新連載

3 回シリーズ(1)

障害のある子どもさんを持つ保護者さんへの対応・支援を考える

大谷大学 文学部 教育・心理学科 安田誠人

 私は知的障害や自閉症スペクトラムに関する障害児臨床を主な専門領域としております。今回担当させていただく連載ではこうしたテーマを中心にしたいと思います。今回は障害のある子どもさんを持つ保護者への対応・支援方法について考えていきたいと思います。
最近は幼稚園にも知的障害や自閉症スペクトラムなどが疑われる子どもさんが入園することが一般的になってきました。障害がある子どもさんや保護者の方からすれば、大変有意義なことと思います。また健常児にとってもいくつかの課題はあるものの、心身の成長に効果があることも認められています。

 しかしその一方で幼稚園教諭や幼稚園の負担が増したことも事実だと思います。京都市では障害児に対する加配制度は充実しているのは確かですが、それだけで十分な教員配置が可能とは思えません。また「障害」と一言に言っても知的障害、自閉症スペクトラムなどの知的障害、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由などの身体障害、病虚弱など多種多様の障害があります。そして一人ひとりに応じた保育が必要であり、すべての子どものニーズに応じた適切な保育を行うことは本当に大変なことです。この点に関しては幼稚園教諭や幼稚園の努力だけでは対応に限界があり、保育の質を維持、向上するためには保育集団に応じた教員の配置が絶対に必要です。その前提の下で、障害児に対するよりよい保育の検討が必要となります。

 さらには保護者対応・支援の難しさも指摘されています。障害のある子どもさんを持つ保護者さんの場合には、障害の種類や程度、障害の受容や家族状況によるニーズや悩みの違いなどがあるため、健常児の保護者さん以上に保護者対応・支援が大変です。私の教え子もそうした保護者対応・支援に悩んで、よく私のところに相談に来てくれます。

 そこでまず提案するのは「保護者さんの話を否定しないで聴く」ということです。どんな無茶な話であっても、保護者さんの話を途中で遮ったり、否定することなく、話をしやすいように促しながら聴くことです。幼稚園教諭のカリキュラムにこうした内容は入っており、すでに学習していることです。実践するのは意外と難しいことですが、やってみる価値はあると思います。特に保護者との信頼関係を結ぶことに役立ち、今後の保護者さんとの話し合いを円滑にする効果も期待できます。

 次に最近よく提案するのは、「例外探し」ということです。言い換えると成功例、いい結果探しです。
「そんなことはないです。」という保護者さんに対しては、いつもより少しでもましな状態、いつもと違うこと探しです。いつもなら、「水」などに夢中になって私たちの話が全く入らない子どもさんが、一瞬私たちの顔を覗き込んだとか、大声で反応したなどです。

 「例外」は、ほとんどの保護者さんが一度は経験したことがあるので、幼稚園教諭も保護者さんと子どものことで相談を受けた時に話題にしやすく、何らかの話が保護者さんから語られた瞬間に、「それは良かったじゃないですか」「うまくいったこともあるじゃないですか」「ちょっとびっくりしましたね」などとプラスの方向に会話を持っていきやすいです。

 今回は保護者さんとの会話の中で比較的に行いやすい対応方法を挙げてみました。これらは「センス」でなく「技法」ですので、意識すればある程度は誰でも実践できるのが利点です。一度面談、相談場面などで試してもらえればと思います。