巻頭言

幼稚園からの学びを繋ぐ

公益社団法人 京都府私立幼稚園連盟
理事長 田中雅道

 平成30年度に向けて幼稚園教育要領改訂の作業が始まっています。現在ある職業の中で20年後も続いている職業は50%であるという命題を前提として、“新しい世界の中でも輝き続ける日本であるためにはどのような教育が必要か”が真剣に議論されています。

 従来、日本の教育は、“学校で先生が教えた内容をどれだけ正確に理解しているか”を学力の基準として学校教育を組み立ててきました。新しいアイデアを持った子どもよりも、教えられた知識を多く持った子どもを“良”としてきたのです。ところが、従来の知識を使って問題を解くというレベルは、コンピューターの進歩によって人間の仕事ではなくなりつつあるのです。従来の学力だけではロボットやコンピューターに職を奪われてしまうという現実を真摯に受け止めなくてはならない時代なのです。OECDが提案する問題解決型学力は、このような先進国の課題を克服するために新しく考え出された学力観です。

従来の学力から脱皮するにはどのような教育が必要かという問いを、先進各国はもう20年以上にわたって事例を集めて研究してきました。そのデータはどれもが“幼児教育の充実”が一番有効であり、すべての国民が良質な幼児教育を受けることが最も重要な教育的課題であるという認識が広がってきています。

IEA(国際教育到達度評価学会)では世界10ヶ国で4歳児の幼児教育環境を分析し、調査対象の子どもたちを20年間追跡しました。その結果、良質な幼児教育を受けた群は15歳での学力が高く、良質な幼児教育を受けていない群は、23歳時点での犯罪率が高く、他者からの信頼を得られていない状況が報告されています。良い幼稚園で幼児期を過ごすことは、その子の人生を大きく左右することが分かってきたのです。園庭など多彩な環境で主体的な遊びが展開できること、良い先生に出会うことが重要です。学力のみならず社会安定の為、幼稚園教育に重点的に資源配分する国が増えているのです。幼稚園教育の質を上げることは、これからの京都(日本)を支えていく上で最も重要な課題となっているのです。

 縁あって、20年ぶりに伝統ある京都府私立幼稚園連盟理事長を再度拝命しました。京都の子どもたちが、幸せな人生を歩めるよう皆様方と一緒に頑張っていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。