巻頭言

保育の質の保障のために~大きな意味を持つ一年間~

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本明弘

 新しい歳が明けて早くもひと月が過ぎました。年末の政権交代を機に日本経済は、にわかに円安に歯止めがかかり、株式市場も活気づいています。マーケットというものがこれほどまでに敏感に反応することに改めて驚きを隠せないと同時に、久しぶりの明るい話題に期待を持つ一方で、世界のマーケットが結果ではなく、雰囲気にこれほどまでに流される不安定さを感じる方も多いのではないでしょうか。

 そのような不安定な社会情勢の中ではありますが、私立幼稚園にとってこの平成25年は非常に大きな意味を持つ一年となることは間違いありません。それは言うまでもなく前政権時代に三党合意で可決した「子ども・子育て関連三法」と、政権与党に返り咲いた自民党が掲げる「幼児教育の無償化」が、いよいよ具体的にどのような内容で進められるかが決められるからに他なりません。

本来ならばどのような方向になるのかを、現場の私たちもきちんと整理をしながら、理解を得られるように時間をかけて丁寧に社会に発信していくことが大切であることは疑う余地がありません。しかしながらこれほど重要かつスケールの大きな問題であるにもかかわらず、時間は非常に限られており、具体的にはこの平成25年度が極めて大きな意味を持つことになります。その理由は言うまでもなく、消費税の増税のスケジュールと連動せざるを得ないからです。

 既にご案内の通り、実現に向けてレールに乗っている、税と社会保障の一体改革により、消費税が来年4月に8%に、平成27年10月に10%に、それぞれ引き上げられることが決定済です。そのタイムスケジュールが決まっている以上、私立幼稚園だけで議論することは残念ながら出来ません。

 しかしながら、幸か不幸か全国の中で京都府には認定こども園がひとつも存在しません。これは言いかえれば京都の幼稚園と保育所はそれぞれが、社会や家庭のニーズをきちんと役割分担をしながらしっかりと責任をもって受け止めてきた証でもあります。言い換えれば、トップダウンで安易な方向に流されるのではなく、それぞれの役割の中で、現実のニーズを大切にしながら、地域や家庭と向き合ってきた結果であり、それはとりも直さずまさしく「こどもがまんなか」の思いでいればこその結果なのです。

 難しくて、大きな、大きな課題ではありますが、改めてこのような局面こそ、目先の利益に流されることなく、あくまでも子ども達の為に、将来の日本の為に、京私幼連盟の皆さまが更に一枚岩となり「保育の質」を大切にしながら共に立ち向かってまいりたいと存じますので、より一層のご理解・ご協力の程何卒よろしくお願い申し上げます。