新連載

3 回シリーズ(2)

保護者の障害の受容において幼稚園教諭ができることについて考える

大谷大学 文学部 教育・心理学科 安田誠人

 今回は障害のある子どもさんを持つ保護者の障害の受容について考えていきたいと思います。
保護者が子どもの障害を理解していない、受容していない保護者に対してどう保護者に子どもの障害を理解、受容してもらえばいいのかという相談を私も良く受けます。幼稚園教諭としては何とか自分の子どもの障害のことを保護者の方に分かって欲しいのに、分かってもらえないという悩みです。子どもの障害のことを分かってもらえると、確かによりよい保育が期待できるという利点があると思います。

しかし幼稚園教諭は保護者による自分の子どもの障害の理解、受容は簡単ではないということをまず知っておく必要があります。また保護者が自分の子どもの障害について何となく気付いていても、障害を認めたくないという気持ちが勝っていることもあります。

現在では検診制度が充実したこともあり、比較的早期に障害に気付くことが増えています。特にダウン症など身体的特徴のある障害、中重度の知的障害に関しては、診断が一般的に可能となる3 歳頃までに障害の告知をされることが多くなっています。

しかしながら自閉症スペクトラムや発達障害などの場合には障害の原因が特定できないことも影響して、確定診断や障害の告知が遅くなってしまうこともあります。また障害の告知がなされていても、曖昧な告知が行われることもしばしばあります。曖昧な告知は保護者の障害の理解、受容を遅らせている一因になりやすいです。

では幼稚園教諭としてはどう対応すればいいのでしょうか。障害の受容に関しては、はっきりとこうすればいいという答えはありませんが、まず障害があるかも知れないということを幼稚園教諭から切り出すことは避けるべきと思います。むしろ保護者が自分で何となく気づき、相談をしてくるか、専門機関で告知を受けた後のフォローをどうするかを考えた方がいいかと私は考えています。

障害の告知を受けた保護者の心理的負ダメージは大変大きい上に、残念ながらその後の専門機関での指導や助言に関して、「役に立たなかった」、「む
しろ精神的ストレス」が過半数を超えているとの報告も多くあります。

そこで幼稚園教諭の出番です。保護者にとって伝えて欲しいことは、具体的な育児や関わり方や、周囲の人(特に母親一人が告知を受けた場合の父親)へ説明、さらには自分の不安な気持ちや揺れる気持ちを聴いて欲しいことなどです。具体的には、自分の子育てに原因があるのではないかとの不安に対する安心できる説明などです。おそらく専門機関でも正しい内容を伝えていると思いますが、より身近な存在である幼稚園教諭が落ち着いた環境で伝えられることは幼稚園教諭ならではのメリットです。伝えるというよりはむしろ支えるという姿勢がさらに効果的です。

ただ障害の受容の問題は幼稚園に在園している年齢の頃が、保護者にとって実は一番厳しい時期と言われています。障害に対する「否認と焦り」という感情がピークになり、何とか障害が軽減しないかという期待を保護者が強く継続的に持っている時期でもあります。

だからこそそうした保護者の複雑で辛い思いを幼稚園教諭は焦らずに受け止め、必要な正しい知識や具体的な子育て方法を寄り添いながら、一緒に考えていく姿勢が求められると思います。