新連載

【新連載】4 回シリーズ(4)

 

「子も親も育つ家庭、地域、幼稚園」~合言葉はレジリエンス~

レジリエント・シティー京都市統括監 元京都市副市長  藤田 裕之 

 京都私立幼稚園協会から寄稿をご依頼いただき、今回を含めて4回、寄稿させていただきましたが、子どもさんの育ちに頑張っておられる親御さん、そしてしっかり寄り添っておられる各幼稚園の先生方に少しでもエールを送ることができれば嬉しい限りです。

 そこで、連載を締めくくるに当たって、皆さんに「レジリエンス」という言葉をご紹介したいと思います。

 レジリエンス(Resilience)なんて「聞いたことないな⁉」と思われた方もあるかも知れませんが、災害への対応、集団や社会の在り方、さらには子どもの育みにおいても、近年、特に注目されている言葉です。一昨年、宇宙飛行士の野口聡一さんが、乗船するロケットに「レジリエンス号」と名付けられたことが話題になりましたし、国際パラリン委員会も標語としてこの言葉を取り入れています。

 「レジリエンス」とは、直訳すると「強靭さ」つまり「しなやかな強さ」とか回復力、復元力などと訳される場合がありますが、ポキッと折れない打たれ強さ、あるいは仮に折れてしまっても立ち直れる力と言った意味も持っています。

 同時に、単に元通りに戻るだけでなく、前以上に、あるいは前とは違った形で回復・復興するというニュアンスも含まれています。

 私たちの経験でも、色んな壁にぶち当たって打ちひしがれても、何とか課題を乗り越えた時には、前よりも成長した自分を意識することができることがありませんか?ひと皮むけた!という言い方をする時もありますし、振り返ったら良い思い出になっていることもあるでしょう。

 さて、昨今、物は豊かで便利な社会になったのに、そのことが子どもの育つ環境として、必ずしも幸せな状態になっていないことを感じます。困難に直面して乗り越えるという経験は、あまりにも便利過ぎる環境では果たせないのかも知れませんし、子どもたちの育みにおいて周囲の大人が、まさしく子どもたちにとっての環境としてどうあるべきかを考えることが、とても大切になっています。

 少し話が大きくなりますが、そもそも人類は、何十万年も前、森林に住んでいた他の動物から別れて「進化」した訳ですが、単独では弱小な動物が、群れ(集団)を作り、助け合い、支え合って他の動物が支配する社会を生き抜いて来たのでしょう。

 全ての哺乳類の中で、人間ほど、か弱く生まれてくる動物はないと言われています。そして決して多くない数しか出産しないのに、一人一人を大切に育てます。

 その意味では、そうした助け合いや支え合いは、地上に存在する生物の一種にしか過ぎない人類が、厳しい環境の中をその後も生きながらえてきた最大の強みと言うことができそうです。人類が営々と引き継いできた生きる術である助け合い、支え合いの精神を、子どもたちにしっかりと体得させていくことこそ、私たちの重要な使命なのではないでしょうか。