平成24年度 特別支援教育研究会【第2回】

特別支援教育研究会(第2回)

内容: 「 」
講師: 立命館大学 朝野浩先生
日時: 平成24年6月27日(水)
場所: こどもみらい館
参加人数:  
報告者: 聖三一幼稚園 野澤 彩子

【講演まとめ】

はじめに

 第1回のおさらいから第2回研究会ははじまりました。この研究会はインシデントプロセスの手立てを使ってグループワークをします。インシデントとは小さな出来事という意味です。始まりは、些細な小さな事インシデントが大きな出来事アクシデントにならないよう、インシデントの間に整理して解決できれば一番良いのです。従来のケーススタデイ、ケースカンファレンスでは発言しにくいという場面もあったのですが、もっともっと活発に話し合いができた方が多方面から子どもを捉えることができるので、この研究会ではインシデントプロセスの手法をもってグループワークをしっかりしていきます。

第1回研究会コミニケーションペーパーからの展開

■「抱きしめる」「叱る」「特別な目でみてしまう」そして「ほめる」ということ

 「よくわかったよ。」という時にギュッと抱きしめることはあります。しかし、子どもを否定する姿勢からではどれだけ抱きしめても意味はありません。特別な目でみる事につながりかねません。特別な目でみているのは、むしろ先生の場合が多いのです。多くの場合子どもたちは他の子を特別な目ではみていないのです。しかし先生が特別な目でみて接していると、それをみて子どもたちは学習するわけです。

 「○○ちゃんダメでしょ!」と何度特定の子をよんでいることでしょう。他の子が同じ事をしても注意されていないのに○○ちゃんは何度も注意される。・・・先生の姿勢を変えることが大切です。「ダメでしょ。」と否定的ではなく先生と一緒にあやまることができたり一緒に言葉に表して言えたりできるように、子どもへの先生の言葉がけが大切です。

 子どもをほめるときはみんなの前でほめることは大切ですし、他の子もその子をほめるような雰囲気をつくるようなことばでほめましょう。ほめられて育つのは、小学校2年生ぐらいまでですから幼稚園の時期はほめて自信を持たせてあげましょう。

■自閉症についての付け加え

 基本的に自閉症は三つ組の障がいといわれます。皆と同じ行動がとれなかったり、人との関係がうまくいかない、いわゆる社会性に乏しいのです。その原因はコミニケーションが不得手なところにあります。基本的には、発達に遅れがあるからです。しかし言葉の発達に遅れの無い高機能自閉症もあります。中でもアスペルガー症候群の場合は創造力推理力が乏しい特徴があります。

 スペクトラムとは「虹」という意味です。虹は赤・橙・黄・黄緑・緑・青・紫ですが各々の色の境目はぼやけています。自閉症スペクトラムというのは自閉症の特徴は持っているけれど虹のようにぼやけていて三つ組の特徴が全部揃って「自閉症」ですと、きちんとわけることができないという場合なのです。

■保護者とのかかわり

 その子を育てている保護者、その子を産んだお母さんの気持ちを考えて話すということはとても大切なことです。そのためには今保護者(母親)は混乱期なのか、それとも子どもの障がいを受け入れられる状態にあるのかなどを見極めなければなりません。伝えるときには、幼稚園でのその子どもの様子を先生が自分の言葉にして伝えることが大切です。例えば、「こういうふうにしてみたら、こうなったんですよ。お母さんも一緒にがんばってみませんか。」というような伝え方が大切です。子どもがどれだけがんばっているかも伝えましょう。子どもの困りだけを伝えるような伝え方はさけましょう。

発達に関する学び(発達概論)

■発達と教育のかかわり

 発達とは、物事の初期状態がその中に含まれる潜在的な可能性や発展性というようなものを順次発展させ充実していくことです。

 発達と教育のかかわりをみていきましょう。単に子どもの持つ内発的なものは自然に展開するものではありません。意図的無意図的な教育との関わり合いとの関係でそれらが展開するのです。子どもの外側から捉えていく働きが教育であり、教師のその働きを受けとめてくれるのが子どもです。

■ピアジェの発達理論

以前はピアジェを越える発達理論はでてこないだろうといわれていました。しかし、現在に至りピアジェの理論の問題点を指摘あるいは修正改正する方向の新しい○○理論もでてきています。が、ある意味ではピアジェの理論は偉大な発達理論ということができます。

