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【新連載】3回シリーズ(1)

 保育者の専門性について問う
─書くことの意味─

金沢星稜大学 福井 逸子

 私は、兵庫県内で13 年間幼稚園教諭を務めた経験を基に、大学院で保育に関する学びを深めました。現在は、その研究成果を現場に還元しつつ、石川県で保育者養成に尽力しております。今回から3回に渡り、先生方と共に「保育者の専門性」とは何かを考えていきたいと思います。

 昨今、保育現場では、「保育者としての専門性の向上を目指し、研鑽すること」が求められています。文部科学省が平成14 年に発表した「幼稚園教員の資質向上に関する調査研究報告書」では、求められる専門性として、幼児を理解し総合的に指導する力、具体的に保育を構想する力、実践力、教員集団の協働性、特別な配慮を要する幼児への対応力、小学校や保育所との連携を推進する力、保護者及び地域社会との関係構築力、管理職のリ
ーダーシップ、人権に対する理解など、多岐に示されています。いずれにおいても大切なことは、「自ら学ぶ姿勢」です。

 実際、日々の保育の中で、これらの専門性を高めて実践していくには、相当な自覚と緻密な計画性が必要となります。先ずは、保育者が個々の課題から打ち出した一つの達成目標に向かって進んでいく行為を積み重ねる必要であると考えます。それが、やがては個々の、また園全体の専門性の向上に繋がっていくのではないでしょうか。

 そこで、今回私は、保育者の専門性の一つとして「記述力」に着目しました。保育現場では、子どもの育ちを理解し解釈するため、また、保護者との情報を共有するために、日々の保育を振り返り、記録を書き留める行為が必須となります。さらに、その記録を基に、指導計画や指導要録の作成を行うなど、書くという作業から逃れることはできません。

 しかし、ある保育者から「最近の現場は、書類ばかりが増えて、まるで書き物地獄のようです」との言葉を聞きました。ここには、保育者が書くことばかりに捕らわれ、ゆとりを失っている現状が伺えます。改めて、「書くという作業は、誰のためのものか」を再考する必要があるのではないでしょうか。「書くこと」は、目の前の子ども達と自分自身のかかわりや専門性の向上に繋がり得るものです。文科省が挙げている上記の専門性のうち、幼児理解や保育の実践力、保護者支援など多くの項目にも、原点には保育者の「書く」という作業があると考えます。つまり、保育は、書くことから始まると言っても過言ではないのです。

 しかしながら、現場からは、何をどのように書けば良いのか、具体的にどの場面を描くのか等、自らの保育を上手く言語化できず苦慮しているとの悩みが多く聞かれます。このような時、私は「個々の主観であっても、描かれた記録は、保育者の様々な感性が散りばめられた素敵なものなのです」と励まします。先生方も、書くということに躊躇しないで、それを楽しむゆとりも持っていただきたいと思います。そうなるために、私たち養成校教員も学生の指導だけでなく、現場と協同して「記録を書く」ことについての研究を続けていきたいと考えています。