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【新連載】3 回シリーズ(2)

第二回: 鬼あそび「だるまさんがころんだ」

京都教育大学附属幼稚園長 平井恭子

 前回は、鬼決めうた「いろはにほへと」を取り上げ、子ども同士の間でことばを唱えることが、仲間意識を高め、遊びへの導入に大きな役割を果たしている事例を紹介させていただきました。今回は、同じく「ことばを唱える」遊びの中で「だるまさんがころんだ」を取り上げ、この遊びのどんな点が子どもたちをひきつけているのか探ってみたいと思います。

 2 月のある日、園庭での遊びが一段落し、片付けがたちに誘いかけました。すると、「わーい、するする…」
と子どもたちは大喜びで集まってきました。ちなみに「だるまさんがころんだ」は、クラスで何回か遊んだ経験があり、子どもたちの間ではお馴染みです。この日は、従来の「だるまさんがころんだ」の変形バージョン(「お部屋までもどる」バージョン)だったため、鬼役が徐々に部屋に近づきながら(本来は鬼が定位置)「だるまさんがころんだ」を唱え、子どもたちをお部屋まで導く、というシンプルな遊び方でしたが、4 歳児にとってはわくわく感満載の遊びとなっていたようです。

 まず遊びのはじめに、子どもたちは「は~・じ~・め~・の~・だい・いっ・ぽ」のかけ声で大きく1 歩、ジャンプで前進します。続いて、鬼役の教師が少し離れた場所で後ろ向きになり、「だーるまさんが…」と唱えはじめると、子どもたちはそれぞれ好きな速さで前進し、「こーろんだ」でピタッと止まります。一瞬、その場に漂う緊張感…。「だ」で振り返った鬼に「あっ、〇〇ちゃん動いた」と指摘され、スタート地点に戻されないよう(この日のルール)、みんな真剣です。中には、むしろその緊張感を楽しんでいるかのようにくすくす笑いながら滑稽なポーズで立ち止まる子どもの姿も見られます。このようにして、何回か「だーるまさんが・こーろんだ」を繰り返しながら、子どもたちは楽しくお部屋に入っていきました。鬼が、時折わざと「だーるまさんが…」をゆっくり、「ころんだ」を早口で…、などとフェイントをかけると、更に遊びの面白さが盛り上がります。

 このように「だるまさんがころんだ」という短いフレーズの中で、鬼と心理的に駆け引きしながら距離感を図ったり(空間認知)、素早く移動してぴたっと止まったり(緊張と弛緩)、鬼に見つからないようなテンポで歩いたりするなど、子どもたちは頭や心や身体のいろいろな感覚を総動員して遊んでいることが分かります。「だるまさんがころんだ」が子どもたちをひきつける魅力は、こんなところにあるのではないでしょうか。