新連載

3 回シリーズ(2)

「学校だより」より、「スリッパそろえていますか?」

京都市立小栗栖宮山小学校 校長 畠田靖久

 日々の日課として、学校やクラスの子ども達のようすを見て回っています。その際にいつも確かめていることがあります。トイレのスリッパの並び方です。

 あっちこっちに散らばっているところもあれば、きちんとていねいに並んでいるところもあります。中には手できれいにそろえている子も見かけます。スリッパの並び方で、その時のクラスや学年、学校全体の子ども達の心の中の状態がよくわかります。

 今月(12 月)は「人権月間」です。「人権」というと何か堅苦しいような、重いようなイメージがあるかもしれませんが、そんな言葉を使わなくても、人権をだいじにしている思いや心の表れは身のまわりにいっぱいあります。次の人が気持ちよく使えることを考えて、トイレのスリッパをきれいに並べておくことも、一つの「人権」感覚の表れです。他の人が困らないよう、しんどい思いをしないよう、そしてうれしい気持ちになってくれるようにいつも気配りができること、言いかえれば『人の存在をいつも意識できること』が「人権」の根となる感覚です。トイレのスリッパを並べている子をほめた時、その子はこんなことを言いました。「スリッパがきれいに並んでると、みんな気持ちよく使えるし、ぼくも気持ええねん…。」普段はおとなしくて、あまり目立たないこの子が、クラスでみんなから慕われていることがよく分かりました。

 コンビニでドアを開けて支えたまま次の人が入るのを自然に待つ人がいる、そして、待ってもらったほうは会釈や言葉で小さく「ありがとう…」と伝える、こんな日常の事でも、まさにお互いに「人の存在を意識した」豊かな人権感覚の表れを感じますね。

 ただ、こういった「人権」意識につながる感覚を、実際の行動や表現につなげていく大切なツールは

「言葉」です。ちくちく・とげとげした言葉からは、ちくちく・とげとげの心が育ちます。反対にふんわか・ほかほかの言葉からは、ふんわか・ほかほかの心が育ちます。さらに、心が揺り動かされる体験や経験は、意識行動を育て、実際の行動につなげていくためにとても大切です。学校では、豊かな言葉や体験活動をこういった面からも大切に進めていきたいと考えています。お家でも子ども達の言葉の環境を意識して整えていただくこと
や、感動を共鳴し合えるような場面をたくさん作っていただけるよう心から望んでいます。