自然幼稚園 園長 北村 隆信
「せんせー、いっぱいみつけた!」朝登園した直後に大きい組のお友達が職員室に駆け込んできました。その手には大きな栗の実やぺたんこ栗が握られています。酷暑の夏を過ぎ、蒸し暑いながらも朝夕に秋の気配が感じられる頃に、ぱっくりと口を開けたイガ栗が木から落ちてきて、この実が何であるかを知っているその子は、慣れた足さばきで栗を取り出し興奮気味に持って来てくれたのです。そうして集められた栗を湯がいてみると、食
べておいしい栗の実は半分くらいで、あとは実が硬く空洞があいて食べにくい物でした。売っているような栗ではないのは何故かを考え、みんなで出した結論は「暑くて木がしんどかったから」でした。
最近、右京区や西京区で熊の目撃情報を耳にします。山の木の実では足りず市街地に食べ物を探しに出てこざるを得ない熊さんの食糧事情を子どもと共に考えたり、収穫物への環境の影響を考えたりする良い機会になりました。
泉山幼稚園 園長 熊谷 信康
「虫をつかまえたい!」と集まった年長組の大探検隊で、緑いっぱいのれんげ野原に出かけることになりました。道中でミミズを見つけると女の子が「さわってみるわ!」と挑戦…「うわぁ~!!」と言いながらも自分に課したミッションをクリアし、友達ともハイタッチ。その後も蛾やトンボにもさわることが出来ました。「実は、私初めてさわれたんだ。」と嬉しそうに教えてくれました。その女の子は、虫にさわりたいと思い探検隊に参加していたようです。その後もたくさんの虫を捕まえられて大満足な大探検隊でした。
こんなことしたい! と声が上がると、たくさんの友達が集まって来て一緒に一つの目的に向かって遊びが始まるところがとても素
敵だなぁと感心させられます。
これからの時期は、秋の虫の音に子ども達が耳を澄ませます。自然がもたらす面白さや不思議さを感じ、その経験を友達とたくさん共有してほしいと願います。
京都幼稚園 主事 松田 幸恵
五月に幼稚園の畑に植えたさつまいも。植えてすぐは「枯れちゃった?」と心配そうな子どもたち。でも、しばらくすると、「新しい葉っぱが出てきた!」「やっぱり大丈夫やったなあ。」と年長組の子。そして、「茎はまっすぐじゃなくて、斜めになってる!」と発見。「でも、さつまいもないよ。」と年少組の子は不思議そうな顔をしています。「まだだよ。土の中にできるよ。」と優しく教えてあげる年長児。
おいも掘りの経験がない年少児にとっては、さつまいもをイメージすることは難しいことです。でも、十月になれば、土を触り、自分で掘って確かめることで、「さつまいも」を感じるのでしょう。今は見えなくても、土の中にある命を感じる体験は子どもたちにとってかけがえのないものです。ただ、今年のさつまいもの成長は、猛暑のせいかちょっと赤信号。でも、育てるのは難しいということも含めて、大切な経験であり、豊かな学びであると感じています。
ときわ幼稚園 園長 橋川 昌治
ジリジリと照りつける太陽が眩しい季節になりました。
連日の猛暑で花々もぐったりしている中、子ども達は冷たいプールにザブン!!と飛び込み、水しぶきをあげながらキャーキャーと元気一杯楽しんでいます。
夏の水遊びはもちろんですが、一年を通してお外で遊ぶ事が大好きな子どもたち。
幼稚園の園庭の真ん中には樹齢百年を超える楠木がドスンと立ち、その左右には樹齢八十年の桜の木が立っています。この三本の樹の葉っぱが生い茂り、まるで大きなパラソルのように真夏の強い日差しから子どもたちを守ってくれています。間もなくやって来る夏には沢山の蝉の抜け殻を見つけておそるおそる服につけて大騒ぎ! 春には桜の花びらをおままごとに使ったり、秋には色とりどりの葉っぱを拾って遊んだり、冬には根っこで冬眠している幼虫が出て来て驚いたり…樹は毎日子どもたちを大切に見守りながら季節ごとに姿をかえ、様々な気づきや遊びを提供してくれます。「さぁ、きょうはなにしてあそぶ?」
北白川幼稚園 園長 山下 太郎
子どもたちは幼稚園の中で過ごす「社会の人」としてふるまう場合、大人が驚くほどの力を発揮します。ある年の四月、年少組のRちゃん(男児)とMちゃん(女児)は毎朝涙の登園でした。その日も、二人は泣きながら石段を登り始めました。私が二人の手を取り歩いていると、ふいにRちゃんが「ハンカチだして」と言いました。てっきり自分の涙をふくものと思ってハンカチを渡すと、Rちゃんは隣のMちゃんの涙をふいてあげるのでした。「ないたらあかんよ」と優しく言葉をかけながら。毎日泣くだけ泣いて、それでも幼稚園の先生は温かく手を差し伸べてくれるし、友達も「大丈夫?」と声をかけてくれたり、黙ってぬいぐるみを持ってきてもくれる。最初は不安だった幼稚園という社会が、徐々にありのままの自分を受け入れてくれる場であることを学ぶにつれ、やがてRちゃんのように困っている他の子に手を差し伸べる勇気と優しさを発揮することもできるのです。
京都カトリック信愛幼稚園 園長 大庭 早苗
