新連載

「本学における実習指導のありかた」 3回シリーズ(3)

「本学における実習指導のありかた」

稲垣 実果

 教育実習を進めるにあたり、実習指導は不可欠です。本学では、二年生前期・後期を通して週1回90分の時間を設け、現場実習(6月に10日間、9月に10日間)の事前指導、事後指導を中心に実施しております。実習指導の内容は大きく分けて三点ございます。

 一つ目は実習の事前指導です。授業形態としては、講義及び視聴覚教材を用い、実際に実習を行うための知識を獲得するのみでなく、実習に臨む自身の目的や課題を明確にすることにも重点をおいて指導を行っております。内容の詳細は、

①教育実習の意義・目的の理解
②教育実習の心構え
③実習園の理解(実習園調べ)
④実習に向けての抱負と課題の整理、実習園とのオリエンテーションのもちかたについて
⑤実習記録の記録方法・意義について
⑥実習訪問担当教員による実習直前指導(実習に向けての準備事項の確認、実習中のマナーについての再確認)

となっております。さらに以上の内容の他に、教育現場の教職員を講師として招き、実習生としての態度や保育の奥深さ・楽しさなどを含め、講演をいただく機会も設けております。また、実習に対する不安が強い学生や目的意識が希薄に見える学生に対しては、実習担当者による個別面談を数回行い、個別の事情に応じて対応しております。

 二つ目は実習中の指導です。実習中の指導は訪問担当教員の訪問による指導が主となります。実習園の実習指導担当者の先生方との連携をもとに、実習生への助言・指導を行っております。指導に関しては個々の学生の実習状況により、訪問後の実習がより良いものになるよう、自身の実習における態度の振り返りを促し、改善方法について具体的に指導を行うよう配慮いたしております。訪問担当教員は、実習園訪問後に学生の様子や指導の内容等を記録した報告書を作成し、事後の指導や学内の教員の共通理解に役立てております。

 三つ目は実習の事後指導です。事後指導においては、訪問担当教員による実習の総括や実習記録の確認および実習反省会を行い、自身の今後の新たな課題の設定に向けて学習目標を明確にすることに重点を置いています。さらに、それぞれの学生が様々な実習園で実習を行った経験を互いに報告しあうことができるよう、グループでの意見交換も行います。さらに、キャリア教育も含めた事後指導を行い、学生の実習体験を深め、更なる成長につながるための指導を心がけております。

 以上のように、実習指導においては、学生一人ひとりが実習を通して自分を見つめ、保育者・教育者としての可能性を拡げることができるように、段階に応じた指導を行うよう努めております。もちろん、実習指導の授業のみでなく、本学では全ての専門科目において、保育者・教育者に必要な資質・能力を育成することを目的のひとつとしています。教育現場での実習を経験し、精一杯の力で臨んだ学生は、その後、大学の学習に対する態度にも変化がみられます。そして、授業内での発言も、少しずつ幅広く奥深いものになってきます。このような学生の成長のために貴重な機会を頂戴いたしております実習協力園の先生方には、心より深く感謝申し上げます。それと同時に我々養成校の教員も、学生を実習へ送り出し、実習後現場へつなげるための指導について、より一層の努力を行うことの責任を強く感じております。