新連載

【新連載】4 回シリーズ(2)

「少子化克服への視点」

レジリエント・シティー京都市統括監 元京都市副市長  藤田 裕之 

 子どもは社会の宝。ところが、我が国で、既に数十年にわたり、子どもの数が減少し続けていることは皆さんご承知のとおりです。

 いわゆる合計特殊出生率が最も高かったのは戦後直後で、4.3 もありましたが、以降、低下し続け、人口を維持する上で必要な2.0 を、ちょうど1964年の東京オリンピックの後に下回ってからは、1.2から1.4 程度の数値で推移しています。特に都市部で低くなっており、都道府県で最も低いのは東京都です。残念ながら京都も全国でワースト3から脱することなく低迷しています。

 出生率が下がっている要因は様々考えられますが、ひとことで言えば、女性の進学率や就職率が高まると共に、結婚して出産することが「普通」、という価値観が変化し、結婚も出産もその人の自由という具合にライフスタイルが多様化したことでしょう。

 具体的には、女性の未婚率の増加、出産の高齢化に伴い、平均した出生率が低下している訳で、決して、子どもを授かりたいと望んでいる方の比率が大幅に減っている訳ではありません。

 特に、人口動向で忘れてはならないことは、出生「数」が減少の一途を辿っていることです。京都市の数値でも、25 歳から44 歳のいわば出産対象と言える女性の数は、25 年後には今の約60%に減る見込みです。つまり、母数となる女性の人口が大きく減少するため、出生率が同じであれば、出生数は大きく減少してしまうことを意味しているのです。

 せっかく子育て支援を充実しても、肝心の子どもの数が減っていては、真に持続可能な社会は実現しません。少子化対策としっかり結び付けた子育て支援こそ、喫緊の課題なのです。

 とはいえ、少子化の背景には、経済的事情をはじめ、未婚率の増加、子育て世代の就労環境の未改善、核家族化の進行など様々な要因が存在します。そのために様々な調査が行われていますが、個人的には少子化対策の対象を既婚者や子育て中の方に限定するのでなく、将来、家庭を築き、親となっていく世代への支援に繋げることが不可欠であるないように感じます。

 同時に、子育て中の親御さん、特に母親の孤立感、徒労感の克服のため、男性の育児・家事参加を含む男女共同参画、企業文化としてのワークライフ・バランス、地域コミュニティによる子育て支援が一層重要になっています。

 少なくとも、価値観の多様化の中で、平均出生率2という数字を確保するためには、子どもを3人、4人と授かっている家庭が相当増えることが期待されますし、それに見合った施策が展開される必要がある訳です。

 その場合には、育児に従事する年数が当然長くなりますし、経費も嵩んできます。その意味では、子育て支援策においても、安心して3人目、4人目を授かれる条件を社会全体で作っていくことが大切になってくるのではないでしょうか。