輝く瞬間

【輝く瞬間】 2021年 11月

光明幼稚園園長 田中 康雄

 十一月上旬、預かり保育の帰り道は五時三〇分頃、年少の男の子が「あれ?」とある事に気付きました。「なんでもう夜になってる?」その男の子は、以前はまだまだ外で元気に遊んでいた明るい時間のはずなのに、真っ暗になっている事に気付き、不思議そうに頭をひねりました。「もうすぐ冬やからやな」とはお迎えの父の言葉。「?」「冬は夜が長くなんねん」

「夏は?」「夏はまだ五時半は明るい」「ふーん。年中さんになったら、もう一回夏が来るから、大丈夫やんな」

 男の子の不安の入り混じった、自分の知っている知識を自分に言い聞かせるような声の調子がとても印象的でした。短くなる日照時間に気付く感性、夜を怖いと感じる情緒、知識と生活の中での実感の結び付き、そしてその体験を共有する親子の会話。日常の一瞬を切り取った濃密な場に居合わせた幸せを感じられた一日でした。