新連載

「歌やおはなしによる新鮮な喜び」3 回シリーズ(2)

歌やおはなしによる新鮮な喜び

佛教大学 教育学部

 秋になると幼稚園ではこんな歌を歌います。

 ♪コスモスの 花が
 こんなに散りました
 模様のようね お母さん
 おくつで踏むのは かわいそう
 あちらの道から 回りましょう♪<br /
         (「コスモス」葛葉国子・詩、大中寅ニ・曲)

 幼児の感性で捉えたなんと素晴らしい新鮮な感動をもった歌でしょうか。

 秋の自然を歌った歌ですが、これはコスモスが咲いているのを知らせる歌でしょうか?

 コスモスの美しい色合いを気付かせる歌なのでしょうか?

 否、何より素晴らしいのは、散ってしまったコスモスの花にも命を見出し、おくつで踏むのは可哀そうと幼児の尊い心情を歌っているところで、ここを味わって欲しいのです。

 このコスモスの花の歌を歌って郊外に出かけたとしましょう。
 そんなとき、
 「咲いているコスモスは美しいけど、散ってしまうと汚いね。」
と、大人は平気で靴で踏んで行くのでしょうか?

 もしそのようなことならば、幼児の心の感動は育てられません。

 歌に寄せた感動が大切なのです。もし先生と一緒なら、
 「いい歌ね。先生にも教えて。」
と、幼児の口から出る歌を何回か口ずさんで、一緒に歌ってみることです。リズムがわからなくても、言葉を口ずさむだけで、幼児に感動は与えられます。

 幼児の心と身体を育むためには、この感動が大切なのです。

 感動するということは、あらゆる心や行動の源になっていることに気付いてください。

 幼児の感動を受け止め、更にそれを大きくして幼児に返す心配りが大切なのです。

 「いい歌ね。先生も大好きになってきたわ。」

「散っていったお花、かわいそうね。だから踏まないであっちの方から回って行きましょう。」と、二倍にも三倍にも返してあげてください。

 絵本や童話も同様です。

『うさぎのモコ』(神沢利子・著、渡辺洋ニ・画)というおはなしがあります。
“五月の空は まるできれいな青石をみがいたように つるつるしています。
野原にはみじかい草がはえ ところどころに 金色のたんぽぽが きらきらひかつています。
モコは ほどいてしまった毛糸のずぼんのかわりに きょうは 青いデニムのずぼんです。
風が モロの耳をふき まあるいしっぽをなでています。”

 美しい言葉と感動が溢れています。

 もし幼児が読んでいたら、「とてもきれいね。もう一度読んで聞かせて。」と、言って読んでいくうちに、幼児は言葉を再び耳に入れて、次の感動を心につくっていくのです。

 「まあ、きれいね。たんぽぽが光っているのね。」
と、その感動を広げていってください。

 自分の身の回りで感じ取っていく世界を先生が気にとめなかったら、幼児もすぐに忘れてしまいますが、こうして歌や絵本や童話などで作品化されますと、幼児に強い印象を残していきます。

 作者の気持ちに浸り、思いに寄り添いながら、新鮮な喜びをあたえるようにしたいものです