちが主体的に劇のストーリー、舞台を進めていく事を楽しんでいた。
周りの友だちも、そうやって言ってもらえた事で見通しを持って準備できたり、セリフを思い出していけて、一緒になって意欲的に取り組んでいた。
お互い、家庭ではずっと劇遊びの話をしたり、劇中の歌を歌っていたという。

劇遊びの本番当日、終わったあとに、Aはとても清々しい顔で、「面白かった!    もういっかいやりたい!!」と喜んでいた。
そして、AとYは自分たちから周りの子と肩を組みだし、劇中の歌を楽しそうにクラス中の友だちと一つになって大合唱を始めた。
周りの友だちは、AとYに対して、「盗賊らしくてかっこよかった」「声も動きも大きかった」と認める声かけをしていた。
劇遊びの本番後も、しばらくはアリババごっこが流行り、衣装や小道具を使ってなりきり、クラスの友達とのやりとりを楽しんでいた。

☆二人が盗賊役を選ぶであろうことは 予想していた。が、YとAが同じお頭役にならなかったのは意外だった。
本当はAも性格的にお頭がやりたかったと思うのだが、あとから自分から身を引いた(お頭役は希望者が多かった)ので、私には、Aが今までの分、周りに気を使って自分が遠慮したのでは・・・と感じられた。
友達に対する物言いが、当初のように 命令口調ではなく、相手が気持ちよく聞ける、気づいていける声かけの仕方ができるようになってきていた。また、自分がそうやって伝えることでうまく劇を 友達と進めていける事に対してとても 喜びや満足感を感じているようだった。家庭での様子を聞いているとそれをとても感じた。

Yとだけ、Aとだけ・・・と互いが互いに  固執していたのが、たくさんの友だちと気持ちを通わせ、生活や遊びを進めていくことの方法や楽しさを知ったようだった。
本番の劇を終えたあとのこの様子を見ていると、クラスが一つになっており、また、その中心に立ってくれたのがYとAの二人だったな、と感じた。
周りの友だちが二人を見る目も劇的に 変わり、クラスをまとめてくれるリーダーとして、怖いから従っているのではなく、頼もしいからついて行っているようになったようだった。

3月 ■3月・・・クラス対抗でメチャビー(子どものラグビーのような遊び)に取り組み出すと、YとAは「俺たち二人強いから、チームを前半と後半で分けたほうが良い」と自分たちから提案した。
周りの友だちもそれを聞いて、「それやったら安心や」と納得している。「○○はパスが上手くて、△△は足が早いから・・・」と、AもYも周りの友だちの力を認めながら考えてチームのメンバー編成を考えていた。

そして、メンバーと作戦を立て合い、肩を組みながら「先生!この作戦でいくわ!頑張るしな!」と盛り上がり意欲を高めていた。

実際の試合では、友だちの名前を呼び合い、応援し、パスをし合い、自分たちの思わずしてしまった反則行為なども認め反省しながら取り組んだ。
そこには以前のように「AとYばっかりボール持っててずるい」
「約束守らへん!」と言われる姿は無かった。

☆メチャビーは、自分自身への自信、友だちとの信頼関係、認め合う気持ちが育っていないと難しいスポーツで、YとAがこの取り組みの中で、中心になって皆を束ねて進めて行っている姿は年度当初は想像できないような事だった。

C事例 : 園と保護者の関係

対象児  C君…5歳男児、二人兄弟の兄(妹は入園前)で、発達障害が疑われ保護者の理解が得られない

<背景> 年長に至るまでの経緯

年少組

  • 半日入園の際落ち着かず多動が疑われ、願書受付以降も新入園児の集いにも参加したことがない。
  • 入園後も衝動的な動きにより他児を叩く、蹴る、唾を吐くといった行為が見られた。
    ・周りに合わせようという意識に乏しく、保育中も走り回るといった行為等が目立ったため
    補助教員がつき、1対1で援助しながら事故が無いように見守った。
  • 家庭で、落ち着きのなさに悩んでいると言う話から保健所に相談するよう促したが、相談ということに関して消極的で、「そのうち治る」と楽観していたので、1年間様子を見る事にした。

年中組

  • 進級当初から、つばを吐く、机の下にもぐるといった事があり、混乱が深まってきたと
    判断したので、両親を呼び、支援センターをすすめる。
  • 10月、一度は発達検査を受ける気になったものの、直前になってキャンセルする。
    園と子ども支援センターのやり取りの中で、Aが入園前から保健所で経過観察の指導を受けており、センター、園とも、Cについて発達障害の疑いがあることを確認した。
  • 2学期末、その事をふまえて、何度も園と保護者の間で話し合いを持った。
  • 月毎の連絡ノートに評価することを1つと課題を1つ伝えていたが、母親から「担任は、Cの課題しか伝えず、良い所を認めない」「園長と話すと下痢をする」と言われる。
  • 母親の体調を考え、父親・主任・Cと1年間過ごした補助の3者で懇談をする。補助の必要性を説き再度療育を勧めた。が、療育に通うと「顔がさす」と言って、世間体を気にし、療育に行く事を拒否した。課題については「わかっているので 自分たちで何とかする」の一点張りであった。
  • 年度末に向かうにつれ、ますます混乱が深まり、周囲とのトラブルが多発してきた。
    当初のつばを吐く・机の下にもぐる・友達を押す 等の行為に加えて、保育室内をくるくる回り、その結果周りの子どもにぶつかる・周囲の気を引こうとして部屋から飛び出し、わざと階段から落ちようとする・おもちゃを2階から下にばらまく等といった事があった。

