巻頭言

明日の日本を担う幼児教育 ~こどもがまんなかの社会の実現を目指して~

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本 明弘

 新年度が始まり早くも一月が経とうとしていますが、今年度は我が国の将来にとって極めて重要なターニングポイントとなるかもしれません。しかもそれが果たして良い方向への第一歩に向かうのか、それとも逆に動くのか。現時点では何とも言えません。

 ご存じの通り、今まさに「総合こども園法案」「子ども・子育て支援法案」などの関連法案が消費増税法案と共に国会において議論されようとしています。しかし「こども」「子ども」というのは名ばかりで、これらの中身には子どものための視点など全く存在しません。そして家庭における子育てをていねいに支援していこうという思いも全くありません。 

 全ての子どもが、子どもとしてふさわしい環境の中で育つ権利を有しているにもかかわらず、それを最も責任をもって保証しなければならない立場であるはずの国家が、大人の都合によりその質を平気で下げようとしている現実を私たちはどうして容認することができるでしょうか。我が子と一生懸命向き合いながら育てるからこそ、親は喜びも悩みも体験しながら、人として成長できるのです。子育てとは子どもだけでなく、そこに関わる大人も人として育つことができる、稀有かつ極めて崇高で意味のある重要な営みなのです。つまり親と子を引き離す施策は子どもだけでなく、大人が豊かな心をもった人として育つ機会さえも奪い取ってしまうのです。

 先進諸国ではもはや幼児期の国家予算は経費ではなく、国家としての「投資」として、極めて重要視されています。だからこそ私たちのするべきことは更に誇りと責任を持ちながら、目の前の親子に「広く」「深く」「ていねい」に関わることであり、その重要性を社会に明確にアピールすることなのです。

 そして同時に、私立としての建学の精神は大切に継承する一方で、社会から求められる公益性・公共性に対してもしっかりと責任を果たすことを時代は求めています。公費が投入されている以上、私立幼稚園としても募集活動などのルールを守りつつ、学校評価や研修会への出席などの責務を果たすことが必要不可欠です。

 このように極めて重要かつ厳しい局面であるからこそ、京私幼連盟は今まで以上に加盟園、保護者、行政との絆を深め、大切にしながら、さまざまな課題に向き合うことが重要と考えます。そしてどのような場面においても私たちは目先の良し悪し、自己の利益だけで物事を判断するのではなく、常に「子どもの最善の利益」を何よりも一番に考えながら、自己の責務を果たしつつ、組織として一丸となり互いに支え合わねばなりません。

 目前に迫った公益社団法人化に関わる認可申請など、内部にも重要課題が山積致します。しかしだからこそ伝統ある京私幼連盟の培ってきた誇り、そして私立幼稚園の持つ「夢と明るさ」と「こどもごころ」をもって今年度も向き合ってまいりたいと存じますので、会員各位の多大なるご支援とご協力を心よりよろしくお願い申し上げます。