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【新連載】3回シリーズ(2)

 タイムリーにつながっていく

皇學館大学 教育学部 准教授 山本 智子(上級教育カウンセラー・臨床発達心理士・学校心理士・ガイダンスカウンセラー)

 卒業生のAは,その後も新米教諭ながら誠実にB君と向き合っているようです。

子ども理解においては,アセスメントが重要だといわれますが,特別な空間で時間を切り取って行うアセスメントより,日常における気づきを精査してタイムリーな支援に生かすことがより重要です。Aは,B君が毎日下校前にすべての送迎バスに乗り込む点検行動を見守ることにしました。また,滑り台で突然逆走してしまうことや,友だちの使用している玩具を奪ってしまうことについても,「なぜ,Bはこのようなことをするのか。」と考えてみました。すると,興味関心がその一点に集中してしまい,他のことが全く抜け落ちてしまうということに気づきました。その状況を改善させるためには,B君だけでは抜け落ちてしまう部分をAが補っていくことが必要になります。
Aは,「B君,滑り台にはC,D,Eがいて順番に階段から上がって滑っているねぇ。」と言葉かけしながら滑り台でB君とみんなを出会わせ,順番に遊ぶことを見守りました。

自由遊びの時間には,園庭から戻ってきたB君に,それぞれの子どもが遊びたいものを選んで活動している様子を実況中継するように話しかけました。みんなの様子を見ながらじっと聞いていたB君は,D君の使っている玩具と同じものを探しはじめましたが見つかりませんでした。Aは,B君を促してD君の所に行き「同じ遊びがしたいので来たけどいい?」と声をかけました。するとB君はD君の返事を待っていました。Aには,B君が状況を理解できれば望ましい行動がとれるのではないかという仮説があったようです。

どんな支援も子ども本位のものでなければいけません。子どもの苦戦状況に対して隙間を作らない支援は子どもとの関係性を構築します。Aは,日々の対応を振り返り,B君が友だちと望ましいコミュニケーションを築くにはどうしたらよいかを常に考えていました。

どんな子どもも学びたい,育ちたいと思っている運動体です。大人の「あとでね」「ちょっと待ってね」は,チャンスを潰すことになります。コミュニケーションの場から離れた生活が続くと不適応を起こすしかありません。AがB君の気持ちに寄り添い、園という集団の中で必要な力を身につけていくことを応援したいと考えた背景には,タイムリーな支援を隙間なく適切に積み重ねることの大切さを教えてくださった園長先生や先輩の先生方のご指導があったようです。新任・中堅・ベテランとそれぞれが持つ強みを生かし,教諭も互いにタイムリーな会話でつながっていくことが,子どもたちとのタイムリーな関係構築の原動力になるのだと思います。