輝く瞬間

【輝く瞬間】 2013年6月

聖三一幼稚園 園長 柳原 義之

 梅雨入りと同時に中休み。ばらが咲き誇る園庭で、子ども達にとっては外遊びにうれしい日が続いています。年少さんもすっかり遊びのエリアとお友達が広がりを見せています。

 入園当初、「お母さん」「帰りたい」と泣き続けていた女の子がいました。通りがかりに「まぁ、泣いてても仕方ないし、とりあえずカバンおろそうか。それどこにかけるの?へぇ、ちゃんと覚えてるんやなぁ。次は?」とあっという間にスモックのお着替えにたどり着きました。後ろ前が気になりましたが、まぁ、ここまでがんばったし、いいかな」。で、「何して遊ぶの?」泣いてたことも忘れて、外でくつを履いていました。時は経ち、お弁当、給食にも意欲満々の様子。自宅への通りがかりに歯磨きをしながら「先生、給食みんな食べたよ!」「わたしも!」「おいしかったよ!」と矢継ぎ早に声をかけてくれました。すごいなぁ。子ども達の成長は!

【輝く瞬間】 2013年5月

葉室幼稚園 園長 西谷文孝

 皆さんは直径100センチの大木が山で切り倒される様子を見られたことがあるでしょうか。大地にメキメキメキーと轟音をたて、倒れる瞬間は圧巻であります。立っているときの雄姿もすばらしいと私は思いますが、それがどのような場所で建築用材として使用されたときの姿や杢目などを想像するとワクワクします。100年生の樹は建築用材に用いた場合100年保つと昔からいわれています。

 毎年、卒園式の度に修了証書を手渡す瞬間この子は大人になったらどんな人に成るのかなと想像します。受け取る時の純真な眼差しはキラキラと輝いて本当にすばらしい瞳だと思います。今後の成長には様々な周りの環境に左右されるのは当然ですが、真っ直ぐな大木になってほしいとワクワクと願う瞬間です。

 人も樹も苦労して育ったら味があります。樹はすばらしい杢目に表れますし、人は人格に表れます。卒園生の未来に期待を込めて今後も証書を渡し続けたいと思います。

【輝く瞬間】 2013年4月

紫野幼稚園 園長 大澤 宣

以前幼稚園に来ていた子ども、その頃4歳になっていましたが、この子から私は意味のわかる言葉を聞くことができませんでした。この子は、登園するとまず園庭におり、他の子どもたちが園庭に出てくると保育室に入ってしまいます。みんなが保育室にはいると、この子は園庭に出て来ます。ある日、この子は一人だけで園庭にいました。私は少し離れてようすを見ていましたが、この子は後ろ向きに歩き、砂をまきながら、何か言っています。何を言っているのだろうと思って、そっと近づいて聞いていました。

「たね、いっぱいまくと、おはながさくんだよ」。確かにそう言ったのです。こんなことが言えるようになっていたのか。私はうれしくなりました。この子の中にお話しが生まれ、物語が作られていたのだと思います。ひとり一人が自分の物語を作っていく。その歩みを見守り、大切にしていきたいと感じさせられました。

 

【輝く瞬間】 2013年3月

龍谷幼稚園 園長 南  俊生

  もうすぐ進級・卒園という時期。龍谷幼稚園ではスケート教室に行きます。その日、皆は楽しみにしていますが、年長組のA君は『スケートは嫌いです』と言って、浮かない顔をしています。彼は、去年のスケート教室の時上手く立てずに泣いていました。

 今年もその事が嫌で、文句ばかり言ってなかなか気持ちが切り替わりません。それでも、根はとっても真面目な彼は、怒ったような顔をして、何度こけても起き上がって、手すりを持って歩く練習をしていました。

 スケート教室が間もなく終わるという時、指導の先生が『A君、皆の前でここまで歩いて来て下さい』と言うと、『はい』と言って、スッと立って、トコトコと歩いて見せました。