五月の声と共に、自然界は一斉に緑一色の衣替えになり、澄みわたる大空には鯉のぼりが泳ぐ古来の風物詩が今年も私達の目を楽しませてくれる頃となりました。
幼稚園も新入児を迎え早一ヵ月がたとうとしています。「ママー」と泣く声もいつの間にか聞こえなくなり、お兄さんお姉さん達に
手をひかれてニッコリの笑顔に早がわりしました。子ども達の環境への順応の早さに改めて驚かされます。笑顔の輝は何と美しく愛ら
しいことでしょう! 心が満たされ不安が安心に、手の繋がりを通して伝わる温かさと喜びが顔に表れ、思わずみとれてしまいます。
五月は、カトリック教会では「聖母月」として全人類の母である聖母を讃え倣う月でもあります。また第二日曜日は母の日です。無
償の愛に育まれた子ども達はこれからも大空に泳ぐ鯉にも負けじと世界に大きく羽ばたいてほしいと心から願っています。
京和幼稚園 園長 疋田 徹郎
三月に入りどこかあわただしさを感じるとともに、少しずつ暖かさと春らしさを感じられる季節となりました。子ども達は四月からの進学や進級に向けて期待と不安で胸いっぱいになっているのではないでしょうか。
そんな中、当園では「卒園児と在園児のお別れ会」を行いました。在園児は音楽発表会で披露した歌やリトミック、オペレッタと盛りだくさんに発表してくれました。また、卒園児も負けじと鍵盤ハーモニカや鉄琴、木琴、大鼓、マラカス、トライアングル、ハンドベルなどを使ってすてきな合奏を聴かせてくれました。演奏後、卒園児へ「今日の合奏はどうでしたか?」と尋ねると「がんばりました」「あまりドキドキしなかったよ」「うまくできてよかったです」と感想が返ってきました。続けて「ともだちの音をよく聞いたからね」「みんなで力をあわせたから」「こころをひとつにしたからね」と、すこし誇らしげな最高学年の立派な言葉を聞くこともできました。
これから小学校に行っても自分の力を信じて、毎日元気に楽しく通ってくれることを心より願うばかりです。
認定こども園紫野幼稚園 園長 渡邊 大修
生命の息吹を感じて
一年で最も寒い一月末のある日、年長児が園庭の落葉したブドウの木の前で話し合っています。「何か膨らんでる」「これは何?」ブドウの新芽を前に、口々に意見を出し合っていたのです〝これはチャンスだ〟と思って口をはさみました。「これは葉っぱの芽だよ。春には大きな葉になるからね。まだ寒いけど、この木はもうすぐ春が来るのを知っているんだよ。園庭にはほかにも同じようなものがあるから探してみようか。」そう言うと、こどもたちは一目散に駆け出します。そして「枝に芽があるよ」「チューリップの芽が土から出てるよ」などと、この時期特有の発見をしていました。
冬に見られる葉の落ちた木は、一見すると「枯れている」かのような姿をしています。しかし、そこには確実に生命があり、よく見れば生命の息吹を感じられます。「こどもたちには、いつも感性を研ぎ澄ましていてほしい」。そう思わされた冬の一コマでした。
京都聖母学院幼稚園 園長 寺井 朝子
ある寒い日の朝、花壇の土が少し盛り上がっていて、よく見ると霜柱が見えていました。これは珍しいと思い、登園する子どもたちに、「これ見て!」と手招きすると、寒さで登園を渋っていた子も「何?」と足早に近づいてきました。
「これ、なぁに? キラキラしてる。」年少の女児が言うと、私が答えるより早く年長の男児が「霜柱やで! テレビで見たことある!」と一言。触ってもいいかと尋ねられ、「どうぞ」と土塊を目の前に差し出すと、その子は手袋越しにそっと触りました。けれど、繊細な霜柱は手袋越しではなかなか感触が分かりません。自ら手袋を取り素手で触ると、すっと溶けて指に水滴がつきました。「うわぁ、溶けた。」自分にだけ聞こえるような小さな声でつぶやいたその子はとても嬉しそうに笑ってこちらに応えてくれました。
実際に見て、触れて体験したことは、動画や図鑑などで得た知識とは違った快感があったようです。園での経験が、子どもたちの沢山の好奇心とその後の「大好き」に繋がっていきますように。
洛西せいか幼稚園 園長 飯田玲子
「ただいま!」元気いっぱいの笑顔で園に戻って来た子ども達。「行ってきます」の時とは明らかに違った表情です。
この日は西京警察署からの依頼で年長組36名が阪急桂駅で行われた交通事故防止運動のお手伝いに出向きました。赤い三角帽子を被ってキッズサンタになり通行される方に「反射板をつけてください」「交通ルールを守ってください」と声を掛けながら反射板を配るというものです。
いつもいっぱいに走りまわっているHくんは妙に真剣な表情で…。なかなか一歩が踏み出せないMちゃんは繋いでいた先生の手を振りほどいて改札口に向かう学生さんの元へ。それぞれが勇気を奮って参加でき大きな達成感を味わいました。
大仕事をやり遂げ誇らし気な子ども達と陰で見守りホッと安堵された保護者の方の表情は本当に光輝いていました。子ども達の無限の力を感じた一日でした。