新連載

「子どもと音楽」3回シリーズ(2)

【第2回】「リズムにのって動く~心も身体も動き出す」

京都教育大学
平井恭子

 前回は、歌の原点をさぐりながら、歌うこと、歌い合うことのすばらしさについてお話をしました。今回は、歌っているときの子どもの身体の動きに着目し、身体でリズムを感じ動くことの意味について考えてみたいと思います。幼稚園では、音楽に合わせて体操をしたりダンスを踊ったりする機会がたくさんありますが、聞こえてくる音楽のリズムに自らの身体の動きをコントロールして合わせることは、大人が考えるほど容易なことではありません。それでは、音楽に合わせて動く能力はいつからどのように獲得されていくのでしょうか?

身体が自然に動き出す

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 写真は、赤ちゃん(11カ月)とお姉ちゃん(2歳7カ月)の2人姉妹です。お姉ちゃんがが絵本に出てくる子猫の絵を見て「まいごのまいごの…」と「犬のおまわりさん」の歌を歌いはじめると、床に座っていた赤ちゃんがソファーにつかままり立ちし、身体を繰り返しバウンスしたり頭を上下に振りながら歌に合わせて動き始めました。

 このように、音楽のリズムに反応して身体が自然に動き出す行動は、世界中どの文化圏でも認められる現象で、発達の初期の段階から見られます。最近の研究から、赤ちゃんが自分の身体を動かすことがリズムの知覚に有効に働くことが分かっており、ちょうど音声模倣を始める9~10か月頃から、自ら積極的にリズムにのって身体を動かす姿が頻繁に見られるようになります。

手や足の動きが歌と同期しはじめる

 前例にみられるような0歳児の動きは、自然発生的かつ衝動的なものですが、1歳を過ぎると、親や保育者のする手遊びを見て、部分的に言葉を発しながらリズムに同調し始め、2歳から3歳頃にかけて歌いながら動きを再現する能力は飛躍的に発達します。動きの種類でいうと、手拍子や腕を振る動作は、比較的早くから歌と同期するようになります。一方、足の動き(歩く、走る、ジャンプなど)と歌の同期は、認知的な発達との関係から、歌と手の同期からは約1年から1年半遅れて可能になります。

歌いながら動く~心と身体の調和へ

 このように、流れてくる音楽に自らの動きを合わせ始めるずっと前から、子どもたちは積極的に自らの歌と動きを同期させ始めます。自分の声と身体の動きが一体となる心地よさを、生活や遊びの中で十分に味わうことは、音楽的感覚を養う上ではもちろん、心と身体を調和させていく意味で、とても重要です。幼稚園生活の中でも、いろいろなシーンの中で自らの声と動きを調和させる活動を十分に味わわせてあげたいものです。