輝く瞬間

【輝く瞬間】 2021年 5月

聖光幼稚園 園長 菊地幸代

 園庭の桜の蕾が色づき始めると、「いよいよ新学期だ!」と心が弾みます。そして同時に、「今年の子どもたちとの出会いはどうかな?」と少々の不安も覚えます。

 今年の新学期初日も、子どもたちから「進級マジック」を見せてもらいました。ほんの2週間前まで、「ママ〜置いていかないで〜」と泣いていた年少児が、年中に進級したその日から、新しい部屋に向かって颯爽と1人で歩く姿。また、以前は泣いている小さな子どもに声をかけることができなかったのに、「一緒に行ってあげるね、泣かなくていいよ」と部屋まで送ってあげる姿。進級したことが、こんなにも大きな自信を与えるのだと、感じる瞬間です。一つ
大きくなったことを実感しているのだということが、よくわかります。「お姉さんてたーいへん!」と言いながらなんだか嬉しそうな表情の子どもたちを見ていると、まるでマジックにかかったようです。

 進級がきっかけで、新しい一歩を踏み出した子どもたちの姿に出会い、成長を楽しみにしているところです。

【輝く瞬間】 2021年 4月

同志社幼稚園 園長 北川雅章

 体操教室が嫌でお母さんの後ろに隠れて登園したA君。環境の変化に敏感で、前回の体操教室に入れなかったことを、何よりA君自身がよく覚えていたのでした。ご家庭としては見学希望ということでしたが、A君の成長をお伝えしたうえで、対応は幼稚園にお任せいただけることになりました。はじめは足が進みませんでしたが、私が近くにいるという約束で部屋の隅っこに入ることができました。それから、少しずつ友だちの中に距離を詰め…。A君の表情はこわばっていました。が、体操教室の先生の視界に入ると…!あっという間に先生の魔法にかかってしまいました。次第に、友だちと一緒に活動に参加できるようになりました。「先生、できた!」という瞬間の、何とも言えない嬉しそうな顔、「ほら見て!」という視線と自信に満ちた瞳、笑顔がみられました。体操教室の終了後、「次はいつ体操があるの?」と、聞いてきた彼の瞳はキラキラしていました。

 子どもは、存在そのものが輝いていることも確かですが、同時に、秘めている輝きを引き出すことができるのも私たちの仕事だと、改めて考えさせられました。子ども自身の喜びを、心から喜び認める大人の存在があってこそ、次につながる意欲も生まれるでしょう。

 新学期が始まります。与えられた環境、状況の中で、できることを子ども達と共に模索しながら、また「輝く瞬間」にたくさん出会える一年になり
ますようにと願っています。

【輝く瞬間】 2021年 3月

京都聖母学院幼稚園 園長 田中圭祐

 以前は生活発表会の練習が進むと、お腹が痛くなったり、登園しにくかったりする子の姿がありました。因果関係は不明ですが、コロナ禍の今を行事の見直しができる良い機会とし、もっと子どもが主体的に参加できる生活発表会にしようと職員で話し合いました。

 年長児はクラスを解体して、舞台に出る「キャスト」と裏で支える「バックアップ」に分かれて、子どもたちが考え、話し合い、作り上げる過程を存分に楽しみました。

 「絵本では夕方みたいにオレンジだけど、夜になったら青にしたいねん。」「船が自分より大きくて持つのも大変で手が疲れちゃうけど楽しいよ。」「この場面はこの色って決めても、やってみておかしかったらまた考えるのが難しい。」「舞台裏の幕に隠れるのが難しい。普通のかくれんぼは上手なんだけどね。」

 このように表に出ないバックアップの子どもたちが、自分らの作品として取り組む姿や表情を保護者に届けられるよう試行錯誤の毎日です。

【輝く瞬間】 2021年 2月

自然幼稚園 園長 北村隆信

 今年も子ども達と草花の鮮やかさを感じ、虫たちの声を聴き、夏を楽しみたいと教職員が知恵を出し試行錯誤で迎えた夏期保育。今年は新型コロナ感染予防の為、多くの対策が必要となり、特にプール遊びでは密にならないように時間差・少人数・等、工夫を凝らした。

