新連載

「幼児らしく生きる」とは・・・・

「幼児らしく生きる」とは・・・・

京都文教短期大学  幼児教育学科
講師 白井 直美

 平成21年度から実施された現幼稚園教育要領は、今の、そしてこれから先の時代の変化を踏まえて改訂されたものです。子どもを取り巻く環境がどのように変化しようとも、幼稚園においては、幼児の生きる力をはぐくむためには、教育の不易と流行を見失うことなく幼稚園・家庭・地域が連携し合い、幼児期を幼児らしく生きることができる社会をつくることが必要です。そこで、「子ども・子育て支援新制度」が平成27年の春に本格スタートするこの時期にこそ、幼稚園教育要領を踏まえた「幼稚園教育の在り様」を再確認したいのです。

 子ども達が初めて出合う学校が幼稚園です。「幼稚園」は、安心して自分を発揮し、仲間との遊びに没頭することで自己を実現していく充実感と他者とつながることの喜びを存分に味わうことができる場であり、そうした体験が、人格形成の基礎を培い、これから先の人生を支え生きる力の土台となるのです。

 幼稚園では、幼児の生活や遊びといった直接的・具体的な体験を通して、人とかかわる力や思考力、感性や表現する力などをはぐくみ、人間として、社会とかかわる人として生きていくための基礎を培わなければなりません。幼稚園教育は、環境を通して行う教育であるということから、教師の果たす役割が大
変重要になってきます。一人ひとりの幼児に対する理解に基づき、環境を計画的に構成し、幼児の主体的な活動を直接援助すると同時に、教師自らも幼児にとって重要な環境の一つであるということです。

 幼稚園における保育とは、幼児自身が活動することを通して様々な経験を積み重ね、発達に必要なものを身に付けていけるように援助する営みです。教師は、幼児を理解することを保育の出発点とし、幼児がいま何に興味をもち、何を感じ、何を実現しようとしているのかをとらえて、発達に必要なものを身に付けていける豊かな学びとなるように援助することが重要です。

 そのため教師は、幼児の言動を表面的に理解するのではなく、肯定的に幼児一人ひとりのよさや可能性をとらえようとしてかかわることが必要となります。目の前に起こる活動の流れだけを追うのではなく、幼児の言動を周囲の状況や前後のつながりと関連付けて考えてみることで、幼児の心の動きや活動の意味が理解でき、豊かな学びにつながる援助ができるのです。そして、常に幼稚園生活が幼児期の発達を促す場としてふさわしいものになっているかどうかを振り返り、確かめ合うことが必要です。

 幼稚園で「幼児らしく生きる」とは、幼児自身が夢中になって遊び、その中で「出合い」「試み」「考え」「悩み」等々、時には「傷つき」それを乗り越えて「喜び」「楽しむ」という、まさに「生きる」基本にかかわる様々な経験をしているといえます。幼児がそうした日々を過ごしていくためには、教師自身も幼児の様々な思いを受け止め、いつも幼児と共にあり、共に感じ、幼児に学ぶ、そうした教師の在り様が求められます。

 「人が人を育てる」という保育(教育)の営みでは、悩みながらも幼児(学生)と真摯に向き合い、前向きに保育(教育)を進めていくことが大切なのではないでしょうか。