新連載

「龍短における幼稚園教員の養成2 学生たちの学び(2)」 4回シリーズ(3)

「龍短における幼稚園教員の養成2 学生たちの学び(2)」

龍谷大学短期大学部 准教授 森 久佳

  

 前回、学生たちに、事後指導の一環として、「幼稚園教諭の仕事」についてのマップ(地図)を描いてもらったことを報告しました。今回は、その次の段階の活動について報告します。

 まず、3人でグループを作ってもらい、自分たちが描いたマップをグループの他のメンバーに説明して質疑応答する、という作業をしてもらいました。次に、各自のマップに関する説明および質疑応答を終えた後、グループで話し合った上で、幼稚園教諭に求められる力として3つ(「~力」として表記する)、そして、それらの力は、どのようにして育成することができるか、ということをワークシートに書くことでまとめてもらいました。

この作業を通して出てきた「~力」及びその育成方法は、グループによってさまざまでした。例えば、「環境整備力・声掛け力・観察力」の3つを挙げたグループもあれば、「体力・精神力・理解力」、「まとめる力・見守る力・想像力」、「発信力・発想力・発見力」、などを挙げたグループもありました。その中で、挙げた力の3つともが一致するグループはありませんでした。

 しかし、その一方で、注目すべき共通点もありました。それは、「コミュニケーション力」です。この力を3つのうちの1つとして挙げたグループは、実に半数を超えていました。また、その力の育成方法に関する記述の中で目立っていたのが、「積極的(自発的)」という表現でした。若者のコミュニケーション不足や積極性の欠如ないし消極性が叫ばれて久しいですが、実習に臨む学生に対しても、そうした問題や課題を現場の先生方からご指摘を受けることも少なくありません。もちろん、養成校の教員である我々もそのことは十分に意識したうえで、日々教育活動に携わっているのですが、実習を経験した学生自身もやはり、そのことは痛感するようです。だからこそ、そうした力を育成するための方策も、学生たちは自分たちなりに真剣に考えたようです。

 ただ、言葉では同じ「積極的(自発的)」ですが、その意味はグループによって多様でした。例えば次のような感じです(以下、引用文中の“ ”は私(森)による挿入です)。「グループワークに“積極的”に取り組む。」、「自分から他人と“積極的”に関わっていく。」、「“積極的”に行動する。挑戦していく。」、「“積極的”に自分の意志を伝える。」、「“積極的”に困っている人を助ける。」、「“自発的”に人と関わる。」、「子どもとたくさん“積極的”に関わる(話す、遊ぶ、性格を知る、etc.)。」…。これだけ多彩なのは、実習で自分自身が体験・経験したことの内容が反映されたからだと考えられます。

 加えて、「コミュニケーション力」一つとっても、これは普段の日常生活での心がけや行動を通して育成することが可能だ、という点に学生たちは(多かれ少なかれ)気づいたようでした。この点を、私自身は何よりも重要なことだと感じました。大学における学びも大切ですが、その大学生活は、日常生活という大きな括り(枠組み)の一部でもあります。そう考えると、大学での生活態度のみに気を配れば事足りるわけではなく、普段の生活全般を通して、自分なりに目的意識をもって行動することが、何よりも大事になります。こうしたことを、今回だけでなく、今後の事後指導を通して学生たちにより一層感じて欲しいと願っています。