年長組進級時

  • 母親が、園内に入って来ることが無くなり、園の入り口で送り迎えをする。
  • 進級当初の緊張感から行動は控えめながら、突然大声を出したり、唾を吐く・クルクル回るといった衝動性、多動性は変わらない。

C事例 第3回 

【日時】 【エピソード】 【保育者の思い】
年長5月上旬 ・登園後、朝の支度をすませるのに時間がかかる
 くるくると回る・赤白帽子を投げる・ひとつの作業(コップをだす・タオルをかける等)が終わる度に走り回る

・補助教員が1対1でつき、次にする事を伝える

体育教室 ・体育の先生に来てもらい、年長組全員で教えてもらう。
・走る・体操するといった、体を動かす事には積極的だが、座って話を聞く・見本を見るといった時は落ち着かない。
・集中が最後まで続かず、その場から離れようとする。
・「先生、ぼくはな…」と先生の話の途中で自分の事を話し始める。

・終了頃には、疲れからか他児と一緒に並んでいる事が出来なかったので、補助と一緒に別の場所に座り、最後の挨拶の時だけ並ぶ。

・体育教室は楽しかった様で、「またやりたい」と意欲をみせていた。

・みんなと一緒に走っている事を褒める

・「みんなと一緒」という事に気づいてもらえる様、「まわりを見て」と声をかける

・今やるべきことは何かを、担任や補助が常に伝え続ける

・注意をしすぎると、Cにとっては「怒られた」という感覚しか残らない。課題を減らし、きをつけ等、出来たことを褒める

お神輿見学 ・近所の神社にお神輿を見に行く。列の最後尾を、補助と一緒に手をつないで歩く
・C自身は「お神輿見たことある!」と楽しそうに歩いていた。

・見学も最後に補助とゆっくり回る。帰りも「先生がいい!」と補助に自ら手をつなぎに行く姿を、他の保護者が見て、「やっぱりC君やな」
 という声が聞かれる。

・園外の活動なので、補助と1対1で手をつなぎ、Cのペースで活動してもらう事で、注意しない環境を作る。

・他の保護者が持つCへの思いを、両親は わかっているから、補助をつけない事を 希望するのではないか

・保護者へは、補助がついている事を伝えず、Cが出来ていることのみを伝える様にした。 

<分析>…質疑応答、臨床心理士ガヴィニオ先生の助言を交え

Q、母親のこれまでの様子は?

  • 走り回るCの行動に目を向けずに他の保護者と話し込んだり、叩かれたり蹴られたりしている相手の保護者に対しにこやかに話しかけたりする等、「社交的すぎる」面を園は心配していた。
    →Cと同じく、一度気持ちが高揚すると抑えがきかなくなるのではないか。

Q、Cの家庭環境は?

  • Cのいとこは高学歴、父親の家族、兄弟は医者
        →両親とも、期待をかけられるプレッシャーの中、出来る・出来ないの判断の中で生きてきたのではないか。
         そのため、自分も否定されてきた分だけ、少しでも課題を言われると否定されると受け取ってしまい、園との関係をシャットアウトしてしまうのではないか。
  • 対人関係を上手く築けない人は、周りの様子を常に伺っており、その分、周りの雰囲気を鋭く感じる。
  • 母親が園に入らないのは「また何か言われる・怒られる」と自分の経験から思ってしまうのでは?
  • 園長と母親の話し合いが多かったのが、追い詰める原因になったのかもしれない。
  • 母親とCは言動が似ている(衝動的・注意欠陥等) 

<対策>

  • あくまでCが過ごしやすい状況を作る。 真実だからと言って子どもに影響することや保護者の焦りにならない様伝えることを控えながら園児や保護者の相互関係を良くする。
  • 母親の気持ちになって、その思いや困りを共感する。
  • Cの課題を指摘するのではなく、「C君はこんなところで、この様に困っていた」と伝えると、受け入れやすいのでは?
  • 周囲の子どもとも関係を少しでも作るためにCに対してのきっかけ作りをする。
       できていなくてもCを受け入れる場を作っていく。その姿がきっかけ作りになるのでは。
  • 母親も「健康」と思わず、Cと同じく、常に配慮して接する。

第5回

【日時】 【エピソード】 【保育者の思い】
参観日 ・両親揃って参加。父親がビデオを構え、撮影していた。
・Cは何度も振り返り、両親の姿を確認していた。いつもは走り回り、じっと立てない朝の挨拶だが、当日は緊張した表情で最後まで動かずに取り組んだ。
・活動も保護者と一緒だったので、立ち歩くことなく、最後まで取り組めた。

