新連載

「龍短における幼稚園教員の養成4」 4回シリーズ(4)

「龍短における幼稚園教員の養成4」

龍谷大学短期大学部 准教授 森 久佳

  

 1回目の連載でも紹介しましたように、昨年度設立された本学のこども教育学科は、今年度、初めての卒業生を送り出します。四年制大学に併設されている短期大学ということもあり、編入する学生たちの割合も少なくないですが、それでもやはり、保育職(幼稚園教諭、保育士)に就くことを希望する学生の割合が最も高いです。

 こうした保育職への就職を希望する本学科の学生たちは、現在、就職活動に日々取り組んでいるところですが、これまで保育士ないし幼稚園教諭のいずれかで内定を得た学生たちの大まかな内訳をみると、保育士と幼稚園教諭の割合が、およそ3:1だそうです(もちろん、これはあくまで現時点(11月)のことであり、確定した状況ではありません。今なお、就職活動中の学生も少なからずいます)。今年(2012年)の5月に開催された「幼稚園教員養成大学と(社)京都市私立幼稚園教会との交流懇談会」に参加させていただいた際に、幼稚園教諭よりも保育士を志望する学生が非常に多いといった旨のご意見を、多々耳にしましたが、そのことは、本学科でも例外ではなかったようです。

 しかし、少なくとも私の目から見た場合ですが、幼稚園教諭の道を選んだ学生たちは、安易に妥協したり、いい加減な気持ちで取り組んだりして進路を選択したわけでなく、実習等で得た経験や学びを通して、主体的に幼稚園教諭という道を選んだ感じを受けます(これは、他の進路を選んだ学生に対しても当てはまりますが)。例えば、先月(10月)に3週間の教育実習(幼稚園)を終えてきた学生たちの中には、そこでの経験から、幼稚園教諭を明確な進路として選択した者もいました。また、ありがたいことに、実習した幼稚園に就職が決まった学生もいました。割合としては、保育士を志望する学生よりも少ないかもしれませんが、幼稚園教諭を志望する学生たちの志や情熱は高い状態にあると思われます。そして、養成大学としては、そうした学生を一人でも多く育てて送り出すことが最大の使命だと感じています。

 ただ、私自身は、むしろ学生たちからいろいろと学ばせてもらっている立場でもあります。特に、実習を終えた学生たちからは、非常に逞しくなった様子をひしひしと感じます。先日も、これまでの実習を振り返る演習授業の中で、グループ活動をしている学生たちの様子を見ていると、自分たちがこれまで行ってきた大学や実習先での学びの経験を踏まえながら、他の学生たちと「語り合う」「聴き合う」といった活動を自主的に行っていました。そして、それぞれが実習中に課題だと感じた経験について、グループ内で共有し、その上で、その場で考えられうる解決策を「探究」するといった、非常に水準の高い学びを展開していました。いわば、「語りと探究のコミュニティ(共同体)」を形成していたと言えます。この点は、私も見習わなければと強く感じました。
こうしたさまざまな潜在力(ポテンシャル)を秘めた学生たち個々の力を削ぐことなく、少しでも高みに向かってレベルアップできるよう、ささやかながらでも手助けすることが、養成校の教員としての責務であり、楽しみでもあると痛感しています。

 さて、9月から連載させていただいた本稿も、今回が最終回となります。これまで、本学の方針や学生の学び、進路の様子を中心に紹介させていただきました。このような機会を与えていただいたことに、心より御礼申し上げます。そして、これからも、みなさまからご指導いただきながら、日々精進し、本学への教育活動に活かしていきたいと考えております。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。