新連載

「龍短における幼稚園教員の養成2 学生たちの学び(1)」 4回シリーズ(2)

龍短における幼稚園教員の養成2 学生たちの学び(1)」

龍谷大学短期大学部 准教授 森 久佳

  

 前回お知らせしたように、今回は、幼稚園で観察実習(1週間)を終えた本学の学生たちの学びの様子を報告させていただきます。

 今年(2012年)の3月に実習を終えた学生たちに、事後指導の一環として、「幼稚園教諭の仕事」についてのマップ(地図)を書いてもらいました。私の方から、「幼稚園教諭の仕事」と中心に記されたA3用紙を学生一人ずつに配布し、「幼稚園教諭の仕事(活動・業務)として、実習を通して自分が観察したり経験したりしたことを、思いつく限り列挙し、関連づける」、「観察実習で行ったことを思い出して描く(書く)」、「真ん中にある『幼稚園教諭の仕事』から、派生させたり関連させたりしながら、自由に描く(書く)」という指示をしてマップを作成してもらい、その後、自身のマップを見て各自が気付いたことをワークシートに書いてもらいました。ここでは、その一部を紹介いたします。

 まず、ほとんどの学生たちは、マップを描くことによって、幼稚園教諭の仕事(業務)が膨大であること、また、それらが断片的ではなく相互にかつ複雑に絡み合い関わり合っていることに気付いたようでした。加えて、これらの仕事(業務)はすべて子どものことと(程度の差はあれ)関連していること、それゆえに、責任を伴うものであることを学んだ(もしくは再確認できた)、という学生が多かったようです。これらの点は、例えば、「一つの物事からいろいろなことが派生していて、何らかのつながりがある…(中略)…教師の仕事は、子どもたちと関わることだけではなくて、その周りの環境に配慮したり、教師同士で会議などで行っていたコミュニケーションをとったりと、とても広い…(中略)…一見つながりのないものだと思っても、派生していたものをたどっていくとつながりがあって深いなと感じました」、「実習中には深く考えていなかったところを、今回改めて書くことで、これはどうなんだろうと思うところがたくさんありました。また、全く関連していなさそうなものが意外と関係していたりして、発見することもたくさんありました。…(中略)…教師の仕事というものは、事務的なことよりも人間関係や子どもたちの援助や支援の方が大きいと感じ、保育者を目指すにあたってどういうことをすればよいのかということが見えてくるのではないかと思いました」という学生のコメントに見受けられます。

 さらに興味深いコメントとして、次のものも紹介したいと思います。「(教師の仕事は)本当に終わりがないということをマップにしてみてとても感じました。この仕事はここまできたら終わりといった印もなく、むしろ他になにをしていったらよりよくなるだろう、自分がまだ気づいていなかった点も他の人と話すことからまだまだあるということ、など、することがだんだん増えていくこと、増やしていけることによってよりよい仕事になっていく職業だと感じました。視点も一つではなく、親目線、子ども目線、先生目線などさまざまなことを全て含めて考えて行動していく仕事だと思いました」。これは、まさに学び続ける専門家としての教師像の一端を把握している現れとも言えるでしょう。1週間という短い期間であっても、学生たちは仕事(業務)という視点から幼稚園教諭に関する振り返り(省察)を行った結果、教師の専門性という観点にまでつながる知見を学ぶことができたようです。こうした学生たちの学びや気付きについては、次回でも紹介したいと思います。