新連載

【新連載】4回シリーズ(2)

森のようちえんの世界的広がり

広島文教女子大学教授(人間科学部・初等教育学科) 杉山 浩之

日本の森のようちえんは、無認可つまり法的な保障がなく、運営費用は保育料のみに頼っている。それにもかかわらず、2010 年代以降、週一回のお散歩保育から週三日、やがて毎日型の森のようちえんへと普及拡大している。とはいえ、その数は三ケタになったばかりである。未満児の親子組クラスもある。その背景には、私たちの生活が自然から遠ざかり、子どもたちの遊びも屋外から屋内へとシフトし、いわゆる携帯型ゲーム等の個別型の遊びが流行していることから、子どもの教育環境への危機意識があること、さらには、学びあう教育から一方的に教える教育が幼児教育の現場にも浸透したり、学力に繋がる早期教育が就学前の子どもたちに拡大していることなどがある。自然が失われた大都市から自然豊かな地方へ移住し、子育てをするという動きともリンクしている。

 その先導役を果たしている一つが、鳥取・智頭町にある森のようちえん「まるたんぼう」および「杉ぼっくり」である。ここには、森のようちえんで子育てをしようと関西はもちろん沖縄・福島など全国からの移住者が来ている。日本の森のようちえんは、世界でも珍しく無認可・補助金なしで運営されているが、例外がある。それが森のようちえん認証制度を県条例(2015年)で定めた鳥取県である。県から1/4、市町村1/4、保護者の保育料1/2という基準で運営費が決められている。智頭町を始め、鳥取市、倉吉市、伯耆町などで、20 人前後、3歳から5歳の異年齢の子どもたちが集まり、毎日森の中で遊んで過ごしている。スタート時点では六園(二園が智頭町にある)認証されている。鳥取ではさらに開園する動きがある。そして認証制度が始まった後も主催者会議で実態や課題を交流
し改善策を検討している。

 国内では、長野県において最も多くの森のようちえん(16 園)が運営されており、森のようちえんを支援する組織として「信州型自然保育認証制度」が2015 年度に始まった。そこでは、一般の保育園や幼稚園も加盟して、自然保育の質保障ということをスローガンに事例を集め、保育研究が推進されている。その他、三重県、岐阜県などにおいても行政の支援が始まろうとしている。

 森のようちえんの一日は、午前十時ごろから午後二時ごろまでの四時間が平均的である。その間に昼食(子どもたちが相談して始まる)が入る。活動の始まりと終わりには、必ず朝の会と帰りの会が行われる。

 朝の会のプログラムが園により多少異なるが、園独自な歌から始めることも多い。手遊びや身体表現もよく行われる。そして健康観察と点呼があり、子どもたちは森の入り口で大きな声を出し、森にあいさつし、元気さをアピールする。最後に今日の遊びや活動、そして森の遊びのルールが確認される。棒を人に向けない、大人が見えないところや声の届かない所には行かない、友だちを押さないなど安全に関わることが多い。安全確保は、スタッフと子どもとで確保され、認証制度は1 人以上いる有資格者を信頼する。