・いつものCとは全く違うCの様子に、保護者からの圧力の強さを感じた。

・いつでも援助出来る様、補助が離れた所から見守る様にした。

参観後 ・保護者が帰ると、ほっとした表情をみせる。 ・最後まで頑張った事を褒める。
降園前 ・昼食後から落ち着かなくなり、降園準備をする頃には、拳を前に出しながらわざと友達の前を走る、着替えをしている他児の横で、わざと大きな音を立てる等の行為を始める。
・補助が止め、担任も注意をすると、口に唾をためてクチュクチュと音を立て始める。
・「おうちでもクチュクチュするの?」と聞くと「お母さんが怒らはるからしいひん」と答える。

・参観の頑張りの反動である事を考え、他児から離れた所で、補助と1対1で降園準備をする。

・会話をしつつ、自分で帰り支度する事を促し、時間通りに出来た事を褒める。

降園 ・他児は並んで点呼を受けるが、Cは、名前を呼ばれるまで、補助と一緒に座り、ジャンケンをして過ごす。 ・降園までの見通しを伝え、最後まで座る事を約束する。
運動会前 ・両親が園児席側で常に注意をしてCを見ている。
・Cが砂をさわると「砂!」と厳しく言って触るのをやめさせていた。
・Cは両親の見守り(監視)もあり、落ち着かない面はみられたものの、最後まで他児と一緒に過ごす事が出来た。

・「運動会頑張ったら、ゲーム買ってもらうねん」と言っていた

・母親に運動会前日「時々砂遊びをして、砂を投げる」のみを伝えた。
・補助が必ずそばにいる様にする。
・保育者は最後まで頑張れた事を褒めたが、Cをずっと見ていた保護者は疲れてしまったのではないか。

運動会 ・両親が園児席側で常に注意をしてCを見ている。
・Cが砂をさわると「砂!」と厳しく言って触るのをやめさせていた。
・Cは両親の見守り(監視)もあり、落ち着かない面はみられたものの、最後まで他児と一緒に過ごす事が出来た。

・「運動会頑張ったら、ゲーム買ってもらうねん」と言っていた

・母親に運動会前日「時々砂遊びをして、砂を投げる」のみを伝えた。
・補助が必ずそばにいる様にする。
・保育者は最後まで頑張れた事を褒めたが、Cをずっと見ていた保護者は疲れてしまったのではないか。

10月初旬 ・なぞなぞ・ドリルに興味を持ち、園で問題をだしたり、答えを言ったりするが、時と場所を選ばない。
・家で勉強をすると、ご褒美にDVDが見れるらしい。

・問題を出す事で、他人とうまく関わる事が出来るのではないか。
・保育者にも「すごいね」と褒めてもらえる手段になっている

<分析> 心理士ガヴィニオ先生を交えて

  • なぞなぞは、新しい他児とのかかわり方。身体的な影響を及ぼさない良い方法。
  • ドリルは、結果が視覚的に見える。できることを家庭でも認めて貰える方法。
  • 普段批判にさらされることが多いC
            →バランスを取ろうとして、当たり前以上のことをさせようとする
            →保護者は、周りに対して被害的意識をもっているのでは

<対策検証>

  • 園がC親子にとって安全な場所であるということの伝え方
            →Cが受け入れられていると分かる、理屈でないメッセージを伝える。
  • 園が受け入れている→積極的にかかわらず、見守る形で対応を控える。
    結果として園と保護者が緊張した関係にならないことが、Cの安定を作っている。

第6回 事例C

【日時】 【エピソード】 【保育者の思い】
音楽会練習 ・集中が続かなくなると、演奏前、わざとトライアングルを落とす。
・体が前後左右に動く。

・落ち着きがない時、「練習1回したら、お部屋帰ってもいいよ」というと「嫌だ!怒られる」といって泣く。しかし、集中が続かず、注意を受ける事になる

・演奏直前に楽器を渡す。
・他児に影響のない様、端の前列に座ってもらう
・Cの負担を考えて提案するが、保護者に「皆と一緒」という事を強く言われているらしい。
音楽会当日 ビデオを持つ両親の方を向いて、最後まで集中してやり遂げる ・保護者が見ている時と、見ていない時の差が大きく、家での負担が予想される。
1月下旬 ・Cが、おもちゃをとられたと勘違いし、他児を押してケガをさせる。
・母親が「よくある事」と相手の保護者に伝えた事からトラブルとなり、Cと一緒に相手の家に謝りに行く

・二人で落ち着いて並んで遊んでいた時の事だったので、保育者が間に合わなかった。
・双方の保護者に事実のみを伝えたが、園の対応にも配慮の足りない点がなかったか反省した。

