新連載

【新連載】3回シリーズ(3)

言葉と言葉のあいだには…③

平安女学院大学短期大学部保育科 金子 眞理

 実習指導をしていく中で、「声を掛ける」「声掛けする」「声をかける」「声かけする」「言葉を掛ける」「言葉掛けをする」「言葉をかける」「言
葉かけをする」など、学生のノートを見るとこれだけの言葉の使い方に出会う。

 私は「言葉をかける」を使ってほしいと願う。それは上沢謙二編著「幼児に聞かせるお話集」実用家庭百科 講談社 昭和28 年発行の中に「言葉は記憶されないが保存される」という項目に繋がっていると考えるからである。どんな言葉を子どもにかけるのだろうかと思いを馳せることができ、考える空間がうまれてくるような気がする。心の中に保存された言葉からうまれてくる心の空間。これが大切だと感じるのである。

 「おほしさまのちいさなおうち」(渡辺鉄太 文、加藤チャコ 絵 瑞雲舎)という絵本がある。田舎の一軒家におかあさんとねこといっしょにすんでいる男の子がいる。いつもつまらないとなげき、猫と遊ぶ毎日…ある日 おかあさんが「たんけんにいってごらん」と提案する。「うちのまえのみちをそのままずっと おかのうえまで いってごらん。よく めをあけ みみをすませたら、きっと とびらも まどもない、なかにおほしさまのすんでいる ちいさな あかいおうちは みつかるよ」男の子は猫と一緒におほしさまのおうちを探しにでかけていきました。最初に、女の子に出会い、女の子のお父
さんに出会い、つぎに、おばあさんに出会うのです。「とびらも まどもない、なかにおほしさまのすんでいる ちいさな あかいおうちが どこにあるか しってる?」すると おばあさんは「かぜに きいてごらん かぜは あちこち たびをしてまわっているから」と…。かぜに聞いた男の子はかぜに吹かれてりんご畑についた。かぜは男の子のそばにりんごをころがした。男の子はりんごを大切に手の中にいれ、これがお母さんのいっていた「とびらもない、まどもない、なかにおほしさまのすんでいる ちいさな あかいおうち」だと気づき、来た道をいそいでもどった。「これが とびらもない、
まどもない、なかにおほしさまのすんでいる ちいさな あかいおうちかな?」とおかあさんに手渡すと、さっそくおかあさんは輪切りにする。「おほしさまがいた!」

「ろうそくよりも もっとあかるくひかる おほしさまがすんでいる」と男の子が驚いたように、子どもの心の世界もこの絵本と同じだと感
じた。

 おかあさんから素敵な言葉をかけてもらった男の子のように、大好きな先生に言葉をかけてもらった子どもは、その言葉が保存され、安心し、広い世界を探検し、そして人や物や時間や空間と出会う。さらに「語彙が拡大」していくことで新たな探検が始まっていく。

 子どもに素敵な言葉をかけること…わくわくしますね。