さつき幼稚園 堀内 清志
秋晴れの朝、日直の先生が園庭の落ち葉を掃いている所に園児たちが寄り集まって、先生に何か話しかけていた。何気なく廊下から園庭のその様子を眺めていた私に、突然、園
児たちが駆け寄ってきて「園長先生、落葉でお芋を焼いて欲しい。先生が、園長先生に頼んでおいでと言わはった」、私は「よし分かった」と即答した。園児たちは自分たちの思い
が叶ったことに大喜びで先生のもとに報告しに戻った。
先生の、落葉でさつまいもを焼いて美味しく食べた記憶が蘇ってきたところへ、園児たちが「先生何しているの」と寄ってきたのだろう。「落葉を集めているんだよ。ここにお芋
さんを入れて焼いたら美味しいよ」「入れて焼いて焼いて。食べたい」こんな会話があったのだろう。
園長先生が落葉で焼芋してくれる。そんな噂が広がってか、園児たちは手に手に集めた落葉を差し出して、「これでお芋焼ける」と私に持ってくる。「もっとたくさん集めて」「わかった」と駆け出していく。
京都カトリック信愛幼稚園 松本 尚子
「先生、幼稚園に来れるの後何日か知ってる?」卒園を控えた年長児が、度々口にするようになりました。進学への溢れんばかりの喜びとちょっぴりの名残惜しさが入り交じる、子ども達の複雑な想いが毎日手に取るように感じられます。
ピカピカの年長児になり、クラスに入園した年少児に寄り添いながら世話をして共に育ち合った一学期。運動会・七五三・クリスマス会…行事を通して友と支え合う大切さを知った二学期。思い切り好きな活動に取り組んで高かった壁を次々と乗り越え自分を強くした三学期。そしていよいよ未だ知らない世界へと向かう助走が始まった今、ふとクラスに目を向けると、年中児が最年少児の手を取って、時には追いかけ、あなたたちがしてくれた通りのことをしています。自分が与えて貰った愛を次へ託して…愛情のリレーが受け継
がれていきます。
あと何日か数えたくないなぁ。でも満開の桜の下ランドセルを背負う日まで一緒に春を待とうね。
うぐいす幼稚園 堀 陽子
まってから、作品展準備期間中の約3週間は、幼稚園全体が包紙や紙箱などの小山で、一杯になります。その中から好きな物を探して色々な物を作ります。年長さんや年中さんは思い思いに想像力を働かせてどんどん作ります。けれど、今年初めて経験する年少さんには、沢山素材がありすぎて、ちょっと難しく、迷ってしまい、なかなか手が出ません。けれどピンクのプチプチ(緩衝材)を見つけたとたん、「いちごを作る!」と、一挙に行動を起こしました。切って、丸めて、テープで止めて、それから、緑の毛糸を貼りました。黙々と作業が続き「園長先生、ハイ、どうぞ!」と箱にきっちり並んだ苺を差し出しました。「おいしそう!」くちゃくちゃまるめたプチプチも、しっかりと必要な所に、考えて、テープが貼ってあります。年少さんも三学期ともなると、こんなに成長を見せてくれます。「ああおいしかった。ありがとう。」
復活幼稚園 前田康子
幼稚園のある復活教会の周りにはたくさんの樹木があり、季節を間近に感じることができる。園庭のほぼ真ん中に大きなイチ
ョウとトチの木が2本ずつあるので真夏に大きな木陰を作ってくれる。あっ雨。木の下でちょっと雨宿り。雨が葉っぱにあたる。雨の量が増えると葉っぱの音が変わる「さっきと ちゃう(ちがう)な~」と3歳児。9月になるとトチの大きな実がドスン!っ
といった感じで落ちてくる。今年初めてトチの実を焼酎に付けておくと火傷に効く薬になると聞き作ってみた。試す機会はない
方が良いけど・・と思っていたら私が火傷をした。ばっちり効いた!