 足を水につけた瞬間「冷たいっ!」といいつつ、体が水になれるとすぐに「気持ちいい」と声を上げ、水を怖がっていた園児もいつの間にか友達と水のかけあいに興じる。泳ぎに自信がある子どもたちは泳ぎ競争をしたり、思い思いの水遊びに熱中していった。

 コロナ禍で外出やレジャーが極端に制限された中、友達と夏らしい日々を過ごした夏期保育にどれだけ子どもたちの心を開放しただろうか。

 太陽に照らされキラキラと光る水しぶきの中を笑顔ではしゃぐ園児たちを見ながら例年以上に子どもたちの成長と健康を願わずにはいられない。

 コロナ禍で活動が制限させられても、せめて幼稚園に来た時ぐらい身体いっぱい動かしおもいきり遊んでほしい。子どもたちの輝く笑顔こそが宝と思う令和2年猛暑の夏。

【輝く瞬間】 2021年 1月

京都カトリック信愛幼稚園 園長 大庭早苗

 幼稚園の砂場は園児にとって大好きな場所の一つですが・・・ある日の出来事!「園長先生!大変大変…」と年長の子が慌ただしく駆け込んできました。「どうしたの?何が大変なの?」と聞くと、「砂場が!誰が創ったの?」そこで意味がわかりました。
教育実習生巡回指導の某大学の先生が当園を訪問してくださった折、砂場の件が話題に上がり、園庭にある砂場をご案内したところ、すぐさま砂場用の道具を手に取って実演して下さいました。正に北海道札幌の雪まつりの雪像のような立体感のあるお城を瞬く間に創ってくださったのです。私自身もその手際の良さと仕上がりの立派さに
驚いてしまいました。そのことは誰にも伝えていなかったので、見つけた子供たちは大喜びで報告に来てくれたのでした。目を輝かせ、興奮状態で…翌日にはお城の周りを色とりどりに飾ってくれていました。よほど嬉しかったのでしょう!大学の先生の置き土産に大感激の子どもたちでした。

【輝く瞬間】 2020年 12月

いずみ幼稚園 園長 池田慶子

 しゃがんだ背中にドン!!「せんせーい、何しているの?」首に手を回してのぞき込む女の子。「トイレのスリッパを揃えてるの。」「なんで?」「トイレに入る人が、すぐにスリッパを履いてオシッコやウンチが出来るしね。」「ふーん……」

 しばらくたったトイレの前でスリッパを丁寧に揃える先程の女の子。「ありがとう!トイレに入る人が気持ちよく入れるね。」
「うん。」

 子どもたちの根底には素直に誰かの為に出来ることをやりたい! 人の役に立ちたい! と思っている。

 優しさの押し売りではなく、誰かに褒められたい訳でもなく自分に出来る事は惜しみなくやってあげたいという気持ちが溢れている。

 自分という存在がすべてに満たされているからだろうか。役に立ちたいという感情は生まれ持ったものなのだろうか。誰かの為に役に立ちたいと思えるキラキラした子どもの心に近づきたい。

【輝く瞬間】 2020年 11月

東山幼稚園 園長 塩貝省吾

 先日、実家に帰省中、車窓から見えた秋桜の美しさに心惹かれ、車を止めた。赤色白色ピンク色、どれも綺麗で美しい。それぞれが、それぞれ色に一生懸命輝いて、みんな素晴らしい。

