巻頭言

年 頭 所 感

公益社団法人 京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本明弘

 早いもので新年が明けてひと月余りが経過しました。ご挨拶が遅くなり大変失礼いたしましたが、本年も何卒よろしくお願いいたします。とりわけ今年は夏頃までに、子ども・子育て新制度に関する具体的な方向性が示されることになっているだけに、全ての加盟園の皆さまにとって、大変重要な局面であることは間違いありません。

 このような中で、国の子ども・子育て会議では改正認定こども園の基準に関する、保育の必要量などの具体的な議論も始まっていますが、相変わらず子どもがどのような環境で育つべきかという視点からの基準は全くみられません。例えば、親の就労時間が毎日 2 ~ 3 時間程度であっても、8 時間まで子どもを施設に預けられる案が提案されています。
また、週 30 時間程度の就労であっても、毎日 11 時間まで施設が利用可能となる案も議論されています。いずれも子どもの育ちは二の次で、あくまでも親の都合が最優先されているとしか言いようのない、子育ての肩代わり支援に他なりません。

 たとえ施設の開所時間が 11 時間であっても、保育時間はあくまでも 8 時間を上限とするのが当たり前で、これ以上の長時間保育を国が認めることは、世界の潮流と真逆の方向です。OECD 先進諸国の乳幼児期の教育・保育制度や少子化対策は、長時間保育ではなく、なるべく家庭で親が子どもと長い時間を過ごすことこそ、国家として重要と考えています。そしてそれを可能とするために社会全体で働き方を見直す方向にシフトチェンジしているのです。これが世界のスタンダードなのですから、仮に 11 時間保育が日本の標準と言うことになれば、日本は超長時間保育の国と言わざるを得ません。

 しかし、1 日 24 時間の 11 時間を施設で過ごす子どもたちは、睡眠時間を除いて一体何時間を親と一緒にいることができるのでしょうか。寝ぼけ眼の朝の 1 時間程度と、夕食をはさんだ数時間だけが家族の時間です。もちろん長時間の保育が必要な家庭があることは事実ですし、丁寧に対応することは否定されることではありません。しかしだからと言って、一日のほんの数時間しか親子で過ごせない制度を国が標準として認めて良いのでしょうか。教育基本法で規定された子育ての第一義的な責任は家庭ですが、このままでは新制度は法律に違反していると言われても仕方がないのではないでしょうか。

 このような親と子どもを引き離す施策を食い止めるためにも、私たち京都府私立幼稚園連盟は、質の高い「子育ての支援」を早急に更に充実させる必要があります。具体的には預かり保育の拡充であり、未就園の親子がつながり合える場などの提供です。そしてこのような「こどもがまんなか」の機能を積極的に社会発信することが求められる年になることは間違いありません。加盟園の皆さまの更なるご支援・ご協力を何卒よろしく願い申し上げます。