巻頭言

学校評価の実施と実態

(社)京都府私立幼稚園連盟
研究担当副理事長 川 名 マ ミ

 様々な時代の流れの中で、私立幼稚園は建学の精神・自由性を大切にしなければならないという側面と、日本の幼児教育の中心的役割を担っているという公共性との接点を社会から求められています。その流れの一つとして、平成19年6月より、幼稚園における自己評価の実施・公表、評価結果の設置者への報告が義務化、学校関係者評価の実施が努力義務化となりました。
 しかし残念ながら現実には、私立幼稚園の学校評価はあまり進んでいません。文部科学省の調査では平成20年度間の私立幼稚園における自己評価実施率は全体の60.9%にとどまっています。この調査で報告された他校種や公立幼稚園と私立幼稚園の実施率を比較すると、共に私立幼稚園の実績が相当低い実態であることが明らかになりました。
 確かに年々仕事が多岐に渡り増え続け、しかも質の向上も求められる中、時間的なゆとりは決してありません。しかし、この実態は社会的には私立幼稚園の怠慢と認識されても反論できないところです。このままの状況が続けば結果的にさまざまな指導が私立幼稚園に発生する可能性も否定できません。その意味では私たちも今一度、学校評価に対する見識を深め、「義務」に対する意識を高める必要があります。
 しかし、自己評価は実施していないと報告している園長でもよく話を聞いてみると、紙面上に整理されていないだけで実質的には自己評価を行っているということがあるようです。
 例えば、「今年は園庭の同じ場所でけがをする子が多かったので調べてみたら、木の根が地上に張り出していてつまずきやすくなっていた」とか、「子どもたちの遊びが長続きせず発展していかないので、行事を見直して時間をゆっくり使えるよう保育を工夫した」等、環境の見直しや保育の振り返りはどこの園でも必ず行っており、自己評価として意識せずに行っているのです。これらのことが、実は自己評価であることに気づいていない実態がうかがえます。
 要するに、今、各園が実践していることをどのように社会に発信するか、ということ、その過程の中で点検、改善をし、変化、進化さすべきことは園の責任として行っていく、それをどのように紙面化・書式化するかという事です。
 重ねてになりますが、「評価される」と捉えると身構えてしまいますが、自園のボトムアップの機会と捉えれば、主体的に積極的にとりくむべき事柄だという事がおのずと見えてくると思います。受け身の評価から主体的な評価に意識転換していくことが重要です。
 前述の通り、万一、今後も実施が進まない状況が続けば、現在は将来課題として議論されている第三者評価について、今、幼稚園側の考えである「公開保育を第三者評価にしたい」という構想も受け入れられない事になるかもしれない可能性があります。 そのことも踏まえ、今一度、学校評価について主体的な取り組みをしなければならないことを再認識していただき、また、同時に連盟として研修会などを通して各園をサポートできるよう努力していきたいと思っています。

※ 文中一部全日幼児教育研究機構・第三者評価調査報告書より抜粋