1月下旬 ・同じ相手が、Cにお片付けする様言ったところ、怒ったCに肩を噛まれる。Cが「お母さんに叩かれるから言わないで」と泣いて保育者に訴える。
・前回に続く事でもあり、双方の保護者に伝える。Cの母親へはCを責めない様にお願いしたが、園を離れた時点で「お父さんと話し合いしような」という声を職員が耳にする。

・前回の反省をふまえ、Cの母親へはCの行為を止められなかった事を謝った。
・母親は「怒らないであげて」という園からの要望を受けたものの、納得はいかなかった事が考えられる。

生活発表会練習 ・机の上に立って演技する事になる
・年少組の時、机から落ちたので、今回は机にビニールテープで四角の囲いの印を示し、囲いの中から出ない様、約束する。
・Cは自分が以前落ちたことを覚えていて、他児にはない囲いが何故、あるのかについては、納得していた。
・机の横に補助がついている事も「ぼくが落ちないように守ってくれている」と言っていた。
・自分の出番前後は集中が続かない。補助が声をかけ、途中で座る、
 
机から降りる、と提案したが、音楽会と同じく、最後まで皆と一緒にする事にこだわる。

・母親に連絡し、「事故を繰り返したくないので」という理由で、テープを張る許可をもらう。
・「C」への配慮、という言葉にすると、母親からの拒否が予想されたため、事故、という言葉に代える。
・母親は「わかってます」と言い、園からの提案を素直に受け入れてくれる。

生活発表会当日 ・保育室で待機している間は、補助と1対1で過ごす様にする。
・保護者の見守りがあるので、舞台での演技中は最後まで落ち着いて出来た。

・いつでもCに声をかけられる様、幕後ろに補助が待機した。

臨時研究会 ・・ 安定状況作表 検証

安定状況を作表し、A・B・Cそれぞれの事例について 子供に「安定」が見えたのは、何の作用があったか?
またプロセスを整理しながら傾向や変化、通じるものを探った。

  • 安定へのきっかけは?
  • それまでの背景・プロセスについて、具体例(声掛け・対応等)を挙げていく
  • 変化を確認して共通点を探れれば? 
    保育者の変化・家庭の変化・園全体の意識変化・周りの子どもの変化
    保護者との関係の変化

作表方法

A事例「保育者と子ども」/ B事例「子どもと子ども」/ C事例「園と保護者」

  • 事例のどこに視点をあて、どこに対策をたてられたのか
    「こうあるべきだ」から、まず「どのような状況なのか」を知ろうとする
  • 事例 → 対策 → それによる変化 
     
    何が起こってそうなったのか? ※視野が広がった ※両親が考えた

上記の事を参考に各事例を整理し、検討する。

【事 例】 【対 策】 【安 定】 【考 察】
※時系列に沿って事例を箇条書きにする ※それぞれの事例についての対策 ※対策の結果どのように安定したか ※安定するきっかけを考察する

