巻頭言

幼児教育の質の向上とキャリアアップに向けて

公益社団法人 京都府私立幼稚園連盟 副理事長 熊谷 知子

 私立幼稚園では長年教職員が学び続け研鑽することの営みが「幼児教育の質」につながっていくよう、各種団体または各園がさまざまな研修を企画開催してきました。その中で平成20年に研修ハンドブックが発行され、教諭が自分の研修履歴を蓄積し、必要にして十分な研修を計画的に受講することで資質向上を図ることができるようになりました。
 その後、子ども・子育て支援新制度の施行や幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改訂など、園を取り巻く環境も大きく変化して、近年の情勢をふまえながら、キャリアパス等にも対応できるように新しい研修ハンドブックに改訂されました。
 また、さらに今年度より研修俯瞰図に基づいた研修を実施するときに研修スタンプシールを作成し、それを添付することで公的に認められた研修として確実に履歴を残していくことになりました。後日参加者名簿を作成し全日本私立幼稚園幼児教育研究機構に報告するという手順が踏まれます。
 研修実績をデータ化し見える化することで行政や都道府県や市区町村へ実績を示しやすく、幼稚園教諭のキャリアアップ・処遇改善に向けて制度設計していただけるように活用してくださるということです。さて、このように改訂されたということは、園独自の園内研修だけでは不十分なこともあるのではと考えられます。
 私幼団体が開催される研修はもちろんのこと公的組織が開催する研修にも参加し専門性を向上させていく努力を重ねていくことが必要とされています。私立幼稚園では教諭が平均で30歳までに7割が離職してしまうというデータがあります。
 一人ひとりの教諭が誇りをもって長く幼児教育の実践ができるように必要な研修を構築して、専門性を向上できる環境を用意しなければなりません。それに加え働きやすい職場環境、キャリアアップのしくみ等をそれぞれの園が考えていく必要があります。
 私たち各園はこれからの人材不足・人材確保、施策による制度、そして保育の質、私立幼稚園に求められることに対して常に向き合っていかなくてはなりません。考えるほど困難さを感じますが、今までも大変な時代を乗り超えられてきた先達が踏ん張ってこられたように、私たちの踏ん張りを試されているようにも思います。
 人としての成長の中でいちばん重要な時期に幼児教育を通じて子ども達の幸せを願うことが私たちの使命であります。各園それぞれが何ができるかを明確にし、一つひとつ課題を解決していきたいと考えています。