新連載

3 回シリーズ(3)

「学校だより」より、「あかりをともす…」

京都市立小栗栖宮山小学校 校長 畠田靖久

 以前、ある学校の支援員の方と話をする機会があり、「子どもの中にいるのは文句なしに楽しいね!」と話をしている中で、こ
んなことを聞かせていただきました。

 「『先生!一緒にスキップして!』と、腕を組んでくる子がいたんです。『いいよ!』と一緒にスキップしたんだけど、それだけであんなにうれしそうに笑ってくれるんだ、子どもとリズムを合わせて動き、一緒に笑うことがこんなに幸せなことなんだって、気づきました…」

 ドキッとした言葉でした。子どもと笑顔を共にすることが幸せなことだということ、私も含めて学校の教師はどれだけ感じていることでしょう。日々、授業に準備や取組の忙しさに追われ、忘れてしまったり、感じにくくなってしまったりしていることがないか、自分自身をふり返って、子ども達にもう一度向かっていきたくなる話でした。そして、こんな話もされました。

 「一緒にいるとき、子どもが時おりぽろりとこぼす言葉や見せる表情から、その子の抱えている『闇』に気づくときがあるんです。そのときは、どうやって小さい灯りを見つけてあげられるだろうか…、とそっと背中に手を当てながら一緒にさがすんです。」

 ハッとしました。温かく、強く心に響く重い言葉でした。

 どの子も、どんな子も、目には見えないけど、いっぱいの「育ちの不安」を抱えて生きています。自分を認め、支えてくれる人を探しながら、居場所を求めてさまよっている子もいます。そんな子を支える方法は、けっして大人の目線からではなく、一人一人を大切に考え「そっと背中に手を当てながら、一緒に灯りをさがす」目線から見えてくるものです。不安だけど一生懸命に行き先を探している子ども達にとって、道しるべとなる灯りを一緒にさがしてくれる大人の存在がぜひとも必要です。子どもは小さい大人ではありません。

大人の都合のいいように、思うように子どもを作りあげることが、子育てや教育ではありません。どの子も、生まれつき自分で力強く育つ力を持っています。一つ一つの「発達」の階段を一歩一歩、一生懸命に自分で上っていくのです。私たち大人の役割は、子どもの力を信じて、いつもそばに寄りそい、しんぼう強く後ろから見守り、いつも安心して力がいっぱい発揮できるような「場所」や「道しるべ」を用意してあげることなのですね。

 子ども達には、そんなすてきな大人にいっぱい出会ってほしいですし、私もそんな教師になりたいと心に深く刻む言葉でした。

 こういった支えを、ほんの少し多く必要としている子もいます。障がいがある子どもや、育ちの中でいろんな「しんどさ」を抱えてきた子ども達です。そういった子ども達の支え方には、その子に応じた工夫や心構え、知識がなければ抱えきれないケースも多くあります。学校ではすべての教職員が「教育のプロ」としての自覚や技術、そして感性をしっかり持ち、保護者や地域の方々と手を取り合いながら、すべての子ども達の「闇」に気づき、光を当てられる、そして、子ども達の笑顔やきらきら光るまなざしによろこびを感じられる教育をめざしていきたいです。

 子ども達の健やかな育ちのため、みなさまのご理解とご協力もよろしくお願いいたします。