A事例「保育者と子ども」

【事 例】 【対 策】 【安 定】 【考 察】
・登園時、挨拶をするが、何も返答してもらえない。 ・姿勢を低くし、k君と視線が合うような状態で話し掛けるようにした。 ・視線が合うようになり、小さな声で挨拶出来るようになった。 ・他者とコミュニケーションを取る上で、視線を合わせることが必要であるということが伝わった。
・帳面にシールを貼る際、無言で帳面を差し出してくる。日めくりを見て貼るように伝えても行動しようとしない。 ・日付を確認し、貼る場所を一緒に考えるようにした。 ・自分で日めくりを確認しながら、決まった場所にシールを貼ることが出来るようになった。 ・何度も担任と確認しながら取り組んだことにより、一人でも不安に思うことなく出来るようになった。
・製作活動では、周りの子たちが説明を聞き、活動に取り組んでいても、手を動かそうとしない。 ・説明の後、すぐにk君の所に行き、再度説明をしながら一緒に作業をするようにした。 ・自分で、少しのりを塗ってみたり、道具を手に取ったりするようになった。また、困った時には担任を見て、訴えるようになった。 ・手の感覚が過敏だったが、一緒に作業していく中で、のりの感触にも慣れた様だ。また、周りの子達も自然とk君に教えてくれるようになり、担任が居なくても、友達の動きを見ながら取り組めるようになった。
・描画活動では、周りが絵の具を取りに行く中、じっと周りの様子を伺っている。色は黒を使うことが多く、k君の描く人には表情がない。また、自由遊びで自由帳に絵を描くときには、ひたすら数字を描いている。 ・混雑している中に入ることが苦手なため、絵の具を置いている場所が空いてから一緒に取りに行き、何を描くか声を掛けるようにした。また、黒以外も使えるよう描く物が何色か考えるような言葉掛けをした
少しでも自分からやろうとしている時には、大いに褒めるようにした。
・2学期には、自分で絵の具を取りに行き、自主的に取り組む姿勢が見られる様になった。
 また、黒以外も使う様になり、人を描く時も笑顔を描いたりする様になった。
 自由遊びでは、数字以外にも友達の絵を見て虹や人の顔を描く様になった。
・褒められることにより、自信を持ち取り組めるようになった。
・外遊びでは、一人で立ち歩いている。友達に話し掛けられても、答えることが出来ないため、一緒に遊ぶことが出来ない。 ・手を繋ぎ、一緒に園庭を歩いたり、集団で遊んでいる児達の所に行き、遊びに加わったり、友達と関わりながら遊べるよう働き掛けた。 ・担任が遊びに加わった時には、笑顔で友達と関われるようになった。笑顔が見られるようになり、友達から誘われることも多くなった。 ・担任が加わることにより、気持ちが安定し、笑顔を見せることが出来るようになった。
・給食では、白ご飯と肉類以外食べることが出来ない。ご飯もその上にふりかけ等が乗っていると、担任がそれらを取り除くまで食べようとしない。野菜はイモ類以外食べることが出来ず、口まで運んでも絶対に食べることはない。
 弁当には、いつも同じ物が入っており、弁当でも食べ終わるまでに一時間以上かかる。
・食事の前に必ずご飯の上の物を取り除く様にした。また、好きなもの以外も食べられるよう事前にどれなら食べられるか確認し、決めた物は必ず食べるよう促した。
 触感や匂いに敏感、食わず嫌いの物も多かったため、苦手な物も一口は食べるよう促し、口へ運ぶ様にした。少しでも食べられた時には大いに褒めるようにした。
・食べられない物がある時には、担任の方を見て訴えるようになった。
 また、白ご飯の上に乗っている物も自分で上手に取り除き、食べ始める様になった。家では絶対に食べない物でも、担任が口に運ぶと少しずつ食べる様になった。
 弁当では、苦手な物を先に食べる様になり、30分あれば完食出来る様になった。
・褒められることで、自信が付き、自分から食べられる様になった。
 また、保護者の話によると担任が「美味しいよ。」等声掛けをすることにより、食べることに興味がわき、苦手な物も食べてみようと思えるようになった様である。
・進級当初、出席等の返事をする時以外全く声を発することがなかった。
 話し掛けても応えてもらえず、友達との関わりもほとんどなかった。
・目を合わせて、毎日何度も声を掛ける様にした。
 k君の持っているキャラクターの持ち物から話を広げ、友達からも話し掛けてもらえる様働きかけた。
・友達から話しかけられることで、表情が柔らかくなった。また、まだ言葉はないが、頷いたり、指をさしたりすることで少しずつ担任が側にいなくても、友達と関わりを持つことが出来るようになった。 ・頷く、指をさす等友達との関わり方を自分なりに考え、行動に移すようになった。また、友達との関わりが増えたことにより、自然と笑顔が見られるようになった。
・進級当初、担任の問い掛けにも一切答えることなく、常に無表情であった。しかし、担任がお帳面を書いたり、何か作業をしていると側にやってきて、顔を覗き込んだり、跳んだり、跳ねたり、踊るようなしぐさを見せる。 ・常にk君の行動に目を向け、友達との関わり方等、少しでも行動に変化があれば声を掛ける様にした。
 また、担任の側にやって来て跳んだり、跳ねたりするときには、隣で一緒に同じことをするようにした。
・次第に担任との関わりが跳んだり、跳ねたりの身体表現から、頬をすりよせたり、手を握ったりのスキンシップに変化していった。 ・常に行動に目を向け、声を掛けることにより、担任にいつも見守られているという安心感を得ることが出来た。
 また、一緒に身体を動かしたりすることにより、担任は自分を理解しようとしていることが伝わった。そこから、信頼関係が生まれ、自分からスキンシップを取ることが出来るようになった。

