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【新連載】3回シリーズ(3)

こどもたちのための遊具制作

京都聖母女学院短期大学 准教授 山成 昭世

 京都聖母女学院短期大学・児童教育学科は1968 年に幼稚園教諭、小学校教諭の教員養成校として設立され、2000
年に保育資格が取得できる養成校となりました。
美術研究室主催の卒業作品展「こどもたちのための遊具」は1978 年にはじまり、2018 年には40 回を迎えます。これまでに制作された遊具総数は約1200 余点。遊具制作に関わった学生は4800 余名になり京都聖母女学院短期大学・児童教育学科の特色ある取り組みとなっています。本学の卒業作品展に足を運んでいただいた幼稚園の先生方も多いと思います。

 「こどもたちのための遊具」制作を行うに至った経緯は、2回生も後期になると必要単位を履修し、学生生活にもゆとりは出てきますが保育者を目指すモチベーションまでが低下する様子が伺えました。当時の研究室教員メンバーが、このような学生の現状を危惧して児童教育学科で学んだ2年間の学びの総まとめとして、こどもの視点に立った「こどもたちのための遊具」を造形表現してはどうかと提案され取り組むことになりました。

 遊具制作の目的は「造形教育を通して単に美術作品を創造するだけでなく、人間的に豊かで、想像力に富む教員を養成する。」「造形教育によって思考力、計画力、実践実行力、コミュニケーション力を養うと共に、問題に直面したときに見通しを立てて課題を解決できる保育者、小学校教員を養成する。」とし、本学の養成校としての造形教育の総まとめとして実施されてきました。

 遊具制作は木工制作を主としますが、学生の造形したいイメージに沿って樹脂や布も取り入れた指導をします。「図画工作2」小学校・幼稚園・保育士の免許選択必修科目で行い15 回授業(1 回90 分)で完成させ、卒業作品展「こどもたちのための遊具」として学外に作品発表する機会を設けます。児童教育学科卒業生がほぼ全員遊具制作に携わり、全国の養成校中でも稀な取り組みとして新聞にも数回紹介されました。
40年間継続する中で実施形態に変化もありましたが、目的は変わることなく受け継がれています。
遊具制作のポイントは、こどもの心身の発達や運動能力を考えられているか、グループ(4 ~ 5 名)で協力して制作に臨んでいるか、安全性を考慮した遊具であるかが指導上の大きな課題となります。

 短期大学養成課程では2 年間で保育者としての指導力を身に付け、幼児の造形表現の指導法など専門教育が多く求められています。学生の遊具制作は完成近い約1 ヶ月間は制作に明け暮れると言う日々を過ごします。その時間は造形表現を通して学生に内的考察を促す時間となり、グループ内での衝突や、他者と協調、協力することの大切さを学ぶ時間となります。更に遊具を完成させた時の達成感が自己肯定感へと繋がり自信となったことが学生の書き記した「制作ノート」の感想から伺えます。

 学生気質や保育職に対する意識など40 年間の歳月で変化したものは多くあります。しかし、卒業制作の目的「造形
教育を通して単に美術作品を創造するだけでなく、人間的に豊かで、想像力に富む教員を養成する。」などは変わることなく本学の伝統として受け継がれています。遊具制作も母親から娘世代へバトンタッチされ学生から「お母さんも卒業制作で遊具を作りました。」との声を聞きます。世代は変わってもその伝統が「質の高い保育者養成の一端を担いっている。」という自負を持ちこれからも養成校の大切な学習の柱として造形教育を続けていきたいと考えています。