新連載

「保育者として大切にしたい〔愛しき情(こころ)〕」3回シリーズ(1)

「保育者として大切にしたい〔愛しき情(こころ)〕」

京都聖母女学院短期大学 児童教育学科
教授 河嶋 喜矩子

 保育者がかかわるのは乳幼児期の0歳から6歳迄の子ども達です。この乳幼児期とは、どんな時期なのでしょうか。そして、保育者としてどんなことを大切にしなければならないのでしょうか。

 乳幼児についての考え方はいろいろありますが、私は愛情の貯金をつくる時期ではないかと考えます。人間は誕生した時は、愛情の貯金はゼロ。心は空っぽの状態です。そして、この愛情の貯金は自分で作り出すことができません。保育者や両親など周りにいる大人達から〔愛しき情〕温かい心・優しい言葉をかけてもらうことで、はじめて心に愛情の貯金ができるのです。しかし、うれしいことに蓄えられた愛情の貯金は、その子どもが出逢う人達に必ず使われていくものなのです。

 では具体的にどうしたら愛情の貯金はつくられるのでしょうか?それは私達保育者・大人が一人ひとりの子どもに〔愛しき情〕をかけ、感情の共有体験をすることです。いっしょに遊んだり、いっしょに絵本をみたり、いっしょに食事を味わったりして、<楽しいなぁー楽しいねぇ><おもしろいなぁーおもしろいねぇ><うれしいなぁーうれしいねぇ><おいしいなぁーおいしいねぇ>と子どもと同じ気持ちになるトキを持つことです。この〔愛しき情〕=感情の共有体験を一人ひとりの子どもとたっぷりとかわしあうことで、子どもの心に愛情の貯金ができていくのです。この愛情の貯金は、その子どもの生きる力のタネになるもので、がんばる力やあきらめない心にもなるものでしょう。こう考えると、この〔愛しき情〕こそ、乳幼児期に私達保育者が大切にしなければならない心であると、私は声を大きくして言いたいと思います。学生のAさんが幼稚園の頃のエピソードを話してくれました。「苦手な鉄棒で何回も何回もがんばって、ようやく前まわりができた時、先生がすごく喜んで抱きしめてくれました。そのぬくもりを今でもはっきりと覚えています。とてもうれしかったし、その後の成長への意欲にもなっていました。」Aさんの先生の〔愛しき情〕がAさんの自信力と新たなことへのチャレンジ力を生む心のタネをつくったのではないでしょうか。

 また、幼稚園実習を終えた学生のBさんは「絵本のよみきかせをしたら、子ども達が目をキラキラ輝かせて聴いてくれて、とてもうれしかった。」といきいきと語ってくれました。学生のCさんは「子ども達から又きてねと言ってもらった。」と号泣していました。この涙は子ども達へかけた〔愛しき情〕の何倍もの心を子ども達からもらった喜び・うれしさの涙だと思います。「私、絶対保育者になる!」という彼女達の希望のもとになるものではないでしょうか。

 是非保育者として、子ども達の生きる力のタネになる愛情の貯金を、ありったけの〔愛しき情(こころ)〕で一人ひと
りの子どもの心に作ってあげてほしいと願っています。