 皆は『すごい』『A君上手になってる!』と自分のように喜んでくれました。そして、A君は満面の笑みで先生の所まで行きました。

 A君は今、苦手な事を一つ自分で乗り越えました。その笑顔はとっても輝いていました。

 

【輝く瞬間】 2013年2月

聖三一幼稚園 柳原 義之

 寒い日が続きますが、暦では立春を過ぎ、物事がモゾモゾ動き始める季節を迎えました。園庭には陽の当たる部分がずいぶん広くなり、子ども達の動きも活発になってきました。

 朝のお迎えの時には、園庭の取り残された小さな落ち葉や枝を拾っていますが、どうも園長というより、掃除のおじさんに見えるらしく、「今日もお掃除してるの?」と声をかけてくれます。

 一見きれいに見えても、行ったり来たりしていると花壇やプランターの隅、子ども達が走り過ぎた砂の中から枯葉や銀杏の軸などが出てきます。その時々に違ったものがあり、ふと視線を木の枝に移すと、木の芽の膨らみや、ごく小さな若葉が鮮やかな緑を見せてくれたりします。

 保育も同様に毎日同じようなことが繰り返されているように見えて、先生たちは子ども達の中に新しい発見をし、育つものを見つめ、時に取り除き、時に水を与えながら一人一人の成長を促します。春は間もなく、そこまで来ています。

 

【輝く瞬間】 2012年12月

紫明幼稚園 園長 兵藤 芳子

 もちつきぺったんこ。十一月半ばになるとかわいい歌声が流れてきます。恒例のお餅つきがもうすぐなのです。お餅つきの日が近づくとお母さん達が餅米の手配やら道具の点検やら忙しげに準備を進めて下さいます。

 さあ明日はお餅つき。でもどうも明日は雨。どうしましょうと困っておりますとテントが運びこまれ、お仕事の合間をぬって集まったお父さん、お母さんがテントをはって下さり、軒下とテントを使ってできることとなりました。当日は雨。でも準備万端。お餅つきがはじめてのお父さんも経験豊富なお父さんも子ども達の「よいしょよいしょ」というかけ声を力に交代し合ってついて下さいます。子ども達も小さな杵を持ってひとりひとりつきました。ついたお餅を今度はころころ丸めます。年少さん達もお母さん達に教えてもらい上手に丸めています。醤油餅にきな粉餅。おいしいこと、おいしいこと。お父さんやお母さんも談笑しながら食べておられます。雨ふりではありましたが例年よりももっとにぎやかで楽しかったお餅つき。ひとりひとりが素敵に輝いた一日でした。

 

【輝く瞬間】 2012年11月

寺之内幼稚園 末吉淳周

  秋は保育時間を一時間延ばして様々な体験をしています。今年も、年長児がある山へハイキングに出かけました。その山は、春に一度楽なコースで登っているのですが、秋は少々ハードなコースから登っていきます。でもどの山に行くかは内緒で、「明日は、不思議な山に登るからね」しかも「地下鉄に乗って行くんだよ」と聞いた子ども達の謎は深まるばかり。当日、ワクワクドキドキしながら二時間程かけて登り、やっとの思いで到着。はじめは「やっと着いたなぁ。」「いい景色やね。」と言葉を交わす子ども達。しばらくして、「ん?ここって1回来たことある?」「ほんまや見たことあるかも!」そのうち誰かが「あ!先生、ここって○○山と違う?」と大発見。その後一瞬にして感動の渦となるのです。大発見の瞬間までは、先生は多くを語らず見守っています。毎年のことながら、子ども達が自らの力で輝くこの瞬間が、たまらなく大好きな先生達です。

 

