巻頭言

公益社団法人 京都府私立幼稚園連盟の振興について

公益社団法人 京都府私立幼稚園連盟
振興担当副理事長 中浦 正音

 日頃より当連盟の振興活動に御協力賜り有難うございます。平成27年6月の総会にて振興担当副理事長を拝命し、久しぶりに連盟の事業に関わる事になり、約9カ月が経ちました。体力的に8年のブランクは大きいと感じますが、それ以上に痛感するのは、私立幼稚園を取り巻く環境が混沌とし、本当に厳しくなってきたという事です。振興活動についても以前は加盟園が心一つに、教育環境の充実・教職員の処遇の改善・保護者負担の軽減を柱とした運動が展開できました。しかし今日では新制度のもとそれぞれの園が独自の将来設計をする必要があり、その方向性によって陳情する先やその内容も異なってきます。京都府下各地における地域ニーズ、それに応える私立幼稚園の役割、そして市町村の考え方が多様である為、一つのモデルケースを提示して一丸となって進むことも困難となってきています。結局は各園が自己責任において将来の道を模索することになると思われますが、新制度がスタートして1年が経とうとする今、全国的な制度移行の現状の分析を共有し、少なくとも市町村単位で心を同じくする仲間との連携が不可欠であると思います。その中で、どの道を進もうとも、「こどもがまんなか」を堅持し、私学の独自性と、保護者と共に歩むという私立幼稚園のアイデンティティーは共有していきたいものです。

 
さて、当連盟も平成27年度、様々な振興事業が行われました。振り返りますと、
①園児大会の開催
植物園での中央園児大会をはじめ、5地区での園児大会が今年も盛大に開催されました。特筆すべきは今年度も山田知事様が公務ご多用の中、日程を最優先に調整頂き4つの大会に直接御参加下さったことです。他の都道府県では考えられないことであります。この大会で園児たちの笑顔に触れ合って頂き、保護者の方々の姿を見て頂く事で改めて、未来の希望は子どもの育ちにあり、社会の宝は子育てに頑張っておられる保護者であると再確認して頂いているのではないでしょうか。全国NO1にランクされる私立幼稚園に対する補助制度や、全国に先駆け第3子無償化にお取組み頂いていることはその表れでありましょう。平成28年度は京都府で全国育樹祭が開催されますが、全ての園児大会をその記念行事として行い、環境について考えると共に、持続可能な社会を子ども達に引き渡す責任を胸に刻む有意義なものにしていきたいと思います。

 
②かいが展
私立幼稚園の素晴らしさを社会に発信する事業として本年度も1月28日~2月2日の期間、髙島屋グランドホールにて「かいが展」を開催させて頂きました。入場者は昨年度より多く、16,000名に及ばんとする盛況でありました。「こどもがまんなか~笑顔を未来につなげよう~さあ出航」をテーマに、来場者の皆様に笑顔と希望をプレゼントすると共に、私立幼稚園の多様性を発信出来たのではないかと存じます。今年度は例年開催している保護者向けミニ講座の他、未就園の小さな子ども達も楽しめるアクアリウム(自分の描いた絵が海の中を泳ぎまわるコーナー)や、養成大学の学生さんを対象としたワークショップ等も開催し、好評でした。これからも広く未就園児子育て家庭や幼稚園教諭を目指される学生さんをはじめ、多くの皆様に私立幼稚園の素晴らしさをアピールして参りたいと思います。来年度のテーマは「こどもがまんなか~つながるこころが未来をつくる~」で準備を始めております。ご協力の程お願い致します。

 
③府PTA連合会との連携・協力
10年前に改正された新教育基本法には「家庭教育」「幼児教育」の充実が明示されました。私立幼稚園の目指すべき方向性は充実した家庭教育と連携して、集団を通して培われる育ちを担う所にあるのではないでしょうか。家庭教育の充実を支援する為、今年度も府PTA連合会と連携し、様々なネットワーク作りや保護者の方々の学びの場の提供を図ってまいりました。連盟の事業であるキンダーカウンセラー事業や親子関係研究所事業「ぬくもり」の発刊もその一環であります。次年度以降もPTAとスクラムを組み、共に育ち合う関係を大切にしていきたいと思います。

 
④子育て支援事業
私立幼稚園は地域の子育てステーションの役割を充実して参りました。その社会的ニーズは今後益々増大すると思われます。京都府におかれましては「未入園児一時保育事業費補助金」等で御支援を頂いておりますし、連盟としても各地区未就園児親子交流事業への協力を実施しております。全日私幼連が現在成立に向けて運動を推進しております「幼児教育振興法(仮称)」においてしっかりと私立幼稚園がこの分野において果たすべき法的根拠を明確にし、公的支援の質・量の拡大を目指して参りたいと存じます。社会的ニーズを私立幼稚園がしっかりと対応すると共に、これらの取り組みを通して私立幼稚園ファンの輪を拡げる事が、喫緊の課題であると思います。

 
⑤教員確保
私立幼稚園において、そのほかにも課題が山積しています。特に全国的に叫ばれている保育士不足でありますが、その余波を受けて幼稚園教諭の採用難の時代が訪れています。各園が処遇改善を目指す必要がありますが、その為の公的支援が不可欠であります。保育所においては国の処遇改善政策がダイレクトに反映されるのに比べて、私立幼稚園の補助制度はこういった点が弱いように思われますので、この点も要望して参りたいと存じます。
連盟としては、短期的には上原理事長時代よりスタートした「わくわくリワーク事業」の充実を図っております。中長期的には藤本理事長時代よりスタートした高校生幼稚園教諭体験事業の充実も必要です。中学生の職場体験事業でしっかりと私立幼稚園ファンを作り、高校生になりこの事業に参加し、進学において幼稚園教諭の道へ進む気持ちを持ってもらう機会となる事を願います。

 
⑥情報交換
もう一点、やはり大きな課題は新制度の中でどの道に進むのかを悩まれている加盟園の皆様に対する情報提供でありましょう。府下設置者園長会での論議や市町村対策委員会の開催を通しての情報交換は必要不可欠で、次年度以降より充実を図ります。6月の総会等の機会を通して全日本私立幼稚園連合会の認定こども委員会の先生の講演会も予定しておりますので是非とも御参加下さい。

 
⑦私学振興会との連携
最後に、改めて振興事業を振り返りますと、一つ一つの事業が私立幼稚園の未来を支える為に不可欠である事、そしてそれらは密接に関連していることが解ります。そしてこれらの事業を充実するには大きな資金が必要となります。京都府におかれましては、各幼稚園への助成の他、連盟に対しても大きな御支援を頂いているところで心より感謝を申し上げます。対応しなければならない新しい課題もあり、更なる団体補助についてもお願いできればと考えます。もう一点、公益財団法人京都私学振興会の大きなバックアップについて触れなければなりません。京都の私学関係者、特に中学高校の先人達が未来の私学振興の為に立ち上げられたのが振興会です。現在その振興会により多額の支援金を頂いてこれらの振興事業は実施されています。連盟会員一同、振興会に対して感謝の念を持つと共に、私達自身が、未来の私立幼稚園の為に何が残せるかをしっかりと考える事も大切であると思うのです。