ザクロの実が割れてくると「せんせーい。ザクロとって~」ザクロの実をざくっと開けた時の子どもたちの表情はまるで宝石を
見つけたよう。秋も深まり風が吹くと葉っぱと踊る子どもたちの歓声。風~歓声~風~歓声。そして落ち葉が園庭を敷き詰める。
葉が全部落ちる頃は赤ちゃんが駆けて行って転ぶと埋まってしまうほどに。木々の鼓動が聞こえてくるこの園庭が私も大好きだ。
浄福寺幼稚園 菅原 好章
毎年、秋になると園庭にあるイチョウの木が綺麗に紅葉し、やがて落葉していきます。子どもたちはイチョウの落ち葉を使っての「イチョウのブーケ作り」に夢中です。拾ったイチョウの葉を綺麗にそろえて、折り紙やリボンを使ってブーケにしていきます。「誰にプレゼントするの?」と聞くと、「お友達にあげるよ。」「お父さん、お母さんにあげるよ。」と満面の笑みで答えてくれます。きっとプレゼントをあげて、お友達やご両親が喜ぶ姿を思い浮かべているのでしょう。
このように遊びの中で自然とふれあい、お友達と心をかよわせる。そんな日々を送ることで、子どもたちは感性を磨き成長しています。今年も残すところ1カ月となりました。子どもたちにとって、良い1年のしめくくりになりますよう心より願っています。
ふたば幼稚園 小林一惠
不思議で楽しい出来事は、その場面において共に共感出来、一人一人の園児の驚き
を得られる最高のチャンス(機会)だと思う。
幼児期の子どもの成長発達は思っている以上に創造性に富み、また、好奇心の芽生えの豊かさなど、教育は、常に園児から勉強出来る幸せを得ています。
毎月行われる、全園児参加のお誕生日会。
その中で、一年に一度だけ行う出し物「マジック」でのひと時を紹介します。それは園児にとってとても不思議な出来事。絵本に魔法をかけると…突然、挿絵に描かれているたくさんの美味しい飴が絵本から飛び出してきます。平静の中から突然、園児達の歓声!不思議さと驚きが入り混じり興奮したような動作が生まれてきました。
このマジックを通して子ども達の目の輝き、身体を通しての喜び、各々違った表情など年齢によって受ける印象は違うが、これ程興奮し、内容について吟味し合う姿から、思考力と好奇心の芽生えが創られる行事への喜び、そして、素晴らしい子どもの世界から色々な知恵を授かる事が出来た喜びを味わいました。
東日本大震災から三年半以上の時がたちました。風化させてはいけないと思いながら、今はその誓いを忘れている自分がいます。そうした中、被災者の実体験を基に番組を制作した放送局の方とお話する機会がありました。被災地では「亡き人が枕元に現れた」とか「声を聞いた」という不思議な現象が続出しているそうです。
目に見える事実だけでなく、こうした見えない事実もきちんと報道すべきではないか。彼は「いのち」の存在を身近に感じた人たちのかけがえのない肉声をありのまま報道することこそ、被災者の心情を伝えることになると考えたといいます。
幼稚園の日常の中でも、「いのち」の存在に気づかされることがたくさんあります。運動会で全力を出しきったときの笑顔は輝いています。「いのち」は具体的な形としては見えないけれど、子どもたちの一生懸命な姿に触れたとき、小さな身体に「いのち」が宿り躍動していることを実感します。その輝く瞬間を大切に見守っていきたいと思います。
「せんせい。ピアノひいて」「こんどのうたはなーに?」保育室に足を運ぶと子ども達が声を掛けてくれます。4月から“うたのじかん”を担当しています。昨年度から園長となり、まだまだ新米で慣れない事ばかりですが、出来るだけ子ども達と近い距離でいたい願いや、共に楽しめる事はないかしら?と考えた上、先生方に提案しました。
毎月1曲、学年に相応しい歌を紹介しに出かけます。歌は先生からのリクエストもありますし、クラスの子ども達の顔を思い浮かべながら選んだこともありました。
うたのじかんは“歌を伝える”時間です。歌うことは大好きですが、音をうまく取れなかったり、歌詞を忘れたり、歌の世界が十分に伝えられなかったり・・反省しきりです。でも“伝える”とイメージすると、少し私の心は楽になり、「さあ、どんな風に伝えようか?」とワクワクした気持ちになるのです。
伝える方法は様々です。音の高低を手で表して表現したり、お話を語ってから歌い始めたり、絵を描いて、それを見ながら言葉をイメージ出来るようにしてみました。(実は覚えきれなかった歌詞がその裏に隠れていました。)
どの学年も、なかなかみんな真剣に聴いてくれます。振りの付いた歌の時、あまりの子ども達の熱演に伝えている私が感激し、拍手を送ったほどでした。
伝えた後は、クラスの先生にお任せし、日々の保育で歌っていきます。各クラスから、その歌が聞こえたり、(雨の日に)「はれろごま!」(♪はやくてんきにナーレより)と子ども達から言葉が出てくると、「出てきた!出てきた!」と嬉しくなります。
さあ2学期のスタート。これからどんな歌を紹介しようかしら?新しい歌との出会いを、子ども達とともに楽しみたいと思います。
恵みの雨をたくさん受けて,畑の野菜やお花が大きく成長しています。
なかなか本格的な手入れは行き届いていませんが,それでも野菜はできるものですね。
今年は青しそを植えてみました。
独特の香りがあるにも関わらず、うどんパーティーの薬味では大人気でした。
どんどんふえるしその葉を登降園時にちょっとつまんでいく子ども達。顔をしかめながら食べています。
また枝豆もぷくぷくと膨れてきました。目に見える成長に子ども達も興味津々です。
枝豆ってどうやって摘むのでしょうか・・収穫の日が楽しみです。キュウリはトゲトゲでチクチクしていて触るととても痛くなかなか収穫できませんでした。
プチトマトも強く握るとつぶれてしまいます。そおっとそおっと・・・つまんでみました。加減を知るってこんなところから学んでいくのかも知れませんね。
梅雨が明けると本格的な夏がやってきます。暑い夏,節電の夏です。夏の太陽はきらきらと輝く子どもの笑顔のようです。暑さと上手く仲良くつきあっていきたいものです。
雨の季節、園庭から流れ出た水が、小さな川となって幼稚園の門を横切るように流れます。
「園長先生、おはよう!」
元気良く水しぶきを立てて入っていく子、川をよいしょっと飛び越える子、
傘に長靴、レインコート、憂鬱に感じられる雨も子どもにとってはわくわく楽しい朝です。
でも雨が上がって地面が乾き、川だった所だけが黒い帯のように残っているとき、
時々、その前で立ち止まってしまう子どもがいます。
白い地面に黒い帯、それが深い地面の裂け目のように感じる子どももいるのです。
「早よ、来よし」
さっさと園庭に入っていったお母さんも、振り返って不安そうな子どもの様子に気が付きます。
手を伸ばしたお母さんの手を握って、よいしょっと飛び越えて、ほっとした子どもの笑顔。
なんでもないと思えることでも、子どもには大きな一歩、たくさん愛してもらって子どもたちは今日も輝いています。