 ピアジェは障がいのない自分の子ども達の成長発達をみながら、発達の筋道を確立していきました。子どもは自分の行動を自分の概念として取り入れる、すなわち、認知です。また、子どもは外界との関係の中で行動を起こしていきます。外界を自分の中に取り入れて自分の考えややり方を変えてもいきます。この二つのことをバランスよくやっていくということが均衡説です。しかしバランスは変わるので構造は変化し再構成されます。

■子どもの外界世界の捉え方

例えば、AB二つの物があるとします。大人から見て同じものでも子どもは全く別のものに見える場合がありますし、逆に大人が見て別のものでも子どもは同じものとみなすことがあるのです。幼児の知覚や認知は大人と違うこともあるのです。

 外界を自分の行動のシステムの中に取り込み自分にとって意味のある世界に構成する働きが認知です。

  • 視覚は神経機能を中心とした行動機能です。例えば六歳ぐらいになると斜めの線も引くことができ、菱形の形を模写することが出来るようになります。菱形は鋭角同士と鈍角同士の対角線が90度でクロスしていますね。菱形を書くためには一筆で書かねばなりません。斜め線に対して手の協応作用が必要になります。卒園期頃に書かせてみると線にこぶが出来たりすることもあります。完全に書くことができる目安としては六歳六ヶ月~七歳位となります。折り紙の例をあげましょう。対角線がきちんと折れるかどうか角と角を合わせ、四角に折り開かずに子どもに提示して折らせてみる。折った後折り紙を開いたときに折り線が90度にクロスしていれば通過です。この事は鉛筆で十字にクロスが書けることにつながるわけです。この頃になると積み木の積み重ね(例えば階段状)の模倣もできるようになります。このような力は小学校へ進学する上で文字を書くとき等の学習に必要な力でもあるのです。
  • もうひとつは、子どもがどこを見ているかということです。例えば幼稚園で消防自動車の絵を描くと、子どもたちひとりひとり絵が違いますね。タイヤ・ホース・車体・水、どこに強く印象を持ったかによって作品は違ってきます。子どもたちがどのように外界とかかわりをもっているかなのです。大人の目大人の見方はまとまりとして見ていますが、子どもはひとりひとり自分との関係で見る、言い換えれば、ひとりひとり意味のある見方なのです。

■新K式発達検査から発達の節目をみる

Kというのは京都という意味で、京都の児童院の島津峯真先生らが考案された検査です。

50%の子どもが通過という目安で検査を見てください。

  • 運動発達の方向性より

     「三歳から三歳六ヶ月位の年齢ではケンケンができるということ。」・・・
    片足で前に進めるという事は、足を変えて前へ進める、すなわち霊長類の長である人間が前進できる行動を獲得したことを意味しているのです。

  • 手指の動きの発達をみると

     円の模写では、出発点と終わりの線がクロスせずにぴったりと合う状態の円を描けるようになる目安は、二歳六ヶ月からです。目と手の協応が必要になります。
     二歳~三歳の100人中50人程度は次のことができます。折り紙・積み木の模倣・長短の比較・絵の名称・色の名前・自分の名前・自分の年齢等を言うことができます。ちょうどこの年齢は幼稚園の年少児たちですね。

  • 物のつかみ方の視点から見ると

     一歳までには親指と人差し指で物をつまんだ時に他の指が広がらなくなります。つまむということを獲得したのです。ハイハイできる子どもはつまめることを獲得しているから床に落ちている物をつまんでそれを口に入れてしまうのです。
     この事からいえることは、発達に見合った家庭内での注意という別の項目が新たに生じてくるということなのです。
    表に提示しておきましたが、発達の順序性においては節目節目があります。課題を持って発達していきます。小学校進学時、小学校のスタートがゼロスタートとならないよう、ひとりひとりを育んでいくことが大切です。

まとめ

 観察の[観]の語源は心の目でみるという意味です。子どもを言葉の発達・数の発達・社会性の発達等の部分部分でみるのではなく、どこが弱いのかどこが強いのか、どういう手立てをとるとどんなことが出来るか、つまり子どもをトータルにみることが大切です。発達は必ずしも一方向ではありません。前進する一本道が正しい発達とは限らないのです。途中でぶれることもあります。後戻りすることもあります。その都度その都度確認し、子どもに接していくことが何より大切です。

