新連載

「子どもの遊びの充実」を願って・・・・

「幼児らしく生きる」とは・・・・

京都文教短期大学  幼児教育学科
講師 白井 直美

 子どもの命にかかわるニュースが後を絶たない毎日、神戸市で起こった女児の尊い命が奪われるという痛ましい事件は、子ども達の安全・安心が守れない現実があることを突き付けられ、残念で悔しい思いをしたのは、私だけではなかったと思います。日々の生活でも、通勤電車で乗客の10人中の6~7人は、スマホに夢中で周囲に目もくれない人々の姿を目の当たりにします。かわいい幼児連れの親子と同乗した時、じっとしていることに我慢できなくなりぐずって泣き出した2歳ぐらいの子にお母さんがためらいもせずスマホを手渡しました。その瞬間、スマホを手にした子どもは泣き止み遊び出したのです。私は驚きと同時に、全身で五感を使って遊ぶ楽しさを体験する以前にスマホやゲームが子ども達の生活環境に入ってきている現実に唖然としました。

 このように、子ども達を取り巻く地域環境やライフスタイルの変化により、幼児が、もの・人・ことなどとじっくりかかわり、触れ、感じ、考える時間や機会が少なくなってきている今日、幼稚園での遊びの体験は大変重要であり「子どもの遊びを充実させるためには何が必要なのか」ということだと思います。充実した遊びの中でこそ、子どもは物や人とよくかかわり、周囲の環境に目を向け、考えを生み出したり深めたりすることができるのです。

 そのために、大切だと考えられることの一つ目は、しっかり食べて、しっかり睡眠をとり体の調子を整えよく遊ぶことです。心身ともに健康であることが基盤となります。二つ目は、子どもが自分から始めた活動(遊び)を一緒に楽しむ教師の存在が非常に重要なのではないでしょうか。子どもの遊びにかかわる教師が、子どもの遊ぶ姿をゆったりと受け止め「遊べるか」ということと、教師自身の発想の豊かさだと思います。子ども達が、思わず遊び出したくなるような環境やヒントを如何に提供できるかにかかっているのです。子どもが、「自分から、自分で、自分なりに」考えて行動する主体性につながります。三つ目は、遊びの中で子ども同士のかかわりを生み出し、深めることです。遊びのおもしろさは、友達とのかかわりの中で膨らみ、友達の動きや言葉がきっかけとなって心が動き、そして、一人の体験で得るよりもはるかに大きい「や
ったぁ」、「できたぁ」といった達成感や充実感を味わうのです。間接的にも直接的にも子ども同士は影響し合い、刺激し合いながら生活しています。子どもが真剣なまなざしで遊び込む姿や、友達と目的を共有し一人ひとりが役割をもって遊んでいる姿から、私達は遊びの充実を実感できます。

 終わりに、体を動かすことを心地よく感じる季節を迎えました。子ども達の戸外遊びは充実し、各幼稚園の園庭では楽しい遊びが展開されていることでしょう。まさしく運動の秋です。先生方も子どもと共に満喫してください。