新連載

3回シリーズ(2)

粘土であそぼう!~粘土エクササイズのすすめ~

京都女子大学  矢野  真

 粘土を使った造形活動は、どこの幼稚園でも行われる活動です。この粘土を使った活動には発達による段
階があります。3歳児の粘土あそびでは、最初は不定形の塊が多く、つつく・突っ込む・ちぎるなどの運動的操作が多くみられ、次第にお団子やひもなどに加工されます。4・5歳児になると凹凸とともに多くの量が使われ、複雑化し、造形意図がはっきりと表れます。

 3歳児の粘土活動は、具体的なかたちにまで到達することが難しいかもしれませんが、とても重要です。この時期は、基礎的な運動能力が育つとともに、様々な遊具を手にすることにより遊びのイメージが大きく広がります。生活に身近な様々なかたちを目で見て、手で触れ、感じたり気付いたりすることができる環境づくりが大切なため、粘土あそびを通じて、身体を使って自由につくることができるかたちの面白さを学んでいきます。

 もし、幼稚園に大量の土粘土があれば、全身で泥まみれになって遊ぶことができますが、日常使っている油粘土で様々な動作(握る・ひねる・つまむ他)を十分に経験することにより、自分の手の動きをコントロールし、自らの身体感覚を高めていきましょう。

 こうした経験を助長する方法として、粘土エクササイズを提案します。粘土エクササイズとは、具体的な作品づくりに入る前に行う活動で、にぎり出す、ひねり出す、つまみ出す、丸める、ちぎる、積むなどの動作を全員で一斉に行い、手の巧緻性を高める活動です。

 一例として、次の粘土エクササイズを紹介します。まず、油粘土をひとかたまり持ってギュッとにぎる(特に使い始めは油粘土が硬いため、活動前に柔らかくする効果もあります)→ 粘土板において高く手で握り出しながら高く伸ばす(このときみんなで高さを競争してもいいでしょう)→ 上から渦巻き状にクルクル丸める→ 一つのかたまりにする→ 粘土板でコロコロ転がしてひも状(ヘビのかたち)にする→ ひも状の粘土を二つに切り、交差するように2 本をねじって編む→ 一つのかたまりにする→ 小さくつまんでトゲトゲをたくさんつくる→ 大きくつまんでちぎり、お団子をたくさんつくる→ お団子を積む(縦に積む・ピラミッド型に積むなど子どもたちの工夫を促します)といった具合です。

 子どもたちの状況に応じて、順番やエクササイズの内容を変えてみてください。また、粘土エクササイズを通じて子どもたちのイメージが広がるような導入を心がけましょう。この粘土エクササイズを行った後の粘土あそびで子どもたちがつくり出すものは、様々な動作を組み合わせて工夫していることが期待できます。

 このように、粘土あそびは手や指を巧みに使うことにより、子どもたちの創造力を高める効果があること、そして子ども同士のコミュニケーション・ツールとしても有効なため、日々の保育において積極的に取り入れてもらえることを期待しています。