新連載

「教育実習における学び」 3回シリーズ(2)

「教育実習における学び」

稲垣 実果

 教育実習は保育・教育の現場に赴き、子どもとの触れ合いのなかで自らの心と身体を使い、能動的・積極的に学ぶ実践的な体験です。私はこの数年、養成校での実習授業を担当致しております。実習に臨むにあたり、学生は初めのうちは緊張・戸惑いの連続ですが、子どもたちの育ちや豊かな発想に対する驚きや、現場の先生方の子どもたちに対する深い配慮を目の当たりにし、保育・教育の奥深さ・面白さを感じるとともに職務の重さ・尊さについても体感するようです。

 実習は、実習生にとって学内で学んだ知識を実習の場で実践する場ではありますが、子どもと遊ぶ、絵本を読む、歌唱指導をするなど一つひとつのことがうまくいかず、子どもたちの反応も想定外のことばかりです。しかし、現場の先生方のご指導を受け、自分の保育を振り返り改善の努力を行うと、子どもたちの反応が変わり、そのことでわずかながらも自身の成長を感じ、今後の糧になるというとても貴重な経験をさせていただいております。ある学生は、実習の事後報告で以下のように報告してくれました。「前回の実習では部分実習の手遊び・絵本の読み聞かせをさせていただき、その時は手遊びをしているとき、一部分しかみられていなかったり、自分と子どもたちのしている手遊びが違い、止まってもう一度はじめからやり直したり、絵本を読む声が小さかったり・・・中略・・・季節感を見落としていました。今回はその反省を活かし、声を大きくすることを心がけたり、全体を見渡したり、アクセントをつけたり、自分の気持ちを変えてみたり、絵本も季節感を考えて選びました。反省会のときに先生方から私の表情に“楽しい絵本を読むよ”という雰囲気が表れていて、子ども自身も興味が沸き、絵本に集中できていたと言っていただきました。これからもたくさんの経験をつんで、自分の力を磨いていこうと思いました。」

 このように学生は実習における日々の実践のなかで、はじめて気づいたこと・予測しなかったことなどから自身が一方的な思いで行っていた関わりを見直し、新たな課題を設定し、今後の学びにつなげていくということを繰り返しながら少しずつ実践力を培っているのではないかと思います。

 積極的、能動的に学ぶ姿勢というものは、大学内における講義等の学習だけではなかなか身につきません。実際に、子どもたちの豊かな反応や現場の先生方の保育に直接触れることで自身の課題に気付き、それを乗り越えるという実習での体験が不可欠であると思います。またそのような経験を重ねることで、「未来の保育者・教育者としての自覚」の芽生えがみられ、実習後大きく成長を遂げる学生も少なくありません。実習に多大なご協力を頂いている現場の先生方に心から感謝申し上げますとともに、養成校におきましても成長過程にある学生の学びを支えるような実習指導の実現に努めてまいりたいと思っております。