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【新連載】3回シリーズ(1)

 子ども目線でつながっていく

皇學館大学 教育学部 准教授 山本 智子(上級教育カウンセラー・臨床発達心理士・学校心理士・ガイダンスカウンセラー)

 平成19 年度は,特別支援教育元年といわれています。特別支援教育は,その準備段階を含めると今年でおよ
そ20年が経ちます。障害に対する理解は,以前に比べ深まり広まったように思います。その中でも,幼稚園の先生方は,発達段階にあらわれる状態像と発達障害の特性が似通っていることもあり,気づきや対応では特別支援教育の最前線におられるといえます。この20年間の実践は尊いものだと思います。

 障害のある幼児は,自分の障害の特性について分析し理解することはできません。時には集団から離れて,なんだかわからないけれど「こうしたら落ち着く」ということをしてしまいます。また「我慢できない」「苦しい」「嫌だ」という気持ちを抱えきれなくて「やりたくない」「気が済むまでやめられない」という行動をしてしまいます。しかし一方,ネガティブな対応をされると,「大人はどうしてわかってくれないのだろう」と感じている一面もあります。

 先日,今春,幼稚園に就職した卒業生Aが,自分自身が苦戦状況にあることを伝えてきました。Aは,「加配として障害のある園児についているのですが,注意してばかりで。」といいます。五歳のB君は,廊下の棚に上ることが多く,主任の先生からは「やめさせなさい。」と言われているとのことでした。一方,B君からは,「前の担当の先生は,僕を叱ってばかりで幼稚園へ来るのが嫌だった。」ということを聞いているということでした。筆者は,棚に上がるだけではなくB君はもっと様々なことをしているのだろうと,想像しながらAに,B君が棚に上り下りする時,怪我をする危険があるのか,あなたはどのような指導がしたいのかを尋ねました。Aは,B君の行動は慣れたもので危険はないと理解していて,いつも上るわけではなく上らない時もあると気づいていました。しかし,初任者で自信のないAは,自分がどのように接していきたいかを言葉にすることができませんでした。

 B君がAに自分の気持ちを伝えていることから,B君がAを受け入れていることが伺えます。筆者は,先生方は,新任のAがB君とどのような関係性を築き指導していくのかを見守ってくださっているはずであることを伝え,自分の気持ちに蓋をしないで先生方に相談すること,子ども目線で状況を解釈することをアドバイスしました。 

 大人が「困ったなぁ。」と思う子どもは,実は,本人が一番困っていて,苦戦している子どもです。同じように,「しないのではなく,できない子。言わないのではなく,言えない子。」と考えると,子ども目線で子どもとつながる事はとても大切です。Aは,先生方に支えられ,B君とつながり共に成長していくのだと思います。