B事例「子どもと子ども」

【事 例】 【対 策】 【安 定】 【考 察】
一学期      
・AとYが毎回些細なことでの衝突。周囲を巻き込んでしまう。手を出しあったり、周りに命令したり、自分勝手になる。 ・周りの事を考えられるように・・・様々な声かけ・注意を試しながら、けじめをつけられるようにしていく。 ・ずっと続けていく事で、周りに手を出すことはなくなってきたが、まだまだ言葉で周りを押さえつけようとしていることは多い。 ・注意されるのが嫌だから、手は出さなくなった、という感じ。何がダメなのか、は心に響いていないようだった。
・周りの友だちが、AとYにはよくないイメージを抱きつつある。 ・周りの子ども達が本児たちにマイナスのイメージだけを持たないよう、AとYの良い所を認めて伝えていく。 ・スポーツやゲームの中でのAとYのうまくこなしていく姿を認めていけるようになる。 ・良いところがあるなと感じ、遠巻きにはしなくなってきたが、遊びの中での意見や進行はAとYに口出しできず委ねている事が多い。
・放課後遊びがけじめがつけられていない→母親達が注意をしない、または、母親自身が時間などのけじめをつけられていない。 ・園全体で放課後遊びのルールを守れるように、共通理解し、保護者への声掛けの徹底。なぜ、それをしてはいけないのか?と保護者から子どもに伝えてもらえるようにする。 ・保育時間中に守っているルールを、放課後も守れるようになってくる。また、見境のないケンカが頻発しなくなった。 ・保護者が常に自分の子どもの様子を、すぐそばで見守るようになってきている。〈見回りの保育者が常に声かけをしていないといけない状況ではある〉
・他児の作品に落書きをしたり、ルールを守らないなど、
けじめ・善悪の判断をしっかりと付け、落ち着いた行動がとれるようにしたい・・・懇談で保護者からも要望が見えてきた。
・園と家庭で、守らなければいけないこと・けじめをつけるべきことを共通させていけるように、夏休み前の個人懇談でそれぞれの保護者に話す。
寝る前の絵本読みなど、落ち着きを育てられる毎日の習慣について伝え、実践してもらう。
・夏休み明け・・・
それぞれの家庭で意識して過ごしてきたことで、それぞれが自信をもって取り組みだしている。自分が一番!にはあまりこだわらなくなってきた。命令口調などはまだ残るが、誰かが迷惑したりすることはしなくなってきた。
・夏休み中の様々な経験を通して、自信や意欲が身に付いた。できたことに対して、友だちや保育者にたくさん認められ、自分が1番で無くても、周りのみんなはちゃんと自分を認めてくれている、という安心感につながった。また、けじめを共通させてもらったことで、行動を意識できるようになってきている。
・A児の変化にY児が戸惑い、わがままを言ったりと、意固地になる事があった。 ・A児の良いところは認めつつ、その中でY児が埋もれてしまわないように、うまく見本にしたり、競争させたりすることで、Y児の事も認めていき、意欲を高められるようにする。 ・だんだんと落ち着いてきだし、わざと自分だけ我を張るような事がなくなり、雰囲気が柔らかくなっていった。 ・A児ばかり認められていたことへのヤキモチが解消されていった様子だった。解消後、自分ももっと認められたい!と、
うまく競争心につなげることができた。
・A児が遠足でケガ
→いつも元気なAが救急車で運ばれた事にYをはじめ、全員がショックを受ける。クラス中で大丈夫かな・・・と心配する。
  ・Aが翌々日に笑顔で登園し、クラス中で喜ぶ。
Y児・・・ずっとAの虫かごを離さない。 ・Aの虫かごを大事そうに抱えているYのAを心配する気持ちを受け止め、安心できるように声をかける。 ・Yも心底安心し、Aに対する声のかけ方が変わってくる。遊びなど、気遣って参加できるものを一緒に考えたりできるようになった。
他の子への関わり方もとても柔らかくなっていく。
・友だちの思いに共感し寄り添い、思いやる事をこの一件を通して身にしみて感じたようだった。
・A児・・・2針の大きな怪我をした、救急車に乗った、という事でショックを受ける。
→保護者や保育者に自分から甘え、スキンシップを求めてくるようになる。
・甘えてきたときは安心出来るようにしっかりと受け止める。
家庭との連絡を取り合い、傷が開かないように安全面の徹底、いつもどおり遊べないAがストレスを溜めないように、一緒に遊んだり周りの友だちとつなげたりしていく、やっても大丈夫な楽しい遊びを提供していく。
・Yも一緒にいてくれたため、普段と違う遊びを楽しむことができ、笑顔で過ごせた。
スキンシップも、安心できると徐々に自分から離れても大丈夫なようになっていった。
・クラス中の友だち、周りの保育者、そしてYからの思いやりに触れたことで、少しずつ、自分の行動に対しての振り返りや、相手の事を思うということはどういうことなのかを考えられるようになってきている。
・戻ってこられた安心感からか、また自分勝手な行動が出だす。
〈Rのボールを取る〉
・クラスの子がどのように心配してくれていたかを伝え、思いやってもらえた事がどれだけ嬉しかったか、また、その事に自分が感謝してどんなことができるかを一緒に考える。

