輝く瞬間

【輝く瞬間】 2022年 4月

さつき幼稚園 園長 堀内清志

 園庭での自由遊びの時間が来ると、仕事を放りだし、園庭に一歩を踏み出す。職員室にいては聞こえない園児の元気な声が飛び込んでくる。所狭しと思い思いの遊びに興じて走り回っている。一通り見て回る。途中で捉まって遊びの中に入ってしまうこともよくある。

 園長先生見て見て「縄跳び出来るようになったよ」「鉄棒出来るようになったよ」。園児たちは自分が頑張って出来るようになったのを今見て欲しいと私を引っ張りまわす。その一瞬一瞬の私を見る園児たちの瞳が輝いている。砂場の縁に腰を下ろそうものなら、私の周りには料理がいっぱい届く。「ありがとう。もうお腹いっぱいだからコーヒーをお願いしようかな」と 幸せの一瞬である。

 朝の日課である玄関のお迎え、まれに立てない時がある。園長先生がいないと言って泣く園児がいる。翌朝私を見つけると目を輝かして、駆け寄ってくる。「園長先生私髪切ったの」「可愛くなったよ」「園長先生、今日帰ったらおばあちゃんちに行くの」「 それは楽しみだね 」。この会話の時の瞳の輝きも好きである。現場は私にとって輝きの宝庫である。

【輝く瞬間】 2022年 3月

竹の里幼稚園 園長 榎谷美幸

  三学期になり、オミクロン株が拡大し、あちこちで、休園、学級閉鎖の声が聞こえる中、様々な行事が縮小され、子どもたちだけで楽しむというスタイルに変化してきています。そんな三学期の行事のひとつである〝絵画展〞本来は保護者と共に鑑賞して頂くのですが、今年度は子どもたちと先生で鑑賞会をしました。

 満三歳児から年長さんまで、各クラスのカラーが存分に発揮された作品がたくさん並ぶ中、作品を見ながら満三歳児の子どもたちがお友だち同士で話しているのをそっと聞いてみました。「次はバッジの色が変わるね〜。」「大きくなったら、○○組さんみたいなペンギンさん描くのかな〜?」と今から一つ大きくなることへの期待と嬉しさ、そして楽しみに待つ様子が微笑ましく映った瞬間でした。

今年もそんな時期になったのかと思うと、早く日常が戻り、子どもたちが存分に楽しめる環境が戻って来ることを願うばかりです。

【輝く瞬間】 2022年 2月

北白川幼稚園園長 山下太郎

 私は年長児に蕪村や芭蕉の俳句を教えています。ある年のこと、雪の降り積もった日にAちゃんがたくさん「俳句」を作ってきました。その中に「いやだなあ」で始まる句がありました。次の七文字は「もうすぐ終わる」と続きます。私はここで園児全員の顔を見て尋ねました、「最後の五文字は何だと思う?」と。すると、申し合わせたように、「ようちえん!!」と返事が返ってきたのには驚かされました。屈託のない子どもたちの顔を見ていると、日ごろは人生や将来について難しいことは何も考えていないかに見えますが、この時期の年長児たちの思いはみな一つなのでしょう。幼稚園は楽しい、でも、いつまでも幼稚園児ではいられない。これは、年長児を持つ保護者の思いとも重なるように思われます。卒園式の後、こんな「俳句」をもらったことがあります。「悲しかった 園にさよなら またいくよ」。卒園式までの残りの一日一日を大切に過ごしていきたいと思うこの頃です。

【輝く瞬間】 2022年 1月

今宮幼稚園 園長 岸 省子

 めだかを飼うことになった。昨今のコロナ下で大きな行事は無くなり、縮こまってしまう日々のある日、めだかが数匹やって来た。
 水槽を見つめる子どもたちの目の前でめだか達はそれはそれはスイスイ泳ぎ回り、せわしなげにヒレを動かしている。何か影や動きに反応してめだかは瞬間移動をくりかえしていた。もっと近くでみてほしいと「信楽」に出かけ直径50cm程の「めだか鉢」を手に入れた。その中には「川底石、藻、浮草」なども入れてみた。丸い鉢をぐるりと囲みのぞき込み、子どもたちがつぶやく「ちょっとずつみんな違うね」「背中きれいに光ってるよ」「パクッと餌食べてる」「さわっちゃだめ、そおっと見るだけ」丸い鉢をぐるり囲みのぞき込む姿、この風景どこかで見た。ある実業家が大金を出して宇宙船の窓から地球を見ている姿と重なってしまう。夢をかなえ宇宙に出かけ地球への愛を語っている。地球を大切に自分の出来る事をしていこうと。子どもたちは丸い窓の中に繰り広げられる平和なめだかの学校を見つめながら、「みんな仲良くしようね」「きれいなお水にしてあげようね」友だちと思いを共有し、大切なものを守り抜く事を誓っている姿に期待する瞬間です。

【輝く瞬間】 2021年 12月

八条幼稚園 園長 中浦正音

 お誕生日会に、くすのきしげのりさんの「あったかいな」という絵本を読んだ。「いのちって あったかいね」で終わるこの本
が大好きだ。数日後の朝の徒歩通園。手をつなぐAちゃんが「園長先生の手あったかいね」と言い、私が「Aちゃんと手をつなぐともっと暖かくなったよ」と答えた。それを聞いていたBちゃんが「生きているからやでー」。私は身体全体がホカホカになった。しばらく歩きながら、子どもの頃母と雪だるまを作った日の事が思い出された。冷たくなった手に母が手を重ねて暖めてくれた原体験。同時にAちゃんやBちゃんが素敵なお父さんやお母さんに成長して子どもと手をつなぐ日が来るんだろうなぁ、と想像した。今Aちゃんと繋ぐ手と手の間には過去のぬくもりと未来の希望が包まれていた。寒いけれど朝の日の澄んだ光に包まれている、輝く瞬間だった。

