輝く瞬間

【輝く瞬間】 2023年 3月

青風幼稚園 園長 萩 祐子

 職員室の前にある水槽で、小さなメダカが元気に泳いでいます。毎朝、登園後に必ず立ち寄る三歳児が「ちっちゃいね!」「はやく大きくならないと!」と今日も声をかけています。自分は春から年中組になるんだから…、と言わんばかりに。その横にはカメが四匹。春めいてきたここ数日は、朝から親ガメの背中に子ガメが乗り、甲羅干しをしています。冬の寒い間は姿を見せなかったカメたちの姿に「あれ!?カメさんみんな居たの?」と別の三歳児。三寒四温の今日この頃、園児たちの何気ない一言が、心に励みを与えてくれます。年度末のバタバタから一瞬解放され、身も心もリフレッシュ!

【輝く瞬間】 2023年 2月

葉室幼稚園 園長 西谷文孝

 新年早々のある月曜日の朝、本園駐車場の近くである保護者の自家用車と女子高生の自転車が衝突しました。女子高生は頭部を切り大量に出血していましたが、幸いにすぐ前の家の方が、タオルや毛布を貸して下さり、救急車もすぐに到着しました。五針ほど縫いましたがその後元気にその時ちょうど通りかかった職員にもお世話になったということで母親とあいさつに来てくれました。女子高生はその時に分かったのですが、本園の卒園生でしたし、その時に通りかかったのも本園の職員、タオルを貸していただいた家の方は駐車場を分けていただいた方とその事故にかかわった人が全員葉室幼稚園関係者であったことで、丸く収まったということですが、その時に実感したのが大事にならずに済んだのは、平時のお付き合いが如何に大切であるかが再認識した時でした。

【輝く瞬間】 2023年 1月

嵯峨幼稚園 園長 藤本明弘

 「子どもが産まれた時、母親が妖精に、我が子に一番役立つものを授けてくれるように願うとしたら、その贈り物は好奇心であるべきだと思います。」これはエレノア・ルーズベルトの言葉です。天声人語でこの一文を目にした時に感動したことを、今でも昨日のことのように憶えています。

 子どもたちにとって自分の「好奇心」がフル回転している時間こそ「輝く時間」なのでしょう。このことからも、私たち園長の使命が、一人一人の興味や関心に寄り添いながら、子どもたちが好奇心に満ち溢れた輝く時間を保証することであることは明らかです。

 自分で感じたり、考えたりしたことを、自分で選んで、自分で行動に移していく。そしてやがて仲間と協調して折り合いもつけていく。こういった場面が生活の中でどれくらい経験できているのかが重要だと思います。そしてこれこそが紛れもなく非認知能力が育つ場面だと思います。

 そして子どもたちが輝く時間を過ごすためには、先生たちも輝く時間を過ごすことが必要で、これもまた園長の使命なのです。

【輝く瞬間】 2022年 12月

其枝幼稚園 園長 深谷与那人

 十二月に入って間もない頃、キャンドルとポインセチアが飾られた教会の礼拝堂で、一足早いクリスマス・ピアノコンサートを行いました。卒園生のピアニストによるお馴染みのクリスマスソングや、華やかなテーマパークの曲などが次々と演奏され、子どもたちが喜んで思わず口ずさむ姿は、幸せな音楽との出会いを味わっていると感じました。

 この日のフィナーレはショパンの即興幻想曲でした。大人でも聞き応え充分の大曲です。演奏中、年長組の女児が、演奏者をじっと見つめ、ふっと高い天井を見つめました。それは、見えないピアノの響きがこだまするのを捉えようとしているようにも見えました。幼児期の子どもの心には、どれほどの豊かな世界が広がっているのでしょう。目には見えない部分に、良いものが届けられた瞬間を、垣間見た思いでした。

【輝く瞬間】 2022年 11月

京都産業大学すみれ幼稚園園長 松尾 光敏

 「白いコップ」
 秋の遠足の時の出来事。昼食場所の設営も完了したので,子どもたちと一緒に遊んでいました。お昼近くに,準備のため,昼食場所へ向かって歩いていると,向こうからお孫さんを連れて歩いてこられた女性の方が,「皆さんの荷物を,カラスがつついていますよ」と,ご親切に教えて頂きました。あわてて走って戻ったら,教職員用リュックをカラスがつついているではありませんか。「コラ!」と大声を上げると,カラスは白い物をくわえて飛んで行きました。子どもたちの荷物には異常がありません。何を盗られたのかと訝しんでいると,なんと,カラスは,リュックの中のビニール袋を取り出し,こじ開けて,袋の中の白いコップを持ち去ったのでした。その手際は大変お見事でした。

 昼食時に,この話を子どもたちにすると,「カラスさんはコップが好きやったら,僕のコップをあげる」と,何人かの子どもたちが申し出てくれました。「カラスさんにコップあげたら,君のコップはなくなるけれど,いいのかな?」,「お母さんにコップを買ってもらうし,いいねん。」とのこと。コップを持ち去ったカラスさんに聞かせてあげたいと思うほど,心暖まる子どもたちの気持ちでした。

【輝く瞬間】 2022年 10月

八条幼稚園 総務 中浦 正悟

  ~泥の中 誰が咲かした 蓮の花~
 秋は実りの秋と言われますが、大根、お芋等の他に蓮根も旬であります。おべんとう箱の歌や野菜スタンプで子ども達も親しみ深い野菜ですが、仏教に於いてもお浄土に咲く花として蓮は尊ばれています。泥の水の中で美しく咲く蓮を苦しみや悩みに満ちた世の中で輝く仏の姿に例えて語られています。コロナ禍にあって心が沈み閉塞感が拡がる社会にあって、変わらぬ子ども達の笑顔や元気な歓声は、正しく蓮の花であり、私達大人にとっての未来への希望そのものでしょう。

