巻頭言

『いのちを大切にする日』

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本 明弘

 東日本大震災発生以来、一年が経とうとしています。この時間が果たして早かったのか、遅かったのかそれは一人ひとりの立場や受け取り方で大きく変わってくることでしょう。しかし、とにもかくにも一年間という時間が経過しようとしていることだけは厳然たる事実です。
そのような時間の経過とともに、被災された方々や被災地への私たちの思いは少しずつ風化してきて、他人事になってきていることは残念ながら否定できません。人間は時間の経過の中で、感情を忘れ去ることで、自分のバランスを保っている生き物である以上、とても悲しいことではありますが、こればかりは仕方のないことでもあります。
しかしだからと言って、自然の成り行きに任せっきりでいいはずがありません。京私幼連盟としてはこのような時こそ、組織としての結束力を活用することが重要であると考え、単独の幼稚園では難しい継続的な一斉義援金活動を実施してまいりました。その結果、これまでの計三度に及ぶ一斉の呼びかけに対して、大変多くの皆様方に多額の義援金をお寄せいただきました。改めて京私幼連盟の設置者・園長先生、教職員の皆様、そして保護者の皆さまの大変温かいお心に心より御礼申し上げますと共に、今年度最後の一斉義援金活動へのご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。
さてこの度、全日本私立幼稚園連合会では、来る「3月11日」を「いのちを大切にする日」と定めました。これは全国の幼稚園そして家庭で「いのち」についてしっかり考える時間をもってもらい、震災で犠牲になられた皆さんのことを今一度悼み、そして被災された方を応援し、被災地の復興を祈願するという心の灯をみんなでつながって作っていこうというものです。
3月11日の当日は日曜日のため保育はありませんが、是非ともその前後に幼稚園で何らかのお取り組みをしていただきますと共に、保護者の皆様にもお伝えしていただきますように何卒お願い申し上げます。
親子関係所の機関紙「ぬくもり」の取材のために先日、福島市を再訪し保護者の方からお話を伺いました。最も印象的だったのは「普通の生活、当たり前のことができることがどんなことよりもすごいことで、一番幸せなことです。」という言葉でした。あの日以来福島県では当たり前のことが日常から消えてなくなってしまったそうです。それは一体いつになったら取り戻せるのでしょうか。そのような中にあっても、お母さんたちは今まで以上に家族で過ごす時間が増え、絆が深まったと笑顔で語ってくださいました。
「いのちを大切にする日」の一つ一つの取り組みの灯はどんなに小さくても、その灯がつながり、集まればそれは無尽の明るさとなることを信じて、みなさまのご理解・ご協力を重ねてお願い申し上げます。