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【新連載】3回シリーズ(2)

特別支援学校のこどもたち(2)

京都教育大学附属特別支援学校 小学部主事 小坂眞由美

 本校は学習の一環として自主通学を行っており、中学部と高等部の生徒は公共の交通機関を利用して通学しています。小学部は、本大学附属桃山小学校までスクールバスを運行し、そこまで保護者の送迎で通学しています。近年は放課後等デイサービス等の利用が増え、下校時は事業者さんに迎えてもらう児童も増えています。

 自主通学ではハプニングもありました。筆者が中学部で担任をしていたときの話です。携帯電話のGPS 機能が搭載され始めたころで、万が一のときは居場所を検索できるようになっていましたが、A さんは携帯を持っていませんでした。A さんはJR の京都線と奈良線を乗り継いで通っていて、人なつっこく、一生懸命話すのですが発音が明瞭でなく、会話は難しい生徒でした。ある日、A さんが登校してきません。奈良線には乗ったということで、乗り越した可能性が高かったので、奈良線沿線を捜しましたが、見つかりません。児童生徒の下校後、教員総出で京都駅や奈良駅、大阪など、考え得るところを捜索に行きました。担任だった筆者はAさん宅へ行き、両親と連絡を待ちました。

トイレは?、おなかはすいていないか?、どこかで事故に遭っていないか・・・。心配がつのります。結局、もうすぐ
終電というころに枚方警察から「保護している」という連絡がありました。京阪の私市の駅員さんが、改札の外でうろうろしているAさんを不審に思い、警察に連絡してくださったのです。このときはなぜ私市駅の改札の外にいたのか私たちにも想像がつかず、わからずじまいでした。

 A さんの大冒険はまだ続きました。朝、奈良線に乗ったことは確認できているのに学校に来ず、また乗り越したと思われました。14 時ごろ、USJから「保護している」という電話・・。ユニバーサル前駅の自動改札を突破し、年間パスポートのつもりで「緊急カード(学校名記載)」を堂々と見せたそうです。USJ が大好きで、家族でよく行って
いたAさん、乗り越して乗り継いでいるうちに見知った駅にたどり着き、「行ける!」と思ったと想像がつきました。事情を聞いて私たちは笑ってしまいましたが、もちろん本人には、保護者からも学校からも大目玉でした。A さんは携帯を持つようになりました。しかし、今度は「帰宅しない」と保護者から連絡がありました。GPS では大阪方
面へ移動中だとか。筆者は京都から新快速に乗って追いかけましたが、GPS では加古川、三宮とどんどん西へ行きます。結局終点の姫路で保護してもらいました。その後、A さんの冒険はなくなりました。何度かの失敗や経験を通して学習したのでしょう。このときは、乗り越してしまったことに気づき、大阪で引き返そうと同じ色の電車に乗ったところ、姫路行きだった・・。A さんなりにがんばった結果のまちがいだったと思われます。私たちも本人の行動パターンや考え方がわかるようになったのです。

 最近ではこのような捜索をする事例はなくなりました。通学や移動の支援が充実してきたためでしょうか。リスクは大きいですが、良くも悪くも経験の中でいろいろなことを本人だけでなく、周囲の大人たちも学んでいたのだと思います。