華頂幼稚園 副園長 野間 晴美
トンボとバッタ採りで大賑わいの園庭。
ビオトープではメダカが孵り、そのことに大興奮の3歳児たちが、きらきら光る白いメダカを手で掬おうとしていました。
メダカがスッと逃げるので、次は素早くすくいとるように、その次は上から掴み取るようにと試行錯誤しています。「手を入れて待ってたら来るかもね。」と言う一人の声で、小さな掌が水の中に並びます。でも、メダカは来そうで来ません。すると今度は「葉っぱにしよ。」と別の声。手の代わりに葉っぱでカモフラージュしようという粋な提案に、今度こそと皆の期待が高まります。
池に落ちないように踏ん張りながら葉っぱを沈め、声を潜めて息を凝らしてメダカを待つ子どもたちの姿は、メダカみたいにきらきら輝いて見えました。
自然に感謝、子どもに感動の秋の日でした。
聖三一幼稚園 園長 松﨑 美幸
当園ではお誕生日会給食は特別メニューで、中でも子どもが楽しみにしているのは、その月のデザートです。5月の誕生会の日にお客様がお見えになり、年中組にご案内した際「良いね~そのケーキ。僕にも頂戴!!」と、お客様がK君に問いかけられると、「これは僕のだから駄目だよ。」と答えました。「じゃあ、お隣のお友達の分を貰おうかな!!」と、更にお客様が問いかけると「ケーキは皆の分だから、どれもあげられないよ!!」と、真剣な顔で問答が続きました。ふとその時、隣で給食を食べていたS君が「僕と半分こしよう~」と、笑顔でお客様に提案をしました。初めて会うお客様に「半分こしよう」と言ってくれる優しさに、お客様も私も大いに驚き嬉しくなりました。その後別室で会談をしていた私達に、担任の先生が「クラスの子ども達みんなが、お客様にケーキを半分あげると言って残しているのですがどうしましょう~」と言いに来てくれました。あまりに可愛くて、小さな輝きが大きく膨らむ、そんな驚きに幸せな瞬間でした。
浄福寺幼稚園 副園長 菅原好章
春になると本園の第二運動場のクローバー畑にシロツメクサが一面に咲きはじめます。
たいへん綺麗で、この季節のクローバー畑が子ども達も大好きです。シロツメクサを使って、首飾りを作ったり、指輪を作ったり、花冠を作ったり、様々なものを作ることが
できます。
お友達が言いました。「花の冠を作ってお母さんにプレゼントするの。」母の日が近かったこともあり、普段お世話になっている大好きなお母さんへのプレゼントを頑張ってつくりました。なかなか難しいので、先生にも手伝ってもらいながら頑張りました。そして花冠が完成すると、お友達は満面の笑みで喜びました。きっとお母さんがプレゼントをもらって喜んでいる姿を思い浮かべたのでしょう。自然の中で子ども達の心がはぐくまれていることを嬉しく思います。これからも様々な活動を通して、子ども達の輝く姿にたくさん出会えることを楽しみにしています。
紫野幼稚園 園長 渡邊大修
別れの涙
今日は三月三十一日。二〇二二年度最終日です。保育園部(二号認定)の保育があるため、今日もこどもたちが園に集っています。朝から年長児の大きな声が園内に響いていますが、この声を聞くのも最後かと思うと、何とも言えないさみしさがこみ上げてきます。そのような気持ちを抱いているのは私だけではなく、園児も同様のようです。
昨夕のこと。最終登園日だった卒業児が帰る際、年中児が悲しさのあまり号泣し始めました。なかなか泣きやむことができず、卒業児との別れの悲しみがどれだけ大きいかが伝わってきました。また、ある卒業児は最後の登園日ということで、今朝は泣きながら登園してきました。友だちとの関係性が濃く、園での生活が楽しかった分、悲しみが深くなったのでしょう。
ここ数日間で目の当たりにした数々の別れの涙は、園での生活が充実していた証だと感じます。改めて「こどもたちにとって特別な園であり続けたい」と感じさせられた年度末でした。
青風幼稚園 園長 萩 祐子
職員室の前にある水槽で、小さなメダカが元気に泳いでいます。毎朝、登園後に必ず立ち寄る三歳児が「ちっちゃいね!」「はやく大きくならないと!」と今日も声をかけています。自分は春から年中組になるんだから…、と言わんばかりに。その横にはカメが四匹。春めいてきたここ数日は、朝から親ガメの背中に子ガメが乗り、甲羅干しをしています。冬の寒い間は姿を見せなかったカメたちの姿に「あれ!?カメさんみんな居たの?」と別の三歳児。三寒四温の今日この頃、園児たちの何気ない一言が、心に励みを与えてくれます。年度末のバタバタから一瞬解放され、身も心もリフレッシュ!
