【新連載】3回シリーズ(3)
タイムリーにつながっていく
皇學館大学 教育学部 准教授 山本 智子(上級教育カウンセラー・臨床発達心理士・学校心理士・ガイダンスカウンセラー)
私たちは,常に知識と経験を総動員して子ども達に向き合っているでしょうか。時には,次の段取りに気を奪われていたり,いつもうまくいっていることを「当たり前」と思って注意を払わなかったりすることはないでしょうか。子どもたちには先生のことがよくわかるようです。誤魔化しはききません。慢心がないか,内省する習慣を持ちたいものです。
スポーツで優れたプレイができる選手は,「基本をしっかり身につけ,それを応用しているだけだ。」といわれます。意外な気もしますが,納得できます。華やかなプレイに見える動きも人体システムを総動員して行われているだけです。ひとつひとつの筋肉がそのパフォーマンスを最大限に発揮できるよう努力を続けた結果だと思います。
私たちは,発達途上の子ども達のいのち溢れる眼差しに対して,常に向き合っています。スポーツのように毎回結果が出て,その度にリセットできるものではありません。止めることのできない時間の中で,「全ては子どものために」ありたいと
思います。
新任教諭のA も半年経ち,少し余裕が持てるようになりました。運動会も無事に終わりましたが,その練習ではB 君には難しい部分もあったようです。ご家庭との話し合いや園内でのサポートが功を奏し,チャレンジすることで乗り切れたと聞きました。ご家庭との連携では,A は、多くのことを学んだといいます。母親だけでなく父親が話し合いの場に来てくださることで,膠着状態が解消
したこと。また,園長先生が,「最終的にどうするかどうかは保護者の方に決めていただきたい。」といいながら,両親の回答を全面的に支持し,「うまくいかなかったら、また一緒に考えましょう。」と付け加えられたこと。その一言でご両親の表情が和らいだそうす。その様子をA は「すごいな」と感じたようです。
A は,園長先生の愛と勇気で保護者とつながっていることを実感できたのだと思います。教諭という仕事は感情労働です。きっと自分が自覚しているよりもストレスが多い仕事です。これからもA には,子ども目線で子どもを理解し,その時々の指導を大切にタイムリーな対応を心掛け,愛と勇気をもって子どものために必要なことができることを目標にしてほしいと思います。そのためにもA には,先生方とたくさん会話すること。一日の中で必ず自分の時間を持つこと。一週間に一度は,大好きなケーキを食べること等自分へのご褒
美を忘れないようにと伝えました。
アンパンマンのように愛と勇気でつながっていく関係性は,これから時代が進んでもかわらない教諭の基本姿勢であると思います。