輝く瞬間

【輝く瞬間】 2016年 10月

佛教大学附属幼稚園園長 藤堂俊英

 いま目の前にいる子どもたちに自分の幼稚園時代のその時の姿を重ね合わせるようにしています。65年もの歳月が過ぎてもなおそうさせるものが自分の内から湧き出てくるのは不思議なことですが、それは「はぐくむ(羽含)」といういとなみが私たちに課せられた宿題のようなものなのだからでしよう。

 子どもたちがよく知っているイソップのウサギとカメのお話しがあります。ウサギさんが競争に負けてしまったわけを園児たちに聞いてみると、年中さん以上ともなれば、油断をして最後まで頑張らなかったからだという答えが返ってきますが、年少さんあたりからは、忘れずにお昼寝をしたウサギさんを評価する答えも返ってきます。

 毎年一度は子どもたちに次のような問いかけをします。「もし寝ているウサギさんが大きな地震や大きな台風にあって大事なおうちを失くしたり、病気やケガをして元気のないウサギさんなら、みんなは知らん顔して行ってしまうのかな?」と。すると毎年のことですが、間髪をいれずに、「それはあかん!」「どうしたの?」「だいじょうぶ?」って聞いてあげるの、という答えが爾ってきます。そこには子どもたちの真剣に輝く瞳があります。