巻頭言

今こそ叡智と繋がりを

公益社団法人 京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本明弘

 いよいよ新年度がスタートしました。加盟園の皆さまには、昨年度も京私幼連盟の諸事業に格段のご理解・ご協力を賜り、心より御礼申し上げます。また言うまでもなく特に昨年度は、京私幼連盟の創立70周年と同時に公益社団法人としての記念すべき年であっただけに、加盟園の皆さまには例年以上のお力添えを頂きながら、お陰様で新たな第一歩を歩み始めることが出来ました。誠に有難うございました。

 そして「子ども・子育て支援新制度」に関する国や都道府県や市町村単位での議論も開始され、京都府内においても「子ども・子育て会議」が設置されてニーズ調査が行われ、現在多くの市町村で集計の結果が既にまとめられています。今後はその結果に基づいて市町村ごとの5年間の量の見込みを予測した基本計画を策定し、例えば京都市では5月の京都市議会に基準条例案を提出するスケジュールです。

 念のために、5月というのは来年ではなく今年の5月です。つまりこれからひと月余りの時間の中で条例案の検討がなされようとしています。しかしながら、恐らく京都市だけではなく、京都府内の全ての市町村においても、新制度の方向性すら具体的な検討はまさにこれからであり、現時点ではニーズ調査で明らかになった量の見込みを整理しているに過ぎない段階です。そしてこれは決して京都府だけではなく、全国の都道府県・市町村も共通した状況であると思われます。

 そして国からは同じ位のスケジュールで公定価格の骨格が示される予定になっています。公定価格は言うまでもなく今後の新制度のみならず、私立幼稚園の方向性を示すもっとも重要なファクターの一つですが、決定的に財源が不足していることは既に報道の通りです。従って現時点では基礎的な公定価格は大方の予想を下回る可能性が強く、現状並みの運営をするためには、追加的な事業に積極的に手を挙げて給付の上乗せを受けなければ安定した運営は難しい状況です。

 しかし、これらの追加事業は誰の為に実施されるのか、果たして「子どもの最善の利益」と言えるかどうかは非常に疑問です。幼稚園が安定した運営をするためには、子どもの立場ではなく、大人の都合を優先する必要がある新制度の姿がいよいよ見え始めてきました。

 今後ますます重要かつ難しい局面を迎えようとしていますが、全国に冠たる「京都ならではの子育て制度」の確立のためにも、先達の先生方が70年の歴史の中で築いてきて下さった我々の宝物である、京私幼の叡智と繋がりを今こそ発揮する時であると確信しています。

 皆様方のなお一層のご理解・ご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。