輝く瞬間

【輝く瞬間】 2022年 12月

其枝幼稚園 園長 深谷与那人

 十二月に入って間もない頃、キャンドルとポインセチアが飾られた教会の礼拝堂で、一足早いクリスマス・ピアノコンサートを行いました。卒園生のピアニストによるお馴染みのクリスマスソングや、華やかなテーマパークの曲などが次々と演奏され、子どもたちが喜んで思わず口ずさむ姿は、幸せな音楽との出会いを味わっていると感じました。

 この日のフィナーレはショパンの即興幻想曲でした。大人でも聞き応え充分の大曲です。演奏中、年長組の女児が、演奏者をじっと見つめ、ふっと高い天井を見つめました。それは、見えないピアノの響きがこだまするのを捉えようとしているようにも見えました。幼児期の子どもの心には、どれほどの豊かな世界が広がっているのでしょう。目には見えない部分に、良いものが届けられた瞬間を、垣間見た思いでした。

【輝く瞬間】 2022年 11月

京都産業大学すみれ幼稚園園長 松尾 光敏

 「白いコップ」
 秋の遠足の時の出来事。昼食場所の設営も完了したので,子どもたちと一緒に遊んでいました。お昼近くに,準備のため,昼食場所へ向かって歩いていると,向こうからお孫さんを連れて歩いてこられた女性の方が,「皆さんの荷物を,カラスがつついていますよ」と,ご親切に教えて頂きました。あわてて走って戻ったら,教職員用リュックをカラスがつついているではありませんか。「コラ!」と大声を上げると,カラスは白い物をくわえて飛んで行きました。子どもたちの荷物には異常がありません。何を盗られたのかと訝しんでいると,なんと,カラスは,リュックの中のビニール袋を取り出し,こじ開けて,袋の中の白いコップを持ち去ったのでした。その手際は大変お見事でした。

 昼食時に,この話を子どもたちにすると,「カラスさんはコップが好きやったら,僕のコップをあげる」と,何人かの子どもたちが申し出てくれました。「カラスさんにコップあげたら,君のコップはなくなるけれど,いいのかな?」,「お母さんにコップを買ってもらうし,いいねん。」とのこと。コップを持ち去ったカラスさんに聞かせてあげたいと思うほど,心暖まる子どもたちの気持ちでした。

【輝く瞬間】 2022年 10月

八条幼稚園 総務 中浦 正悟

  ~泥の中 誰が咲かした 蓮の花~
 秋は実りの秋と言われますが、大根、お芋等の他に蓮根も旬であります。おべんとう箱の歌や野菜スタンプで子ども達も親しみ深い野菜ですが、仏教に於いてもお浄土に咲く花として蓮は尊ばれています。泥の水の中で美しく咲く蓮を苦しみや悩みに満ちた世の中で輝く仏の姿に例えて語られています。コロナ禍にあって心が沈み閉塞感が拡がる社会にあって、変わらぬ子ども達の笑顔や元気な歓声は、正しく蓮の花であり、私達大人にとっての未来への希望そのものでしょう。

 さて、先日五歳児の男の子から「蓮根には何故穴があるの」と聞かれました。とっさに穴を通して男の子を見ながら「相手が見えるように空いてるの」と答え、笑顔で見つめ合いました。後日しっかりした答えを伝えなければと思い調べたところ、「蓮の穴は地下茎だけにあるのではなく、そこから出ている地下の茎やそこからでている葉柄の中にもあり、葉から地下茎に続く空気の通り道」である事が分かりました。それによって葉から地下茎へ空気が送り込まれ、泥の中にあっても窒息しないですむようになっているのです。地下茎から花や葉へ泥の水の中にある栄養分を上へ届けると同時に、上から穴を通して空気が送られるという循環が、美しい蓮の花を咲かすのでした。

 子ども達の笑顔に元気をもらいながら、大人も子ども達に対して精一杯の愛情を送り続ける・・・。あの時の男の子への答えもあながち間違っていなかったなぁと思うのです。厳しい社会状況は続いていますが、光はすぐそこに見えています。