葉室幼稚園 園長 西谷文孝
新年早々のある月曜日の朝、本園駐車場の近くである保護者の自家用車と女子高生の自転車が衝突しました。女子高生は頭部を切り大量に出血していましたが、幸いにすぐ前の家の方が、タオルや毛布を貸して下さり、救急車もすぐに到着しました。五針ほど縫いましたがその後元気にその時ちょうど通りかかった職員にもお世話になったということで母親とあいさつに来てくれました。女子高生はその時に分かったのですが、本園の卒園生でしたし、その時に通りかかったのも本園の職員、タオルを貸していただいた家の方は駐車場を分けていただいた方とその事故にかかわった人が全員葉室幼稚園関係者であったことで、丸く収まったということですが、その時に実感したのが大事にならずに済んだのは、平時のお付き合いが如何に大切であるかが再認識した時でした。
嵯峨幼稚園 園長 藤本明弘
「子どもが産まれた時、母親が妖精に、我が子に一番役立つものを授けてくれるように願うとしたら、その贈り物は好奇心であるべきだと思います。」これはエレノア・ルーズベルトの言葉です。天声人語でこの一文を目にした時に感動したことを、今でも昨日のことのように憶えています。
子どもたちにとって自分の「好奇心」がフル回転している時間こそ「輝く時間」なのでしょう。このことからも、私たち園長の使命が、一人一人の興味や関心に寄り添いながら、子どもたちが好奇心に満ち溢れた輝く時間を保証することであることは明らかです。
自分で感じたり、考えたりしたことを、自分で選んで、自分で行動に移していく。そしてやがて仲間と協調して折り合いもつけていく。こういった場面が生活の中でどれくらい経験できているのかが重要だと思います。そしてこれこそが紛れもなく非認知能力が育つ場面だと思います。
そして子どもたちが輝く時間を過ごすためには、先生たちも輝く時間を過ごすことが必要で、これもまた園長の使命なのです。
其枝幼稚園 園長 深谷与那人
十二月に入って間もない頃、キャンドルとポインセチアが飾られた教会の礼拝堂で、一足早いクリスマス・ピアノコンサートを行いました。卒園生のピアニストによるお馴染みのクリスマスソングや、華やかなテーマパークの曲などが次々と演奏され、子どもたちが喜んで思わず口ずさむ姿は、幸せな音楽との出会いを味わっていると感じました。
この日のフィナーレはショパンの即興幻想曲でした。大人でも聞き応え充分の大曲です。演奏中、年長組の女児が、演奏者をじっと見つめ、ふっと高い天井を見つめました。それは、見えないピアノの響きがこだまするのを捉えようとしているようにも見えました。幼児期の子どもの心には、どれほどの豊かな世界が広がっているのでしょう。目には見えない部分に、良いものが届けられた瞬間を、垣間見た思いでした。
京都産業大学すみれ幼稚園園長 松尾 光敏
「白いコップ」
秋の遠足の時の出来事。昼食場所の設営も完了したので,子どもたちと一緒に遊んでいました。お昼近くに,準備のため,昼食場所へ向かって歩いていると,向こうからお孫さんを連れて歩いてこられた女性の方が,「皆さんの荷物を,カラスがつついていますよ」と,ご親切に教えて頂きました。あわてて走って戻ったら,教職員用リュックをカラスがつついているではありませんか。「コラ!」と大声を上げると,カラスは白い物をくわえて飛んで行きました。子どもたちの荷物には異常がありません。何を盗られたのかと訝しんでいると,なんと,カラスは,リュックの中のビニール袋を取り出し,こじ開けて,袋の中の白いコップを持ち去ったのでした。その手際は大変お見事でした。
昼食時に,この話を子どもたちにすると,「カラスさんはコップが好きやったら,僕のコップをあげる」と,何人かの子どもたちが申し出てくれました。「カラスさんにコップあげたら,君のコップはなくなるけれど,いいのかな?」,「お母さんにコップを買ってもらうし,いいねん。」とのこと。コップを持ち去ったカラスさんに聞かせてあげたいと思うほど,心暖まる子どもたちの気持ちでした。
八条幼稚園 総務 中浦 正悟
~泥の中 誰が咲かした 蓮の花~
秋は実りの秋と言われますが、大根、お芋等の他に蓮根も旬であります。おべんとう箱の歌や野菜スタンプで子ども達も親しみ深い野菜ですが、仏教に於いてもお浄土に咲く花として蓮は尊ばれています。泥の水の中で美しく咲く蓮を苦しみや悩みに満ちた世の中で輝く仏の姿に例えて語られています。コロナ禍にあって心が沈み閉塞感が拡がる社会にあって、変わらぬ子ども達の笑顔や元気な歓声は、正しく蓮の花であり、私達大人にとっての未来への希望そのものでしょう。
さて、先日五歳児の男の子から「蓮根には何故穴があるの」と聞かれました。とっさに穴を通して男の子を見ながら「相手が見えるように空いてるの」と答え、笑顔で見つめ合いました。後日しっかりした答えを伝えなければと思い調べたところ、「蓮の穴は地下茎だけにあるのではなく、そこから出ている地下の茎やそこからでている葉柄の中にもあり、葉から地下茎に続く空気の通り道」である事が分かりました。それによって葉から地下茎へ空気が送り込まれ、泥の中にあっても窒息しないですむようになっているのです。地下茎から花や葉へ泥の水の中にある栄養分を上へ届けると同時に、上から穴を通して空気が送られるという循環が、美しい蓮の花を咲かすのでした。
子ども達の笑顔に元気をもらいながら、大人も子ども達に対して精一杯の愛情を送り続ける・・・。あの時の男の子への答えもあながち間違っていなかったなぁと思うのです。厳しい社会状況は続いていますが、光はすぐそこに見えています。