 さて、先日五歳児の男の子から「蓮根には何故穴があるの」と聞かれました。とっさに穴を通して男の子を見ながら「相手が見えるように空いてるの」と答え、笑顔で見つめ合いました。後日しっかりした答えを伝えなければと思い調べたところ、「蓮の穴は地下茎だけにあるのではなく、そこから出ている地下の茎やそこからでている葉柄の中にもあり、葉から地下茎に続く空気の通り道」である事が分かりました。それによって葉から地下茎へ空気が送り込まれ、泥の中にあっても窒息しないですむようになっているのです。地下茎から花や葉へ泥の水の中にある栄養分を上へ届けると同時に、上から穴を通して空気が送られるという循環が、美しい蓮の花を咲かすのでした。

 子ども達の笑顔に元気をもらいながら、大人も子ども達に対して精一杯の愛情を送り続ける・・・。あの時の男の子への答えもあながち間違っていなかったなぁと思うのです。厳しい社会状況は続いていますが、光はすぐそこに見えています。

【輝く瞬間】 2022年 9月

京都きらら幼稚園 園長 佐渡 規雄

  「おはようございます。」と大きな声で声かけをして、汗をぶるぶるかきながら、ハイタッチ。夏になると本当に大変です。「おはようございます。」と言ってくれる子もいれば,タッチだけの子もいます。また顔をそらして走っていく子もいます。私は身長がとっても高く、一八三センチもあります。だから園児にとってみれば、大きくて怖いんだろうなと思います。園児たちに挨拶しようと思えば、顔が地面につくぐらいかがまなければ、顔が見えないのです。毎朝、何十回も挨拶をするので、終わった頃は腰が曲がって汗だくになっています。また園児の気をひこうと、私のきているTシャツには「はらぺこあおむし」の絵が描いてあります。それでも逃げていく子がいます。しかし頑張ってなん日かそのTシャツをきて挨拶をしていると、にこっと笑ってくれる園児が一人また一人と増えてきます。なんかすごく嬉しくて。一人でにたっと笑ってしまいます。夏の暑さも吹き飛んでしまいます。逃げてる園児も、いつか抱きついてくるぐらいになれば嬉しいなと思います。 
 暑さに負けずに頑張ります。

【輝く瞬間】 2022年 7月

洛陽幼稚園 副園長 土屋 英津子

 「これでええねん」
 空のご機嫌伺いをしながら遠足や園外保育を済ませる中で、ある学年のこんなシーンに出会いました。やっと通常に近い遠足行程、その盛りだくさんな楽しみの一つに手作りお弁当時間。おやつの話に盛り上がって、ついみんなから後れを取った一人に、漸く最後の関門です。何とかお握りをほお張り、大きなピクニックシートの片付けに取り掛かると、焦れば焦る程その長方形は元に戻ろうとして畳めません。折筋を見つけと小さな声で「折り紙と一緒だよ。」すると、そやっ!とばかり、両端を三角に折り合わせ全体を二つに折りもう二つに合わせ・・袋開きにはせず、後は小さく何とか袋サイズに畳んで詰め込みました。ただ、園リュックのチャックは半開き。いつもなら助けてっと言いたい所、今日は、自分の工夫に「これでええねん!」とばかりそのままにして友達の遊びの輪に飛び込んで行ったのです。

 後で聴けば、折り紙遊びの延長で新聞紙の紙鉄砲を何度も折って遊んだとのこと。その納得に半開きのリュックは誇らしげでした。

【輝く瞬間】 2022年 6月

浄福寺幼稚園 園長 菅原好章

 毎年五月になると、園内にあるクローバーから、白い小さなシロツメクサが咲きます。

 こどもたちは、クローバーの花を摘んで、花束を作ったり、花かんむりを作るのが大好きです。その他にも、草相撲をしたり、茎の長さを競い合ったり、楽しい遊びを考えていきます。

 ある日お友達が言いました。「花かんむりを作ってプレゼントするの!」母の日が近かったこともあり、お母さんのために花かんむりを作ろうと考えたようです。花を摘んでかんむりを作っていきます。先生も少しお手伝いをして綺麗な花かんむりが完成しました。お友達は満面の笑みで喜びました。完成した達成感を感じると共に、お母さんがプレゼントをもらって喜ぶ姿を思い浮かべていたのだと思います。

 このように、自然の中で子どもたちの優しい心が育まれています。これからも様々な季節の中で子どもたちの輝く瞬間に出会えることを楽しみにしています。

【輝く瞬間】 2022年 5月

紫野幼稚園 園長 渡邊大修

  ほっこり・ほろり
 十二月一日、本園に満三歳児三名が入園しました。堂々と登園する子。心細いのか保護者から離れるのを嫌がり泣いて登園する子。
お姉さんと一緒だからか平然と登園する子。三者三様のはじめて登園する姿に、微笑ましくほっこりさせられた朝でした。

 その日の降園時間。はじめて幼稚園でいろいろな経験をした満三歳児のはじめての降園。保護者と会ったとき、どのような反応を見せるのか興味津々で見ていたら、こちらも反応は三者三様。堂々と登園してきた子は…降園時も堂々と降園。泣いて登園してきた子は…
朝とは正反対で喜びが爆発したような笑顔で降園。お姉さんと一緒だったからか平然と登園してきた子は…ホッとしたのか大号泣!
朝に見せていた姿とはまったく違う様子に、こちらもちょっぴりほろり。やっぱりお母さんがいいよね!

 三者三様の満三歳児の姿に、ほっこり・ほろりとさせられた一日でした。