【輝く瞬間】 2022年 9月

京都きらら幼稚園 園長 佐渡 規雄

  「おはようございます。」と大きな声で声かけをして、汗をぶるぶるかきながら、ハイタッチ。夏になると本当に大変です。「おはようございます。」と言ってくれる子もいれば,タッチだけの子もいます。また顔をそらして走っていく子もいます。私は身長がとっても高く、一八三センチもあります。だから園児にとってみれば、大きくて怖いんだろうなと思います。園児たちに挨拶しようと思えば、顔が地面につくぐらいかがまなければ、顔が見えないのです。毎朝、何十回も挨拶をするので、終わった頃は腰が曲がって汗だくになっています。また園児の気をひこうと、私のきているTシャツには「はらぺこあおむし」の絵が描いてあります。それでも逃げていく子がいます。しかし頑張ってなん日かそのTシャツをきて挨拶をしていると、にこっと笑ってくれる園児が一人また一人と増えてきます。なんかすごく嬉しくて。一人でにたっと笑ってしまいます。夏の暑さも吹き飛んでしまいます。逃げてる園児も、いつか抱きついてくるぐらいになれば嬉しいなと思います。 
 暑さに負けずに頑張ります。

【輝く瞬間】 2022年 7月

洛陽幼稚園 副園長 土屋 英津子

 「これでええねん」
 空のご機嫌伺いをしながら遠足や園外保育を済ませる中で、ある学年のこんなシーンに出会いました。やっと通常に近い遠足行程、その盛りだくさんな楽しみの一つに手作りお弁当時間。おやつの話に盛り上がって、ついみんなから後れを取った一人に、漸く最後の関門です。何とかお握りをほお張り、大きなピクニックシートの片付けに取り掛かると、焦れば焦る程その長方形は元に戻ろうとして畳めません。折筋を見つけと小さな声で「折り紙と一緒だよ。」すると、そやっ!とばかり、両端を三角に折り合わせ全体を二つに折りもう二つに合わせ・・袋開きにはせず、後は小さく何とか袋サイズに畳んで詰め込みました。ただ、園リュックのチャックは半開き。いつもなら助けてっと言いたい所、今日は、自分の工夫に「これでええねん!」とばかりそのままにして友達の遊びの輪に飛び込んで行ったのです。

 後で聴けば、折り紙遊びの延長で新聞紙の紙鉄砲を何度も折って遊んだとのこと。その納得に半開きのリュックは誇らしげでした。

【輝く瞬間】 2022年 6月

浄福寺幼稚園 園長 菅原好章

 毎年五月になると、園内にあるクローバーから、白い小さなシロツメクサが咲きます。

 こどもたちは、クローバーの花を摘んで、花束を作ったり、花かんむりを作るのが大好きです。その他にも、草相撲をしたり、茎の長さを競い合ったり、楽しい遊びを考えていきます。

 ある日お友達が言いました。「花かんむりを作ってプレゼントするの!」母の日が近かったこともあり、お母さんのために花かんむりを作ろうと考えたようです。花を摘んでかんむりを作っていきます。先生も少しお手伝いをして綺麗な花かんむりが完成しました。お友達は満面の笑みで喜びました。完成した達成感を感じると共に、お母さんがプレゼントをもらって喜ぶ姿を思い浮かべていたのだと思います。

 このように、自然の中で子どもたちの優しい心が育まれています。これからも様々な季節の中で子どもたちの輝く瞬間に出会えることを楽しみにしています。

【輝く瞬間】 2022年 5月

紫野幼稚園 園長 渡邊大修

  ほっこり・ほろり
 十二月一日、本園に満三歳児三名が入園しました。堂々と登園する子。心細いのか保護者から離れるのを嫌がり泣いて登園する子。
お姉さんと一緒だからか平然と登園する子。三者三様のはじめて登園する姿に、微笑ましくほっこりさせられた朝でした。

 その日の降園時間。はじめて幼稚園でいろいろな経験をした満三歳児のはじめての降園。保護者と会ったとき、どのような反応を見せるのか興味津々で見ていたら、こちらも反応は三者三様。堂々と登園してきた子は…降園時も堂々と降園。泣いて登園してきた子は…
朝とは正反対で喜びが爆発したような笑顔で降園。お姉さんと一緒だったからか平然と登園してきた子は…ホッとしたのか大号泣!
朝に見せていた姿とはまったく違う様子に、こちらもちょっぴりほろり。やっぱりお母さんがいいよね!