 花は自身で美しく見せようと考えて咲いているわけではないが、自分色に咲く花は、それだけで美しく輝いている。私たちは、自分の好みで、あの花は好き、この花は嫌い、と選別してしまいがちだが、それは私たちが自分のフィルターで見ているから。
花はいつも変わらずキラキラと自分色に輝いている。私は、ハッと立ち止まる。子供たちは、いつもどんな時も、どんな子供も、それぞれの個性を精一杯輝かせている。しかし、それを見ている私たちは、知らず知らずに、大人のフィルターで子供たちを見比べていないだろうか。フィルターを外し、真実の眼で子供たちに接し、輝く姿に気づくことの大切さ。秋の風にゆらゆらと、楽しそうに揺れる秋桜の情景が、子供たちの笑顔と重なった。

【輝く瞬間】 2020年 10月

衣笠幼稚園 杉本五十洋

 子どもの顔が輝く瞬間。それは、面白いこと、好きなことに熱中しているうちに偶然何かができて発見した時、それをもう一度再現しようといろいろ粘ってやっていたらできた時、他の何かができて発見した時。子どもの顔が輝く瞬間のフロー図を描いてみたらどんな風になるのだろうか⁉︎

一人一人で異なるフロー図は刻々と変化しながら園児数分もできてしまう。
なんと膨大で壮大なものになる。

しかし、私たちが担当している幼児期にはこのフロー図を描き込む原紙の色は面白いこと、好きなこと、興味のあること、関心のあることが必要条件です。

この必要条件を醸し出してくれるのが先生です。

先生方の子どもへの関わりは、彼・彼女の二度と還らぬ時代を担当しているからこそ崇高で偉大な行為です!
誇りをもって歩いて行きたい。他の仕事とは全く種類が異なるものですから!   

【輝く瞬間】 2020年 9月

高倉幼稚園 近藤 広子

 夏休み明け、四歳児と園庭で遊んでいた時のこと。 
H「あっ!セミの抜け殻見つけた。わぁ小さいね。何ゼミかな。」
  確かに夏休み前に見つけたものに比べ一回り小さかったのです。
私「ひぐらしかな。」
H「あぁー僕知ってる。」
 「ツクツクボウシは、『ツクツクいいよー』って鳴くもんね。」
Y「アブラゼミは『ミーンミーン』って鳴くよ。」
T「クマゼミは『ジージー』って鳴くね。」

 小さなセミの抜け殻を囲んで子供たちの会話は弾みます。
 コロナ禍により、園生活での行事の取り止めや変更が相次ぎ、いつも通りにできないことばかりを気にする私と違って、与えられた条件や変化する状況の中でも今できることを喜び、目を輝かせながら生き生きと遊びを展開し発展させながら無心に楽しむ子どもたち。

『今、この一瞬一瞬を精一杯大事に生きる』ことの大切さを、子どもたちの姿を通して改めて気づかされます。と同時に、子どもたちの生きる力強さに感動しています。

【輝く瞬間】 2020年 7月

相愛幼稚園 足立 淳子

 こどもたちのいない園庭の花々が桜からハナミズキに変わり、もはや紫陽花がその彩りを放っています。六月になりようやく可愛い笑顔が声が戻って参りました。

 五月の或る日、がらんとした保育室に響く先生の声。「◯◯ちゃん、お家でげんきにしてますか?」そのあとの会話はお母さんとの話が続き、その後園児と話してる様子が伺えました。初めはトーン低めで恐る恐る、子どもの声を聴いた途端ハイトーンに。「センセー、◯◯ちゃんの元気な声を聴くことができてうれしいなぁ」声の調子の変化に嬉しさが滲み出ていて心が動きました。子どもたちのいない幼稚園がどんなに淋しいか、早く主役が戻れます様に祈る毎日でした。後にお母さんたちのお話を聞くと、こどもたちも先生の声を聞いて一気に幼稚園の事を思い出しとっても嬉しそうだった様です。なんとなく固くなりつつあった先生達の心をほぐすのは子ども達の存在なのだとつくづく感じた一コマ。信頼が土台の素敵なつながりをイロイロな波を越えながら守っていきたいと思ったキラキラした一瞬でした。