C事例「園と保護者」

・ひらがな、計算というわかりやすい達成感を得る事が出来た。

【事 例】 【対 策】 【安 定】 【考 察】
※年 少      
・多動・他児への加害がみられる。 ・補助教員をつけ援助。

・他児とのトラブルを防ぐ事で、本児が注意される。
・回数を少なくする様に配慮する。

・補助教員と別行動をする事で落ち着く。

・他児とのトラブルが減った事で、注意される事が少なくなる。

・個別に対応してもらえる事でやらなければならない活動が整理されたのではないか。
・Cのペースを優先させる場合があった事が、良い方向へ作用したのではないか。

※年 中      
・多動・加害が増す。
  机の下に潜る。
  くるくる回る。
  大声をだす。
  他児を蹴る、叩く。
  物を投げる。
  唾を吐く。

・引き続き、補助教員をつける。

・活動が3つ以上続く時は一つずつ説明する。

・集団で活動する事を無理強いしない。

・保護者に園生活を伝え理解を求める。

・自分のペースで活動出来た時は、安定がみられる。

・落ち着きがなくなってきた時は、補助教員と別行動を取る事により安定を確保する。

→ 保護者に伝えた事により、逆に家庭から本児を約束で拘束する事になってしまった。

・集団で何をすべきか、何をしなければならないかを、考える事が苦手。

・わがままと思える行動や他児が迷惑と思える行動は、周囲の気を引きたいという思いがある。

・母親と約束していない事は、やっても良いと言う。

<家からの約束>
・くるくるしない。
・アホ声出さない。
・おもちゃを出さない。
・家庭で計算ドリル、漢字等の勉強を始める。

   
・やってはいけない行動をした時「ママにいわないで」と保育者に懇願する。

・補助教員が見守り、援助する    ・興味が持続したときは、長時間集中できる。

※年 長      
・落ち着きは見られる様になってきたものの集団での活動が多くなると、他児とあわせた行動がとりづらくなる。
運動会・音楽会の練習等

・保護者へは、本児の成長vを伝えるのみとする。

・補助教員と1対1で話したことにより、自分の思いを言ったり受け入れてもらえた。 ・勉強ができる、という事が保護者を安心させた。
・保護者からCへ多くの圧力がかかっている。
 (ドリルをするとDVDが見られる。皆と同じ事をする。砂を投げない 等)

・園から伝えた、Cに対するマイナスな評価は、全てCへの約束となって反映されるので、情報は良い事を中心とし、Cへの負担を軽くする様配慮する。

・保護者に補助が付いている事を伝えない。

・保育者も具体的に褒める事が出来た

・保護者と引き気味に対応する事が、園との関わりになっているのではないか

・園と保護者が言い合いになっていない事が、Cにとって良かったのではないか

検証内容

  • A.B.Cそれぞれの事例について、安定状況へのプロセスを探る
            → 時系列に沿って 様々な安定を抽出する
  • そこに至るまでの対策を確認し、どの様な作用によって、子どもが安定する状況
    に導かれたのかを考察する。考察については、それぞれ意見を出し合う。

事例 A  K君 年中組 「保育者と子どもとの関係」

     

事例 B  A君とY君 年長組 「子どもと子どもとの関係」

     

事例 C  K君 年長組 「園と保護者との関係」

]

<それぞれの事例の共通点を探る>

子どもの行動・心情等の実態を把握するために母親との関係に着目

●A事例

  • 本児の課題に気づいた時、その対応について保育者が考え、見直していく事を繰り返した。
  • 対応をすすめていく中で、母親も、本児の育ちに対して不安な気持ちを持っている事に気づいた。
  • 母親の気持ちについて、担任だけでなく、副園長をはじめとした園全体が共感した事で、園以外の相談機関(福祉センター)へとつなげ、母親を後押しする事が出来た。
  • 園や、福祉センターからの働きかけにより、母親が本児の課題に気づき、その対応について考えるきっかけをつかむことが出来た。また、母親の協力を得られた事により、園も、本児を支援するためには、センターとの連携が必要である、との認識を持つことが出来た。

●B事例

  • 自分勝手な行動が多い二人の園児に対し、保護者である母親自身のけじめのなさも目立った。
  • 担任から、母親自身のけじめがつけられていない事が、子どもへ影響する事を伝えた。
        (善悪の判断がつきにくい・相手の気持ちを考えられず、自分勝手な行動をとる)
        同時に、普段からの様子を電話や懇談会で継続して連絡し、家庭での望ましい関わり方を伝えた。
  • 夏休みや冬休み等、子どもとじっくり関われる機会に、保護者も対応を考え、実行してくれた。その事により休みが明けた時等に自信や意欲を持ち、落ち着いた様子がみられる様になった。

●C事例 

  • 発達障害の疑いがある本児について、検査を受け、療育を受けて欲しいと望む園と、障害を認めない保護者との間で軋轢が出来た。その事により、C児の家庭での緊張感を高めることとなり、母親の家庭での言葉かけ等が、本児の園生活に影響を及ぼした。
    園は、本児の課題について母親に伝える事を控える、という対応に変更した。
  • 園からの言葉について対応する、という母親からの圧力が減った事により、本児の園生活が以前よりは安定したものになった。

<保育者と保護者の関係を作る際へのプロセスについて>

  • 1年の流れの中で検証した結果をまとめる
  • 子どもと保育者の関係から、保護者に至るまでのエピソード
    →保育者の努力から得られた 保護者への理解・働きかけは何か?

●A・B事例

  • 保育者・子どもは相互に試し、試される行動をとる。
  • 子どもの行動について、保育者がどの様に接したらよいか、より良い対策を考え、試み、次にまた、子どもの変化の経緯を見逃さずに対応を深める事で、関わりに変化がみられ、保育者と子どもとの距離が縮まる。
  • 保護者へ、その関わりを肯定的に伝え、子どもと保育者が深く関わって安定した環境にある事を理解してもらう事により、安心感を得る事が出来る。
  • 保育者は、子どもが安定していくまでの経緯を構成し、考察を深めることでそのきっかけとなった行動や、保護者を交えた周囲の環境にも気づき、理解を深める事が出来る。