 三者三様の満三歳児の姿に、ほっこり・ほろりとさせられた一日でした。

【輝く瞬間】 2022年 4月

さつき幼稚園 園長 堀内清志

 園庭での自由遊びの時間が来ると、仕事を放りだし、園庭に一歩を踏み出す。職員室にいては聞こえない園児の元気な声が飛び込んでくる。所狭しと思い思いの遊びに興じて走り回っている。一通り見て回る。途中で捉まって遊びの中に入ってしまうこともよくある。

 園長先生見て見て「縄跳び出来るようになったよ」「鉄棒出来るようになったよ」。園児たちは自分が頑張って出来るようになったのを今見て欲しいと私を引っ張りまわす。その一瞬一瞬の私を見る園児たちの瞳が輝いている。砂場の縁に腰を下ろそうものなら、私の周りには料理がいっぱい届く。「ありがとう。もうお腹いっぱいだからコーヒーをお願いしようかな」と 幸せの一瞬である。

 朝の日課である玄関のお迎え、まれに立てない時がある。園長先生がいないと言って泣く園児がいる。翌朝私を見つけると目を輝かして、駆け寄ってくる。「園長先生私髪切ったの」「可愛くなったよ」「園長先生、今日帰ったらおばあちゃんちに行くの」「 それは楽しみだね 」。この会話の時の瞳の輝きも好きである。現場は私にとって輝きの宝庫である。

【輝く瞬間】 2022年 3月

竹の里幼稚園 園長 榎谷美幸

  三学期になり、オミクロン株が拡大し、あちこちで、休園、学級閉鎖の声が聞こえる中、様々な行事が縮小され、子どもたちだけで楽しむというスタイルに変化してきています。そんな三学期の行事のひとつである〝絵画展〞本来は保護者と共に鑑賞して頂くのですが、今年度は子どもたちと先生で鑑賞会をしました。

 満三歳児から年長さんまで、各クラスのカラーが存分に発揮された作品がたくさん並ぶ中、作品を見ながら満三歳児の子どもたちがお友だち同士で話しているのをそっと聞いてみました。「次はバッジの色が変わるね〜。」「大きくなったら、○○組さんみたいなペンギンさん描くのかな〜?」と今から一つ大きくなることへの期待と嬉しさ、そして楽しみに待つ様子が微笑ましく映った瞬間でした。

今年もそんな時期になったのかと思うと、早く日常が戻り、子どもたちが存分に楽しめる環境が戻って来ることを願うばかりです。

【輝く瞬間】 2022年 2月

北白川幼稚園園長 山下太郎

 私は年長児に蕪村や芭蕉の俳句を教えています。ある年のこと、雪の降り積もった日にAちゃんがたくさん「俳句」を作ってきました。その中に「いやだなあ」で始まる句がありました。次の七文字は「もうすぐ終わる」と続きます。私はここで園児全員の顔を見て尋ねました、「最後の五文字は何だと思う?」と。すると、申し合わせたように、「ようちえん!!」と返事が返ってきたのには驚かされました。屈託のない子どもたちの顔を見ていると、日ごろは人生や将来について難しいことは何も考えていないかに見えますが、この時期の年長児たちの思いはみな一つなのでしょう。幼稚園は楽しい、でも、いつまでも幼稚園児ではいられない。これは、年長児を持つ保護者の思いとも重なるように思われます。卒園式の後、こんな「俳句」をもらったことがあります。「悲しかった 園にさよなら またいくよ」。卒園式までの残りの一日一日を大切に過ごしていきたいと思うこの頃です。