新連載

【新連載】3回シリーズ(1)

特別支援学校のこどもたち(3)

京都教育大学附属特別支援学校 小学部主事 小坂眞由美

 本校では、「人は人とかかわり合う中で人として育つ」という考えのもと、集団での活動を大切しています。「人は、さまざまな人とかかわりあいながら、社会の中で人と共に生きるために必要なことを学び身につけ、世界を広げていく。子どもたちは他者とのかかわりあいを介して自分を知り、自分の存在を意味づけていく。さらに、学び身につけた力を人とのかかわりの中で使い、役に立ったり喜ばれたりする経験、認められる経験をとおして自分が必要とされるかけがえのない存在であることを実感しながら社会的存在としての自己を形成していく。これは対人関係を形成することや対人関係を土台とした発達の獲得に遅れる知的障がいの子どもたち、知的障がいを伴う自閉症の子どもたちも変わりはない」。これは本校の平成26 年度研究紀要からの抜粋です。

 B ちゃんは自閉症スペクトラムです。初めての場所に行くことはとても不安で、入学式も式場に入らず、外にいました。入学当初、教室に入れない日が続きましたが、焦らず見守り、ひとしきり遊んだころ、教室へ誘ってみたり、担任から呼んでもらったりしているうちに、教室で過ごせる時間が増え、2学期が終わる頃には集団の中で活動にほぼ参加できるようになりました。大人に対しては視線や手差しで要求を伝えたり、手の合図で返事をしたり、笑いかけたりするなどのコミュニケーションが出はじめていますが、まだ友だちと遊ぶ姿は見られません。

 ある日、同じクラスのC ちゃんが教室のモニターで動画を楽しんでいました。たまたまB ちゃんもその近くで遊んでいて、偶然、モニターの電源を切ってしまったのです。C ちゃんは、「あ~っ!!」と声を上げました。その声に驚いたのもあると思いますが、C ちゃんに何かしてしまった、とも思ったようで、Bちゃんは泣き出してしまいました。C ちゃんは教室移動のときなどに「B ちゃん、行くよ」と声をかけてくれます。それも、自分から、絶妙のタイミングで、しかも自然な距離感で。B ちゃんはその誘いかけに必ずしも応じるわけではないのですが、おそらく心地よく感じていたのでしょう。好きなお友だちになっていたようです。B ちゃんの泣き声の中に、「ごめんね」が聞こえてくるようでした。一緒に何かをして遊ぶ、といった明確なかかわりあいは見られなくても、そこにいて、声をかけてくれる人がいて、泣いていてもそこにいさせてくれる場があることで自分の存在を肯定的にとらえられる・・。これは周りに人がいてこそ作りうる「環境」なのだと思います。

 自閉症スペクトラムの人は人とのかかわり合いが苦手なのではなく、かかわり方が私たちと同じではないだけだと思っています。一見、集団に入れないように見えても、彼らなりの入り方(友だちや先生の動きをじっと見ていたり、声を聞いていたり)で参加しています。個に応じた指導、個別の対応が必要なことは当然ですが、集団の中で個を大切にする、この姿勢をこれからも本校では大切にしていきたいと思っています。