●C事例

  • 園が保護者へ、本児についてのありのままを伝えず、受け止め、保護者に寄り添うという姿勢を明確にした。
  • 保育者は、園生活の中で本児が努力したと思われる事、成長した所を中心にして、日常を保護者に伝えた。
    また、本児にあわせた活動を用意したり、トラブルにならない様、補助教員の目的を明確にしてを配置した事により、周りから否定されやすい状況や、周囲への影響も少なくなり、安定した環境を作る事が出来た。
  • この様な事から、本児自身の成長が見られ、注意を受けたりする事が少なくなった事で、本児も活動に自信を持ち、安定した園生活の時間が持てる事が多くなった。
  • 自己達成感も高まり、本児が安定してきた事が、保護者の安心感につながっている。
  • 保護者からの働きかけ、きっかけとなる園行事
  • 日常の出来事

第6回 まとめ

  • これまでの経過を確認する。
  • A,B,Cそれぞれの事例を引き続き報告、検討する。
    → こども、保育者、保護者それぞれの状況を確認する事により、その変化のきっかけは何かを探る。

1.これまでの経過

第1回(4月) 「子どもの行動を読み取る」

  • 現在の事例を 各園で報告しあい、検討していく
  • 回を重ねるごとに事例を追っていく

第2回(6月) 「事例検討から研究へ」

  • 解決方法ではなく、何の作用が状況変化をもたらしたかを探る
  • 対象児の困りの部分等、どこに焦点をあてるか
  • 対象児の気質を読み取り、保育者の姿勢を考える

第3回(7月) 「質問等により、研究の精度を高めていく」

  • 各事例の経過報告、対応について検討する
  • ガヴィニオ先生からのアドバイス

第4回(9月) 「事例を引き続き検討する

  • 何があって状況が変わったのか、保護者、幼児・保育者との関係を探る
  • 夏休み後の変化を探る

第5回(11月) 「事例を引き続き検討する」

  • その子にとって安定がみえた → 何の作用があったのか向を見つける 
    背景・プロセス・保護者の受容・他児の受容
  • ガヴィニオ先生からのアドバイス
  • 安定状況を作表検討

第5回補足(1月) → 最終回に向けて、1年間のまとめをする

  • 安定状況への検討

第6回(2月) 「1年間のまとめ」

  • 安定を導き出すまでの経緯の確認(読み取り・手だて等)
  • 各事例の共通項を探る
  • 最終のまとめ

2.各事例の報告

  • A,B,C 各事例について 経過報告
  • ガヴィニオ先生より アドバイスを交える

3.各事例の共通点を探る

  1. 対象児を事例化する事により、保育者が対象児により深く興味をもった
  2. 保育者が寄り添い・受け止め・かかわる事で対象児への理解が広がる
    → 保育者の理解がより深まり具体的な対策に向えた
  3. どこに視点をあてて」「どこに対策をたてるか」という視点をもった事で保育者の態度に変化がみられた
     → 「こうあるべきだ」から「どのような状況なのか」を知ろうとする態度になった 

4.まとめ

<事例 → 対策 → 対象児、保育者の変化 → 安定>

  • 保育者が「困っている」から「悩む」に意識を移動させる事が対象児の安定へとつながる
  • 対象児への対応を考える事  →  その行動の読み取り方を多角的に考えるきっかけになる
  • 子どもへの理解が深まり、より深く関わろうとすることで対象児への視野が広がる
  • 保育者、園が受けとめていく事で対象児が安定し、より良く変化していく
  • 対象児について 他の保育者の協力等、園としてのサポートを考えられた
  • 保護者と共通の理解を持つ事の難しさは 
          → 対象児のこれからの育ちを重視し 性急に解決を考えない
            対象児の在園中の生活の安定を考える

5.最後に

 この1年間各事例について報告しあい、考えを出し合う事で、保育者の気付きが生まれて対象児に対する理解が深まった。そして、力を得て対策に向かえ、大きな安定にもつなげる結果もあった。また、心理士の先生のアドバイスを交える中で、心の部分の推測を立てることができた。対象児だけでなく、その周囲の関わりについても考えるきっかけとなった。
保育者が子どもの行動を読み取り、その変化を敏感に察知し、より良い安定に向けて実践する事が、子どもの生活にとって必要であり、大切である、という事を、この研修を通じて学ぶことが出来た。これらの事は、引き続き今後の保育で実践していきたいと思う。

終わりに

 事例研究は、子供の成長と言う自然法則の中で、様々な要因から時間と共に変化していきます。
決められた短い時間の中で、どの視点で研究課題を決定し研究するかが難しいと思いました。
今回3事例を子ども・保育者・保護者の関係性から研究対象としましたが、毎回追加されていく事例を追うのに時間を要し、安定状況に至る定性研究としての検討に十分に時間が生かせなかったことはか課題に残りました。その中で、研究員の共感から多面的な検証で手だてを探り実践に生かせた結果、事例に大きな変化を引き出せました。また、保育者一人の判断による陥りや園内での行き詰まり感は、事例検討の多くの方々の言葉の中で、気付きを生み発想の転換も得られる実践にも生かせた研究でした。