コミニケーション力について

支援学校の先輩保護者の方々とお話している中で「なぜ、最近トラブルを起こす子どもがふえたのでしょう?」という話題になったことがあります。原因の一つに親子のコミニケーションが不足していることもあるのではないかと。昔は家庭では子どもとの会話がもっと多かったのではないでしょうか。子どもとの触れ合いはもっと密着度が高かったのではないでしょうか。社会が変わる中、家族関係も変化をしてきました。例えば、女性が社会に出て家庭の中は分業体制になってきています。しかし、子育てに関していえば、母性・父性という違いがあるのです。女性は子どもを産みますし、おっぱいもでます。負担は確かに多いかもしれません。が、母性の力は強いのです。

 現代では家事をする時赤ちゃんをベッドにおくことが多いでしょう。でも、一昔前までは赤ちゃんをおんぶしてお母さんが家事をする姿がよく見うけられました。おんぶされている背中の赤ちゃんにはお母さんの息づかい、お母さんの体温の温かみが肌を通じて伝わります。おんぶされている赤ちゃんはお母さんの背中からお母さんと一緒の目線で外の世界を見ています。これこそコミニケーションの第一歩なのです。とても大切なことではないでしょうか。

 親子のコミニケーションが不足していることも、友達とのコミニケーションが不得手な子どもが増えている一つの原因かもしれませんね。

【デモまとめ】

日時: 平成24年6月27日(水)午後2時30分開会
場所: からすま京都ホテル
記録・報告: 光華幼稚園 松野 千早

●デモグループによるグループ討議

<事例1> 前回の続き

担任の先生より

Y君の手洗い、うがいの実践について

  • 「手洗い
  • →「うがい
  • →「手を拭く
  • という手順を絵で示し、全部出来たらシールを貼る

という工程表を作り、試してみたところ、Y君が抵抗なく手洗いうがいをするようになった。

  • 手洗い、うがいの手順が明確になり、見通しが持てるようになったので良かった。
  • ただし、今はアイスクリームのシールが目新しいためにクリア出来ているのではないか。
  • 今後は、シールを貼ることに飽きた場合、変化をつけて援助していく必要がある。

♢朝野先生より

  • 人の情報は80%は視覚から得ているため、行動の順番を写真や文字で提示するのは良い方法
  • 今回は、写真と文字両方を提示していたが、今後は文字に移行してはどうか
  • また、「うがい」「手洗い」「手を拭く」「シールをはる
  • という4段階の行動を同時に提示する方法を実践していたが、ひとつの動作が済んだらカードを外す、または増やすといった方法もある
  • 今後は、自分の要求行動として、本人が「次はうがいをします」と言葉に出してカードを提示するやり方も有効
  • 子どもの様子に合わせて発展性のある教材を取り入れても良い

<事例3>

3歳児 男の子 K君

K君は、登園し、身支度をする途中レールセットを見つけると遊び始めてしまう。
水筒を所定の場所にかけると、鞄をさげたまま遊び始めるため、担任が「K君、鞄ないない」と
声をかけると、反り返って激しく泣く。身支度がスムーズに行えるには、どうすれば良いか。

■保育室にはいつもレールセットが置いてあるのですか?

保育室にあることもあれば、他の場所にあることもあります

■K君が身支度をしている時点で、他の子はどのくらい登園していますか?

全園児のうち、50人程です

■K君は、どの程度言葉が出ていますか?

「ないない」「こうこう」「どうぞ」「ありがとう」など単語が中心です

■もしも、レールセットがない場合はどんな様子ですか?

走っている子を見つけて一緒に走るなどの行動をします

■今まで、どんな取り組みをされましたか?

水筒の写真を見せて、言葉がけをする取り組みを始めたところです。

■水筒をかける場所と、鞄をかける場所は離れていますか?

少し離れていると思います

■一つのかごの中に、持ち物を一旦全部入れて、そこから一つずつ所定の場所に持っていくという方法で取り組まれてはどうですか?

一度試してみます

♢朝野先生より

  • 写真を見せるという方法が使えるのではないか?
  • レールセットの場所が日によって違うことに、本人が対応できていないのではないか?
  • 単語文が出ているので、ことばとカードのマッチングを取り入れていくと良い
  • 水筒、鞄などの片づけが出来た後、シールではなく、レールセットで遊べるという方法が良い
  • カードの提示の仕方も、手順を1列に提示する方法や1枚ずつ提示する方法など、その子に合ったやり方を見つけていくことが大切

【資料】発達段階表

資料発達段階表 資料発達段階表


【資料データのダウンロード】
資料発達段階表…….[PDF ファイル 115KB(2012_02.pdf)]