【輝く瞬間】 2021年 11月

光明幼稚園園長 田中 康雄

 十一月上旬、預かり保育の帰り道は五時三〇分頃、年少の男の子が「あれ?」とある事に気付きました。「なんでもう夜になってる?」その男の子は、以前はまだまだ外で元気に遊んでいた明るい時間のはずなのに、真っ暗になっている事に気付き、不思議そうに頭をひねりました。「もうすぐ冬やからやな」とはお迎えの父の言葉。「?」「冬は夜が長くなんねん」

「夏は?」「夏はまだ五時半は明るい」「ふーん。年中さんになったら、もう一回夏が来るから、大丈夫やんな」

 男の子の不安の入り混じった、自分の知っている知識を自分に言い聞かせるような声の調子がとても印象的でした。短くなる日照時間に気付く感性、夜を怖いと感じる情緒、知識と生活の中での実感の結び付き、そしてその体験を共有する親子の会話。日常の一瞬を切り取った濃密な場に居合わせた幸せを感じられた一日でした。

【輝く瞬間】 2021年 10月

桃山幼稚園園長 三木 賀子

  『新たな出会い』
 朝、門の前で年少の子どもが「これなあに?」と一、五㎝ほどの緑の実を持って登園してきました。すぐそこで拾ったとのこと。
「なんだろうね?」と園では不明。私にとっても初めての出会いでした。暫くすると門の周辺に沢山落ち、中からアーモンドのような種が飛び出し、落下の様子に変化がみられました。雨、風の後は繊維のある皮が道路にくっついて大変です。ようやく萱かやの実であることが判明。隣接する御香宮の大木からの季節の便りでした。樹は将棋盤になるほど強く、実は食用になり、油をとって使用することもあることが分かりました。聞いてきた子どもには遅ればせながら正解を伝え、高い樹を一
緒に見上げました。

 日々教えることに勤しむ私たちですが、実は知らない事がいっぱいです。新たな知識との出会いで心躍ることは、子ども達の姿や心を見る目を養う源となるのではと感じる出来事でした。

【輝く瞬間】 2021年 9月

アヴェ・マリア幼稚園園長 松永 昌子

 コロナ禍で、園外保育に行く場所も限られる中、きれいに手入れされた広々とした芝生のある場所に行くことが出来ました。
 子ども達は、フカフカの芝生の上を走りまわって遊んでいました。一人の男の子が
「こんな所に落とし穴があるよ」と大きな声で教えてくれたので、みんなが周りに集まりました。子ども達の膝ぐらいの深さの穴でした。
 すぐにそれは、数年前、近畿地方に大きな被害が出た台風の時に倒れた木の跡と分かりました。その話をするとみんな木の事を思い、しんみりと静かになりました。
 すると穴を見つけた子が「僕がその木の代わりに立っててあげよう」と両手を頭の上に挙げて、劇中の木のように立ってくれたのです。皆でその姿に大笑いをしました。
このようにして、ウエットに富んだ優しい心は育っていくんだなあと、嬉しい気持ちになりました。

 

【輝く瞬間】 2021年 7月

光華幼稚園園長 西野夕子

 梅雨の晴れ間から真夏を思わせる日が続いています。「先生!見て、見て!」と砂場でお山作りをしていた子どもたち。2つある山をつなげようと、道を作ってバケツに汲んだ水を年長組さんが流した瞬間、すぐ隣りで遊んでいた年少組さんが「うわ~!」と声を上げ、にっこり笑顔いっぱいに!一緒になって「ぐにゅぐにゅ」と、水と砂を混ぜ始め、夢中になっていきました。

ちょっぴりお母さんに会いたくなっていた年少組のAちゃんも少しずつ近づいてきて、砂や水を触って、はしゃいで笑顔いっぱいになりました。年長組さんの真似をしたり、教えてもらったり、また一緒に遊ぶ中で知っていくことがあります。異年齢の子どもたちが一緒だから楽しいことがたくさんあります。新型コロナウイルス感染予防の為、いろいろな対策は必要となりますが、子どもたちの「やってみたい!」という「わくわく感」を大切に、夢中になって遊び込める環境作りをしていきたいと思います。

【輝く瞬間】 2021年 6月

京都幼稚園 松田幸恵

 少しずつ園生活に慣れてきた五月。年少組のクラスに入ると、「先生、私、今日給食ぜーんぶ食べたよ。」と、誇らしそうな女児。また別のクラスに入ると「ぼく、着替えができて、ボタンも全部自分でとめられた!」とにこにこ笑顔の男児。この間まで、「食べたくない。」「できない。」と言っていた二人は、そこにはいませんでした。

 「食べようね。」「やってみようね。」ではなく、自分で「食べてみたい。」「やってみたい。」そう思った時の子どもたちの進む力の大きさは、びっくりするものがあります。
幼稚園という集団の中で得られる力の大きさも感じます。一つできた自信は、次に踏み出す勇気にもつながるでしょう。自分から表現することが苦手な子もいますが、形は違えど、どの子ももっている好奇心や、やってみたいという意欲を引き出し、支えられるような教師でありたいと思います。

 日々の中に、一人ひとりの積み重なっていく成長の瞬間があります。そんな瞬間を一緒に喜び合い、かけがえのない今日を、子どもたちと共に過ごしていきたいと思います。