巻頭言

幼保一体化について

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤 本 明 弘

 11月15日(火)に全日私幼連の近畿地区役員会が奈良県で開催され、文科省の蛯名喜之幼児教育課長が幼保一体化について講演されました。その内容は7月29日に出された「子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめ」の解説が中心で、特に新しい情報はありませんでしたが、改めて以下のようなさまざまな課題や問題点を感じざるを得ませんでした。

■給付システムの一体化について

 給付の一体化及び強化を図り、幼稚園、保育所に違うお金が拠出されている現状を改め、できるだけ1本化をしていく。指定施設に給付されるシステム(お金の流れるしくみ)をこども園給付と呼んでいる。
 そのために市町村がどれくらいの学校教育・保育のニーズがあるか把握→そのための必要な施設(基盤)の算出→運営のための経費を算出し、指定施設に給付するという流れが必要となってくる。つまり市町村の役割が非常に大きくなってくるが、私立幼稚園は特に区域を越えた入園も多く、都道府県でないと果たせない枠割もある。そのため市町村に縛られず、市町村との関係を調整する権限が必要である。また実際の学校教育・保育のニーズを何をもって測るのかも現実問題難しい問題であり、給付の一体化はまだ理解できても、何をもって強化を意味するのかも全く見えてこない。

■新たな制度における契約方式について

 こども園給付は保護者(利用者)に対する個人給付を基礎とし、確実に学校教育・保育に要する費用に充てるため、「法定代理受領」の仕組となっている。つまり市町村が利用者の保育の必要性を認定し、それに基づく個人給付を「こども園給付」として「こども園」(仮称)に給付する流れとなる。そして全ての保護者が自ら施設を選択し、保護者が施設と契約する公的契約とし、正当な理由がある場合を除き、施設に応諾義務が課される。ここで言う正当な理由とは、入園希望者が定員を上回る場合が該当するとされている。
 現状の契約はあくまでも保護者の「直接契約」であると同時に「私的契約」であるが、新たな制度では「公的契約」となり、保護者が希望すれば施設側には入園を拒むことはできない、「応諾義務」が課せられる。このような契約方式は明らかに私学の独自性を相容れないものであり、十分な議論を経ないまま実施されると現場には大きな混乱が生じることは明白である。また、新たな制度における価格(保育料)設定には公定価格の考え方の導入が検討されている。上乗せ徴収は可能とするものの、基本的には公定価格の導入である。

■社会保障・税の一体改革の具体策について

 消費税増税分の確保が大前提であるが、全く見通しが立たないばかりか、増税の旗振りとして利用だけされて、取り残されることさえ憂慮される現状である。
※基本制度ワーキングチームが次回11月24日(木)に開催されますが、ここでの議論の内容が非常に注目されます。