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【新連載】3 回シリーズ(2)

新学期の始まり

国立民族学博物館 戸田美佳子

 「ラントレ・スコレー(La entrée scolaire)のた
めにお金がいるのよ」
 8 月末になると、カメルーンではこうした声があちらこちらで聞かれます。この時期は、市場の女性達から釣銭を渋られても仕方がないなあと思ってしまうものです。

 「ラントレ・スコレー(La entrée scolaire)」はフランス語で新学期を意味します。カメルーンの
学校は3 学期制(9 月~ 12 月中旬、1 月~ 3 月中旬、4 月~ 6 月)で、日本の夏休みにあたる長期休暇(7~ 8 月)が明けた9 月初めが新学期の始まりです。
カメルーンでは、2000 年にポール・ビヤ大統領が小学校6 学年制の授業料を無償化しており、初等教育は義務教育となっています。ただし実際には、学校に通う子どもを持つ親達は、新しい学年の教科書、通学用の新しい靴や鞄、ノートを購入しないといけません。学校に入るためには高額な登録料もかかり、学童期の子どもがたくさんいる家庭は本当に大変です。

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カメルーン熱帯林の村の小学校。カメルーンの国旗を掲げて、朝礼が始まります

 小学校を卒業すると、中等教育(中高一貫教育が一般的)へと進みます。地方の村にも義務教育の小学校はありますが、中学・高校は町にしかありません。義務教育期間の就学率は90%を超えており、日本の中学校にあたる前期中等教育への進学率も5 割に達しているといわれています。このように、多くの親が教育の重要性を認識していますが、地方の村に暮らす子ども達が進学するのは容易でありません。

 まず大変なのは、親元を離れて、町で生活をしないとけないことです。寄宿学校がほとんどないので、親は家賃を払い部屋を借りないとけませんし、子ども達は自分達だけで食事を作らないといけません。

 ラントレ・スコレーまでに、村の親達は町に出て子ども達が生活する家を探し、次の休みまでの食費を子どもに渡し、さまざまな学校用品を購入するのです。子ども達も貰ってばかりではありません。町の学校に通う子ども達も、夏の休暇シーズンには村に戻ってカカオの収穫作業などの家族労働を手伝います。

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カカオの収穫を手伝う子ども達

 皆でなんとかやりくりして、9 月の新学期を迎えるのです。