新連載

「公益社団法人への移行にあたって」 2回シリーズ(2)

公益社団法人への移行にあたって

公認会計士・税理士 木田 稔
(監査法人グラヴィタス代表社員)

 今春の貴協会の公益社団法人への移行にあたり、二回にわたり原稿を寄稿させていただく機会を頂戴しております。前回は、貴協会の公益目的事業である幼児教育等の調査・研究事業、助成事業、教育研修事業の実施上の留意点についてご説明させていただきました。公益法人は一般法人と比較して社会的評価がより高く、また税制上の優遇を受けることとなります。その一方、公益認定基準を永続的に満たすことが求められます。今回は、公益法人の業務運営のうち「財務状況に関する事項」と「法人の機関運営」についての留意点をご説明いたします。

 財務状況に関する事項
 経理的基礎の確保について

 公益法人は、移行後も継続的に公益事業を行うための財政基盤に問題がないようにする必要があります。貴協会におかれましても会費収入等や受取補助金の今後の見通しについて予算等で把握し、これに基づく支出の管理をおこなう必要があるかと存じます。また、会計処理や財産管理、計算書類等の作成について適正に行う必要があります。これらを公益法人認定基準では「経理的基礎」と呼んでいます。

 財務3要件について

また、少し専門的にはなりますが、公益法人移行後は原則として毎年の決算において、以下の財務3要件への適合が求められます。

  1. 収支相償
     公益目的事業に係る収入がその実施に要する費用を超えない
  2. 公益目的事業比率
     公益目的事業の実施費用が法人全体費用の50/100以上となるように事業を行う
  3. 遊休財産額の保有制限
     公益目的事業のために使用されていない財産(遊休財産)が公益目的事業費相当額(1年分)を超過することができない

 事業計画を立案・実行するにあたっては、これらの財務3要件を充足することについても配慮する必要があります。

法人の機関運営に関する事項

 貴協会の運営(ガバナンス)について適切に指揮されることが必要となります。特に、重要な意思決定事項について、適切な手続きを経て行われることが求められ、少なくとも、社員総会、理事会といった法令・定款で定められた機関を適切に招集・開催し、議案が審議されることになります。同様に貴法人が法人内部に設置する各種委員会等の機関組織についても、適切に開催・運営される必要があります。

 ご説明いたしました公益目的事業、ならびに財務および機関運営に関する事項は、貴協会が社会から要請されている公益事業を効率的、効果的、経済的、かつ、継続的に実施することを担保する事項とされ、また同時に、経営の透明性の確保することにより、社会全体の公益が増進することを期待するものであります。

 各幼稚園の理事長、園長をはじめとする教職員の先生方は、子どもたちに対して日々真摯に向き合い、愛情を注ぎ、幼児教育の発展に貢献されてこられたことと存じます。貴協会におかれましても、開かれた経営のもと、その愛情や情熱を基礎として今後の支援活動や情報発信を行い、幼児教育を通じた社会一般の公益に寄与することが求められているのではないでしょうか。

 末筆となりましたが、今後の貴協会ならびに皆様の幼稚園のますますのご清栄を祈念いたしております。