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【新連載】3 回シリーズ(2)

 「もっているものを引き出すためには」

京都市立開睛小学校 河田 理江

 (青年海外協力隊平成27 年度1次隊 ベナン共和国小学校教育)
 ベナン共和国の子ども達と体育の授業をしていて感じたことは,ものすごくバネがあること,体の使い方が上手な子どもが多いことである。しかし,指導する教諭の方が正しい知識がない為に,その子どもたちの能力を存分に引き出すことができていないことを残念に思ったことがある。
 ある日の授業で走幅跳をされていた時,担任の先生がこんなことを言われた。「両足でしっかり踏み切りましょう。」私は,そこで質問をした。「両足で踏み切って跳んで,どうなったらこれはいいの?」その先生の答えは,「わからない。両足で跳ぶんじゃないの?」だった。さらに,その授業ではただ跳ぶだけで,記録を測ったりしない。だから,子ども達がめあてや目標をもって授業に臨むこともないし,前の自分と比較することもできない。そして,授業が面白くなくなる。実は,先生自身も体育の授業での実技について,正しいことを教わっていないのだ。ベナンでは,体育の学習というのは「規律を学ばせる授業」という解釈がなされており,集合してウォーミングアップをすることと,授業後にしっかりと手洗いうがいをすることに重きを置いている。ボール運動の授業は,チェストパスのみ。50 m走を走っても記録を測らず,2人走って速かった人が勝ちで遅かった人が負けというようなものだ。そこで,実技のアドバイスをしてみた。すると子ども達がいきいきと運動を始めた。担任の先生が「もう疲れるから跳ばなくてもいいよ。」と言っても,できたことがうれしくてやめようとしなかった。「できる。」という喜びがその子どものやる気を引き出したのだ。
 子どもは,一人一人違う能力をもっている。運動が得意な人もいれば,音楽の得意な人,裁縫が得意な人や物作りが得意な人もいる。その時の教師の支援の一言は,子ども達の能力を最大限に引き出すこともできるし,下げることに繋がることもある。
 ベナン共和国で,ある人に「なぜこの仕事についたのですか」と尋ねた時「学校の先生が『上手だね』と言われたからこの仕事を選んだ」と言う答えが返ってきた。教師の一言が子ども達の将来を大きく変えることはどこの国でも同じなのだと感じた。そんな私も,小学生の時に担任の先生から「運動能力が高い。陸上競技を続けるべきだ。」と言われ、大学まで競技をすることになり,今も大会の運営や審判をしている。その時の先生の一言がなければ別の道
に進んでいたのかもしれないし,自分の能力に気づかなかったかもしれない。そう思うと、私たちは子どもにかける一言一言に重みを感じなければいけないし,そのためには普段から一人一人の児童をしっかりと見つめ,その子らしさが出せる環境を整えていかなければならないと思う。
 今目の前にいる子ども達にあなたは,どんな言葉をかけますか?