【輝く瞬間】 2012年10月

マクリン幼稚園 松本行司

 ほとんどの園では運動会が終わったころでしょう。本園の年長の二クラスは赤白二チームに分かれてクラス対抗の綱引き、障害走、リレーを行います。毎日それぞれの練習が終わるとクラス毎でリレーなら「バトンの練習をしようよ。」「順番を入れ替えてみようや」と色々な意見が出ます。勝ちにこだわるようになった中、障害走で負けた時にA君が『お前のせいで負けたんやぞ。』と思わずK君に言ってしまいました。涙をこらえるK君。そのときSちゃんがA君に『そんなこと言わんと、明日勝てるように作戦考えようよ!』と言い出し連日円陣を組んで作戦会議が始まるのでした。

 みんなでできることを話し合い支えあって練習したこと、また当日はみんなを応援し、負けても相手をたたえ合う中に、勝ち負けにこだわっていたこどもたちがクラスの団結力を強め大きく成長したことをみることができました。この経験は卒園までの色々な取り組みの中でさらに生かされていくものと期待します。こどもたちよもっと輝け!

 

【輝く瞬間】 2012年9月

ふじのき幼稚園 稲葉由貴子

 ブルーシートを敷く為に広げると、子どもたちが「わーっ海だー」と嬉しそうに言い、シートを広げる際に聞こえる「ザッーザッー」の音が波の音に似ていると言う。子どもの想像力の豊かに感心します。

 又、飛行機と飛行機雲を見て、「なんで、飛行機の後ろに雲がくっついてるんだろう?」

「飛行機が雲を置いていってるんじゃない?」と話していました。確かに飛行機雲は、飛行機の航跡に生成される細長い線状の雲で、ジェット機などのエンジンから出る排気ガス中の水分の雲であるから、子どもたちの観察力には感心します。

 ある時は、異年齢の子どもたちが一緒にブロック遊びをしていて、三個のブロックを三角に合わせてケーキを作り、そのケーキの上に色々の小さなブロックを乗せてショートケーキに見立てていました。しかも、そのショートケーキを6個合わせてケーキのホールにしていました。私はホールのケーキを見て、子どもの発想力のすばらしさに感心します。

 そして、その様子から「誕生会ごっこ」をしているとわかり、「誰のお誕生会?」と尋ねると恥ずかしそうに年中組の女の子を指でさして、私に年長組のお母さん役の子が「園長先生もよる?」と聞いてくれました。誘いの言葉に心の豊かさが感じられ、その優しさがとっても嬉しかったです。

 

【輝く瞬間】 2012年7月

光華幼稚園 森 圭子

新緑の頃、園庭のミカンの木にアゲハ蝶が卵を産みにやってきます。
1ミリ位の真珠のような卵。年長児は、その卵を葉ごと取って飼育箱で育てます。
ある日、年少児が卵を指で摘まんだとたん蕫プチュン﨟と潰れてしまいました。
「あ~!何するの」「それはアゲハ蝶の卵なんやで!命の粒なんやで!」と年長児が怖い顔で叱りました。
「ごめん」と大泣きしているA児に「卵だと知らなかったのね?これはアゲハ蝶になるのだよ!大切に育てようね」と、そっと先生が寄り添いました。
その後、A児と一緒に葉っぱと卵を飼育箱に入れました。
翌日からA児は、飼育箱を覗いては「黒い虫や!」「青虫になった!葉っぱ食べてる、うんちいっぱいしてる!」とお掃除もお手伝い。
ある日、飼育箱の蓋にぶら下がり眠り続けたさなぎは、ついにアゲハ蝶に!「やったー」とA児は歓声を上げ、本当に嬉しそうでした。
「蝶々さ~ん元気でね!」とクラスみんなで手を振り、アゲハ蝶は、子ども達と別れを惜しんでいるかのように旋回しながら大空へ飛び立ちました。
命の輝きを感じた瞬間でした。

 
編集委員会より

 コンチキチン…、の囃子が聞こえてくると本格的な夏がそこまできていることを実感させてくれます。祇園祭、五山の送り火、保津川下り、川床、そして地蔵盆…など。京都の夏は子どもから大人まで、楽しめることがいっぱいですね。今年の夏は節電もしっかりしながら、暑くて熱い京都の夏をたっぷり満喫したいものです。